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深き森 自愛に満ちた 聖女様13

 店の方に回り、軽くご飯を食べる事になりました。アスクさんが違和感満載ご飯を作ってくれるそうです。甘えてみましょう。

 こうじさんが、ぽやぽやしてるので、良い機会だとちょっと近付いてしゃがみます。


「こうじさん?ご報告と、お聞きしたい事があります。

 無事、アスクさんと恋仲になれました。

 カタリナさんは、私が軽い精神崩壊まで追い詰め、今後、疲弊した土地へ送られるそうです。


 ところで、完成した鰹節…あれ、何か感情に作用しませんか?」


 うんうんと聞いている様子のこうじさんが、最後の質問に反応なしです。


「鰹節を使用した味噌汁は、それはそれは美味しかったんです。ありがとうございました。

 ですが、あの後から、飲んだ我々二人おかしくなりまして…感情が抑えられないような、言うつもりまでなかった事をポロリと口走ったり…」


 ぽやぽや浮いていたこうじさん達が、私の周りに集まりつつあります。


「更にはアスクさんが、砂糖に漬け込んで、更に砂糖蜂蜜もぶっかけた対処に困るほど甘くなるわ、表情豊かで饒舌になったんです」


 こうじさんが、ゆっくり私を包みます。


「鰹節には、三番かび…こうじさん付け以降は、【本枯節】と言って最高のものが出来るのですが…まさか、本枯節にはそんな作用が?あら?こうじさん?」


 こうじさんの小ドームができ、私を包んでいます。


「私を醸さないでくださいね?それで、どうなんでしょう?感情の制御が出来ない味噌汁は、お客様にお出し出来ないのですが…」


『だって…いつまでも悩んでて、いつまでも本音で話さないから、少し…』


「やっぱり!駄目ですよ?感情が抑えられない事は、余計な争いだって生まれるんですから。その効力外せますか?」


『はい。今回作ったものだけにします』


「良かった。確かに、お陰さまでアスクさんに話す事が出来たので、感謝してますけど。ありがとうございます。

 あの味は、皆さんにも飲んでもラ、イタ………?

 ―――――…………しゃべったぁあぁぁ!!」


 ズボォ!

 立ち上がった私は小ドームから首が出ました。

 なんとも間抜けな構図に…調理場に立つアスクさんと目が合います。


「…何してるんだアキ」

「こ、ここここうじさんがお話に」

「あぁ、こうじに礼を。今回作ったカツオ節は、凄いな」

「へ?は、はい」


 スーッと、またしゃがみます。首で開けた穴は、また塞がりました


「ここここうじさん?」

『はい?』

「アスクさんがありがとうと」

『良かった!』

「ここここうじさん?」

『はい』

「話せるんですか?」

『はい!この前、明希の話を聞いて、伝えたい事がたくさんあったので、頑張って進化しました』


 本当に、私の愚痴で進化を!


『本音で話せば直ぐ解決するのに、いつまでも悩んでるから見ていてやきもきしたので』


 菌に心配される、恋愛事情!


「……わぁお……そんなに心配させたとは、申し訳ありません」

『ううん。でも、いつもアスクに明希を取られてたから、いっぱい構ってもらって嬉しかったです』


 ずきゅん!か、可愛い。

 わさわさと、こうじドームが揺れます。


「うふふ、私も楽しかったです。主に愚痴聞いて頂いて、とても助かりました。

 アスクさんは、こうじさんと話せるんですか?」

『味噌作りあたりから、簡単な意思を伝えるくらいは』

「ずるいです」

『エルフは敏感なので、伝わりやすいんです』


 あの、それ、私が鈍か…ん。いえ考えません。


「アキ。出来たぞ」

「…こうじさん、アスクさんの効果いつ消えますか?」

『え?』

「ですから、あのガンガン蜂蜜ぶっかけアスクさんは、いつ解除されるんですか?」

『元々あんなですよ?』

「…え?」

『僕と研究してた時は、もっと酷かったです!』


 見えない。見えない筈なのに、笑顔が見える。


『僕達で研究してた時、あまりに…あっ、何でも無いです』

「いやっ!教えて!何ですか?!あまりに何ですかっ?!」


 こうじさん小ドームが、ぶわっと開きました。

 こうじさんに照され、光輝く肉食獣が本日の夕飯を持って立ってます。


 あぁぁああ…早まった…確実に…色んな事を。

 

 私は、憧れていた恋人になりたてのきゃっきゃうふふの世界を吹っ飛ばして、おいでませエログロ18禁の世界がアスクさんの向こう側に見えました。







 夕食は、魚の煮付け、米モドキ、シチュー、ハンバーグでした。何故にこのチョイス!

 微妙に、胃で喧嘩しそうな夕食を頂き、お茶をのんで一息中。


「アキ。どうした?」

「な、なななにが?でしょうか?」

「…こうじと何話した?」

「ハッ!そうです!こ、こうじさんと普通に会話しました!アスクさんは、ご存じだった?」

「あぁ、意志疎通は取れてたし。そうか、本当に進化したのか…。それで?何の話を?」

「こうじさんは!素晴らしい進化をなさりましたね!」

「そうだな。後で長にも会わせないと。で、こうじから何を聞いて、」

「長!…様?あら?会ってませんでしたか?」

「まだな。成長途中だったし、アキが面倒見てたから。力が進化したなら、長にも伝えないと」

「何故、力が進化したら?」

「アキが制御しづらくなる。森の管理下、引いては、長の管理下になる」


 ふわふわ~と、浮いてるこうじさんを見ます。


 制御?森の管理下?制御なんて…?元々森からお借りした菌だったのでは?おや?


 気付かぬ内に、アスクさんが私を抱き込みます。

 カウンター席の背もたれ無し椅子なので、背に直に体温が伝わります。

 アスクさんが、肩にかかる髪を避け、首筋に顔を埋めてきます。


「私まだお聞きしたい事が?アスクさん?」

「…ん…?」


 …ゾク。

 やめてお願い!その声やめて下さい!

 振り返ってはいけない。見てはいけない!


「人前でこれは、その、ひゃっ」

「ん、抱き締めるだけ」

「ふっ、…わ、そ、それだけでは無いような?」


 首筋にくんかくんかして、たまに頬擦りとキスを追加してくるアスクさんに、抗議をします。


「アスクさん、人前っは、そ、のお!」


 舌が、追加されました!


「人…?こうじは、人じゃない幼精だ」

「……よ?」

「幼精」

「それは?」

「精霊の新種の幼子」

「精霊の珍種?!」

「珍……まぁ、それでも合ってるか」


 菌の精霊?!醸すお仕事?!


「アキが産みの親」

「何故私が?!産みの親は森じゃ?

 あのでろでろ菌の森から、お預かりしたこうじさんですよ?」

「あの時は森の一部。今は、アキのお陰で進化して自立した存在になった。アキがいなければ、この世界に永遠に存在しなかった種だ」

「精霊ってそんなにぽこぽこお産まれに…?」

「いや?確か、属性の精霊が産まれてからは、新しく生まれてないから…この世界の創生以来だな」

「…」

「アキ?」

 

 ぐるり振り返り、私はアスクさんの両肩を掴み、


「それ、超、大事!!」

「あ、あぁ。めでたい事だな?」

「反応うっっっっす!!」








 

 こうじさんは、いつの間にか…新種?珍種?の精霊になっておりました。


 菌精霊って………………えぇ?いいの?…えと、何がお仕事?






お読み頂きありがとうございます。






完璧当て馬、その名は、カタリナ。

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