2.私、女優になる!
私は、23年程生きていますが、そんなに運を使い果たした覚えはありません。宝くじも当りたませんでしたし、年に一回引くおみくじは、小吉か末吉です。
しかしながら、此度の運の悪さはどうなのでしょう?流石に、凹んだ後上昇出来ぬほどです。
今、私の前には数段上のきらびやかな椅子に座った、これまた光の乱反射が激しい宝石の付いた服を着ている、恰幅の良いガマガエルが座っています。
その横には、さっきのナナフシヒョロっとおじさんが立って、捲し立ててきます。
因みに私は、手を前に縛られ、槍を2本左右から突き付けられている状況。
「コレが、異世界人か。本当に黒なのだな」
「はい。私の召喚術は、成功していたんです!同じ陣で呼び寄せられたのですから!何かに邪魔をされて…クソッ。
お前は、どこにいたんだ?見知らぬ世界で3ヶ月もいて、そんなに小綺麗でいられるわけがない。誰かに匿われて居たのだろう?!誰だっ?!それから、お前の名前言え!」
おっと?私は匿ってもらっていたのですか。さて、どうしましょう?
よし!お母さん!私、女優になるわ!
「ここ…どこ?わた、し?また、しらないとこ、ろ?な、に?ここ?どこ?!いや、いやぁーーー!!!たすけて!!いや、いや!こわい!あぁぁぁあーっ!」
喉が痛いです…。
「おい、おかしくなってるぞ!使えるのか?!」
「は、はい!おい!黙れ!お前、名はなんだ!?答えろ!」
「ぐっぅ。たすけてたすけてこわいたす…」
周囲は、しきりに名前を聞いてきます。
ザ・迫真の演技!
いきなり叫んで床に頭をつけ、縮こまってまた叫ぶ!左右の槍の人が、私をうつ伏せにし、膝で背を踏んできます。その間もブツブツと何かを言い続ける。
そんな私は、高校で演劇部部長でした!
「そ、そやつ狂っておるではないか!殺してしまえ!」
「そんな!陛下!落ち着いてから聞きだしましょう?再度、召喚する事など出来ないのですし。ここで、異世界人の力を失う訳には…」
「ううむ、仕方ない。牢にでも入れておけ!」
そうなのです。召喚について、長様から講義を受けました。異なるものを呼ぶには、広範囲の土地の魔力も使用するので、土地は痩せます。再び戻るまでに、60~100年は要すると。世界に必要ない物を取り寄せるんですから、負荷も半端無いですよね。
なので、そう簡単には殺されない筈です。
こんな見え透いた演技に騙されるなんて…そんなので一国の主とは!
未だに視線をさ迷わせ、爪を噛みつつブツブツ言ってる私を牢へと連れていく兵士が、すっごく嫌そう。自分で言うのもなんだけど、分かる!
「ほら!入れ!」
「い、や。やだやだやだっ!おとうさん!おかあさーん!たすけてぇ」
この世界、平たい私の顔は、童顔の部類に入ります!ですが、テンション上がり過ぎて、年齢設定を間違えました!低く設定しすぎた!気分は15歳。無理過ぎる?
「黙れ!」
「がっ!」
いきなり、殴られました。転がった私を掴んで、牢の中へ放り込み、鍵を掛けます。
痛い!バレたかな?
「お前、いくら異世界人でも子供殴るなよ」
「うるっせぇんだよ!本当にこんな子供が、国を滅ぼす程の力があるのか?信じらんねぇ」
「ま、尊い方々の考える事は、分かんねーな」
信じてる?!流石に無理かなぁと、思ったんですが…単純な方々で良かった。
一番最初、ナナフシが名前を聞いてきましたが、名を名乗ると隷属させられ、強制的に命令を聞くことになるんだそうで、名も言えないほど怯えてみました。
左頬痛い…。口切った。
本当に、落ち込んできました。泣けます。大袈裟に!気分は、女優!
「ふっぇ、いたいよぅ、おかあさーん」
「ほら、余計煩くなった」
「知るか!一晩ここにいれば、もう少し大人しくなるだろうよ」
牢屋から、兵士が出ていきました。
私の涙は、止まりません。やっぱり、怖いですからね、手が震えて過呼吸気味です。
言葉に心が引き摺られたのか、本当に悲しくなってきます。
「お父さん、お母さん…本当に助けて…」
泣き続けて、やっと気持ちが落ち着いてきました。
ボーッと回りを眺め、なかなか清潔な牢屋です。良かった。
本当に、これからどうしよう?
偽名を言っても、術が完成しなければバレますよねぇ。記憶喪失?…浅い知恵しか出てこない私には、舞台がデカ過ぎですよ…。
精神に作用する魔法もあるんでしょうか?あ、私魔法効かないんでした!ラッキー!
折角、異世界に来たのに、魔法効かない、使えないで、少し悲しかったのです。
自白剤とか…そしたら、何も食べられない!
私には魔力が無いことが分かったら…まずい事に。
呑気にのほほんと虫と格闘してる場合じゃなかった!何か対策を立てておくべきだったんだ…。
そりゃ、探しますよね。苦労して呼び寄せんだから。
あぁもう、ネガティブになってきます。
記憶喪失でいきますか!年齢15歳でも、記憶がなくてより幼い精神年齢で。
常に見られていることを意識する!
食べ物に注意すること!
魔力が無いことがバレないように頑張る!
そして、私は、女優!
…お母さん。高校時代にお婆さんの役で、県大会最優秀賞を獲った私は、テンション上がり、
「お母さん!私、女優になる!」
「そう。明希ちゃん?女優さんは、美人さんがなるのよ?」
「え゛?」
そう言ったお母さんに、少々問い質したい気分です。ですが、明希はここで頑張ります!
ガチャン!
決意を新たにしたところへ、誰かがやってきます。
「おい!ガキを起こせ!魔力量を測るぞ!」
拝啓
お母様。明希は、やはり女優にはなれないようです!貴女は、正しかった!
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