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一ツ橋 祐の憂鬱 4

今回、ちょっと長いです。


一ツ橋 祐の憂鬱 3叔父との会話の後、多めに加筆してます。

「うにゃぁぁ~。頭が痛いよぉぉ~……」


翌朝は、時谷の間抜けな声で目が覚めた。

酒の抜けた時谷は、昨夜の事を何も覚えていなかった。

あれだけの事をやらかして何も覚えてないとか、時谷の突き抜け方はやっぱり一味違う。少しからかってやりたくて、昨夜の醜態を教えてやると、パニック状態でフリーズしてしまう。

顔が見たくて体制を変えさせるが、胸に顔を埋めて抱きつかれてしまった。だが、これはこれで可愛いから、このままにしておこう。

ついでに、脳内彼氏のことやファンレターに書かれていた内容等、黒歴史であろう事も暴露してやる。すると驚きすぎて、顔を上げ目をまん丸に見開いて、俺を凝視してくる。

その表情には、「何故、知っているのですか!?」と書かれている。その顔があまりにも可愛いくて、思わずキスしたらさらに目が見開かれ、次に真っ赤になった。


ファーストキスとか思ってるんだろうな……。

だが、お前のファーストキスは昨夜のアレだ。ゲロの味のアレ!

それを教えてやると、落ち込んでしまった。昨夜と一緒で、脳内彼氏との苺ミルク味のファーストキスの事を考えてるんだろう。

……なんか、ムカつく。負けた気がする…。

どうしてやろうか………、そうだ、確か……。

思いついた俺は、酒を飲んだ翌朝にいつも舐めるのど飴を、枕元から取り出し、口に含む。そのままもう一度キスして、時谷の口の中に飴を押しこんでやった。


「苺ミルクの飴はないからな。代わりだ。観覧車キスをする迄には用意しておくよ。」


脳内の俺に負けるとか、許されない!絶対に想像以上のデートにしてやる!

俺のプライドにかけてな!!


時谷は完全に行動停止してしまい、「責任取って結婚しろ」と迫っても、一言も発しない。

しかし、声も出せない位パニックになってる筈なのに、“特性祐ボイスコレクション”を没収すると言ったら、大声で反論してきた。

………時谷、お前やっぱ、残念すぎる…。


“二階堂 祐”の正体を教えてやると、途端に時谷の食い付きが変わった。時谷の、“パニックを超越する二階堂 祐への愛”を感じて、嬉しくなった。

これからは、“生”でいくらでも聞かせてやろう。時谷になら、幾らでもサービスしてやる!


今なら聞けるんじゃないか?


時谷の今の病的な痩せ方の理由が知りたくて、写真よりかなり痩せた事を指摘する。俺は、両親の事故死が原因なんじゃないかと、思っている。脳内彼氏と別れたのも、それが大きな理由だった筈だ。

しかし、時谷は


「脳内“二階堂 祐”に失恋して、それからあんまり食べれなくなっちゃったんです……」


と、悲しそうに言って縋るように抱きついて来た。


え?それが理由?


唖然としたが、強く抱きしめて頭にキスしてやる。そうしながら、最後の手紙の事を思い出した。

時谷はあの頃、急に両親が死んで強く「大人にならなくてはいけない」と思い込んでいたようだった。精神的にもかなり追いつめられていたんだろう……。

その為、脳内彼氏と別れた訳だが、そのせいで心の支えも失ってしまい、拒食になったんだろう。

俺の勝手な想像だが、時谷の性格や言動から考えると、それが正解なんだと思う。

………まったく…。本当に時谷は、バカで可愛い…。「俺が守ってやる。」と強く思う。

これからは俺が、うんと甘やかして可愛がってやるから。

俺の愛情があれば、時谷の拒食は改善する筈だ。だから、プクプクになるまで、いや、なっても、たらふくの愛情を与えよう。

だから時谷、もう離してやらない。お前はココで、俺と一緒に暮すんだ。


同棲することに了解させるのは、簡単だった。なにせ時谷は、俺の顔と声に弱いのだ。甘い空気全開で、「すばる、お願い…」と囁けばイチコロだった。


ホントに時谷はチョロすぎる………。





昼近くまで、ベッドでイチャイチャ甘やかしながら過ごしてから、時谷の家に荷物を取りに行く事にした。

時谷には、俺のハーフパンツを履かせ、ウエストはひもできつく締めてずれない様にする。自分の鞄を持たせたら抱きあげてやり、そのまま地下駐車場まで連れていく。

車に乗せてすぐ、流動食のジュースを手渡し、飲むよう促した。これなら120ml位の量で、200Kcalあり、必要な栄養も摂れる。今の時谷にはピッタリの品だ。


車で一時間程の時谷のアパートは、ワンルームで、驚くほど生活臭の無い部屋だった。一緒に部屋に上がり込み、荷造りを手伝ってやる。

着替えも手伝ってやった。時谷は恥ずかしがって抵抗していたが、甘い声で「させて…」と囁いたら、動かなくなったので、その間に着替えさせてしまう。やっぱり時谷はチョロイ……

ついでに“二階堂 祐グッズ”は全て没収してやった。

帰ってから確認してやる!捨てる事はしないが、こんなものに縋るなら、直接俺に抱きついてくれば良い!!



引っ越しの手続きや、部屋の解約の手続きもさっさと済ませ、ショッピングモールに向かった。

服や小物を買ってやろうと思ったんだが、時谷の選ぶものは何故か、全て地味。

仕方ないので、モールの中にある美容院に連れて行き、髪を切ってもらうように促し、その間に俺の趣味で全ての買い物を終わらせた。明日のデートの仕込みも準備できた。

買い物を終わらせ、美容院に迎えに行くと、時谷も丁度終わったところだった。時谷の髪型は、少し長めのショートボブになっており、前髪も丁度良い長さになっている。うん、可愛い!




家に帰って直ぐに、夕食の仕込みを始める。時谷がどれ位食べられるのか解らないので、俺が食べきれる量を作る。今日のメニューは、肉じゃが・ひじき・ほうれん草の胡麻和え・味噌汁だ。自分の女子力の高さに、惚れ惚れする。

具沢山なスープも多めに作って冷蔵庫に鍋ごと仕舞った。

夕食を作りながら風呂の支度をし、何時でも入れるように準備しておく。


俺が家事をしている間、時谷は与えられた部屋で荷物を片付け、その後はソファーで眠ってしまっていた。

今日はあちこち行って疲れたんだろうな…。寝る子は育つと言うし…、沢山寝てスクスク育ってくれ。


「時谷、ソロソロ起きろ。メシ食うぞ。」

「ごはん……いりません…」


夕食が出来て声をかけると、時谷は目を覚ましたが食事は要らないと言う。

まあ、予想の範囲内だ。

俺は、時谷を抱きあげて、テーブルまで連れていく。一度椅子に座らせ、俺の茶碗にだけご飯を入れる。

それから、もう一度時谷を抱きあげて、膝の上に横抱きで抱えて席に着いた。


「え?なんですか、これは?どうして、抱っこなんですか!?」

「時谷は、子供を通りこして赤ちゃんになったみたいだから、俺が食べさせてやろうな?」

「なんですか、それは!私、ちゃんと自分で食べます!!だから、降ろして下さい!!!」


うろたえる時谷にニッコリ笑って言ってやれば、慌てて俺の膝から降りようとする。

しかし、離してやらない。最初が肝心なんだ。

“食べないと言えば、こうやって食べさせられる”と覚えさせる必要がある。

だから俺は必殺スマイルで、とっておきの声を繰り出す。


「俺がこうして食べさせてやりたいんだ…。昴は、俺の事キライ?こういう事されるの嫌か?」


甘えた様に囁けば、「はうぅぅぅ……。ソレはずるいですよぉぉぉぉ。」と言いながら身悶え、「解りました。おねがいしますぅ。」と真っ赤な顔で了承してくれた。


「ほら昴、あーんして?………おいしいか?」

「………は、はぃ……」


自分も食べながら、時谷の口の中が空になったタイミングで声をかけ、少しずつ食べさせていく。時谷は、小鉢2皿分位の量を食べた所で、「もう無理ですぅ」と小さな声で訴えた。

限界以上に食べさせる気はサラサラ無いので、「じゃあ、ソファーで食休みしてろ。」とソファーまで運んでやる。テレビをつけ、リモコンを渡し、俺は残りの夕食を食べる。

後片付けまで終わらせ、2人分のパジャマと下着を用意する。

ソファーの方を見ると、時谷は満腹になってウトウト居眠りをしていた。


一人で風呂に入れるのも不安だな。

まぁ、色々ついでだし、一緒に入るか!


そう決めて、俺は自分の服を脱ぐ。居眠りしている時谷からも服を剥ぎ取って、抱きあげて浴室に運ぶ。横抱きで膝に乗せた状態で、バスチェアーに座り温度調節をしたシャワーをかけた所で、時谷の目が開いた。

しかし寝ぼけているようで、まだボーっとしている。その間に、髪を洗ってやる。身体を洗い出した所で、しっかりと目が覚めてきたようで、「ふきゃぁぁ!な、なんですか?何してるんですかあぁぁぁ!?」と騒ぎ出した。


「ん?目、覚めたか?もうちょっとで終わるから、じっとしてろ?」

「お、終わるっって!!じっとしてろって!!!………っん」


うるさいので、ディープなキスで口を塞いでやった。時谷が蕩けた頃に、身体も洗い終ったので、泡を流しバスタブに入れる。

急いで自分を洗い、後ろから抱きしめる様にバスタブにつかる。お腹の辺りの感触を確かめるように撫でながら、「すばる、可愛い……好きだ…」と何度も囁きながら、首筋や細い肩に口づけた。

不思議なくらい愛情は溢れてくるのだが、欲望は涌かない。今はただただ、愛情を与えたくてしょうがない。


「もぅ、これ以上は私……死んじゃいますぅぅ…」


時谷が根をあげたので、風呂は上がる事にした。




その後も身体を拭いたり、着替えをさせたりと、時谷の世話を焼いていく。時谷も抵抗するが、「俺がしたい、させて?」と耳元でお願いすれば、抵抗しなくなる。


一緒のベッドで寝ようと誘ったら、これも嫌がった。しかし…


「一緒のベッドで寝たら、オヤスミもオハヨウも生で耳元で言ってやるぞ?」

「!」

「お前の方が遅く寝たり、早く起きれば、俺の寝顔も見放題だし。」

「!!」

「眠るまで、サービスでどんなセリフでも言ってやるし?」

「!!!」

「一緒に、寝よう?」

「し、しかたありませんね!そこまで言うなら、一緒に寝てあげます!!」


簡単に陥落した。


時谷……チョロ過ぎないか…?

これは恋愛なのか、心配になって来ました………。

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