深き森 自愛に満ちた 聖女様11
カタリナさんが私達に気付きました。
「あ、なっ何でお前がっ?!アスク様どういう事ですの?!私を何だと思ってるの!?聖女よ?!アスク様!そんな化け物につくなど!エルフも地に落ちたわ!」
むっ
「こんな陰気くさい場所にいて!性根が腐ったのだわ!!こんな者達が世界の調整者などと!我々の神が必ず罰をくだされるわ!」
いらっ
「異界の化け物にたぶらかされ、エルフも穢れたものよ!」
アスクさんの空気が、心臓に負荷がかかるほど、冷たく重くなっていく。
アスクさん、怖い、本気で怖い。やめて下さい。その冷気、一番近い私に被害が来てますから!
寒い、寒いです。
そっとアスクさんから離れようとすると、腰を抱かれ引き寄せられました。
こんな状況じゃ、トキメキもないです!
そっと力を入れて手を外します。何を思ったかガッチリ更に力を入れてくるアスクさん。
いや、違います。やめて下さい。
本当に、寒いんですよ。
「ぁ、ぁすく、さ、さささむぃ~…」
「アキ?よくもアキを」
「あぁぁあなた、で、すから…ささむぃ…」
「何やっとるんじゃ。アキ?ほれこれ着なさい」
「ぉお長様も冷えません?だ、大丈夫ですか?」
「ワシ、エルフの長じゃぞ。大丈夫じゃ」
「長、触らないで下さい。アキ、これを着ろ」
「アスクさん、それ脱いだら裸ですよ?」
「大丈夫だ」
「目の毒だから駄目です」
「ぉ、おおおまえらあぁぁー!!」
あ、終わりましたか。
むん。よし!私は、まだ許してません。
森を焼くと言った事。
エルフが穢れたと言った事も。
結構、腹立ってます。
アスクさん、ちょっと引っ込んでて下さい。
「話は終わりましたか?」
「何ですってえー?!」
息を吸い、攻撃準備万端に。
「黙りなさい!この、馬鹿娘!!」
「なっ!アスク様お聞きになりまして?!」
「はぁ。自分の周りを見なさい。誰が居ますか?
誰一人いない。貴女がしてきた事の結果です。そんなことも分からないんですか?」
「黙れ!!」
「己を省みる事もなく、過去の過ちを反省する事もない。貴女が召喚した人から、何を奪ったか少しは考えた事はありますか?」
「黙れ黙れ黙れぇ!アスク様、長!聞いたでしょう?この化け物の言葉を!私をこんな風に貶めているんです!目を覚まして、私を助けて下さいませ」
この期に及んで、尚も言い募るカタリナさん。
「……見苦しく、耳障り」
「何ですって?!お聞きになったでしょう?この私に向かっての暴言!ねぇ、助けて下さいませ。
どうか、化け物の言葉を信じないで?」
「はい。では、化け物の力をお見せしましょう」
手に、淡い光を集める。
「ひっなっなによ!」
「カタリナさん?最初に会った時、従わない私に処刑と言いましたね?もしかして、日常的にそんな事をされていたのでは?
私を追い出した後、この村を自分に相応しく豪奢にすると言い、森を切り開き焼くと言った事、エルフを罵る貴女を私は許しません」
手の上に集まる光が、強くなります。
「特別に、貴女には、異世界の拷問をしてあげましょう」
「な、なに、ひっ!!」
「中二病発動!
similar games. SIL⚪NT HI⚪L!」
(類似ゲーム、サイ○ントヒ○!)
「な、何したのよ!化け物!」
「もし、貴女がくだらない理由で、他者に危害を加えたり命を奪った事があるのなら、そこは地獄と化すでしょう。
そんな事無いですよね?聖女様だから。
行ってらっしゃい?」
「や、なに?なんなのよぉーぎぃゃあぁ!」
カタリナさんが頭を抱え、踞ります。
そこに薄い膜のような防音防壁をかけます。
しーん…。
「ふぅ。スッキリした」
「ア、アキ?」
「のぅ?アキ?」
「はい?」
「何したんじゃ?」
「大丈夫です。ほんの1時間体験ツアーですから」
「は?」
「へ?」
故郷で、ゲーム結構好きでした。
ノミの心臓の癖に、恐いゲームが好きで色々手を出して来ました。それらの中で最高に怯えに怯えたのが、サイ○ント○ル!
夜、眠れない!暗闇恐い!飼ってた金魚が跳ねる音にびびり、何にでも怯えました…。
あれ、本当無理!
今回、その舞台に、処刑した人数分だけ敵が出てくる様に整え、カタリナさんを招待してみました!
ゲームは1時間で休憩しましょうと、ガイドラインにも書いてあったので、招待出来るのはその時間だけ。充分恐いと思います。
イーストゥーリャのアンデットや幽霊の魔物は、姿がそんなにグログロしてません。
アンデットは、少し血が滲んだ顔色悪い人です。幽霊の魔物も、黒いボロを着て浮いてるだけ。
いきなり出てきたら、びっくりしますけど。
「という訳です」
「「…………」」
「あら?どうしました?頑張れば、私に耐えられる程の映像です。実際には傷付きませんし」
「それ、観ることは?」
「出来ますよ?」
転がったり暴れたりしているカタリナさんを覆う膜に、内容を投影させます。
5分ほど見た後、
「アスク、今日泊まっていけ」
「はい、長」
…え?そんなに?私も長様の家に、お邪魔しようと
してたんてますが…
やらかしてしまいました?
「アキ、アキは平和な場所から来たんだよな?」
「はい」
「あれは…?」
「人の創造力と想像力の産物です。平和だからこそ、娯楽が発展して、ああいうものがゴロゴロしてますよ?」
「…」
「絵を見るように、平面に先程のような動く絵が写され、本の様に出てくる登場人物を自分で動かすんです」
「…」
あら?やらかしました?
それにしても、チラッと見ただけでも、相当数カタリナさんの被害に合っている人が居ますねぇ。
1時間では、出きらないのでは…。
術の発動文言だって、恥ずかしいのに…。
長様が、ボソッと、
「ワシ、アキを怒らせるのは止めよう」
お読み頂きありがとうございます。
ゲームは、私見です。




