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第28話:希望と絶望の狭間!そして新たな力を!(2)

 石橋の上で光に還したゲンメツンは201体。

 ボクはその間、只々エレメントを回収していた。笑いたければ笑えと自嘲する。


 そして少女達を見る。

 決して楽に勝利したわけじゃないけれども、リルプレア達の目には気力が満ちている。

 それならばとボクは戦う少女達を鼓舞する。

 まだ戦いは終わりじゃない。


「みんな! また魔王が何か手を打ってくるかもしれないトプ! その前に、いまこそ全ての力を出して魔王と戦うトプ!」


 心が痛い。こんな状況でなお戦いを勧めなければならないなんて。

 でも彼女達はボクの気持ちを察して明るく返事をする。


「よし! いくよ、みんな!」

「魔王を光に還しますわ」

「……やる」

「やっちゃいましょう!」

「やりましょう」


 そして彼女達は勢いよく最終ボス部屋に再び突入していった。

 ボクもその後を追う。戦いの邪魔にならない場所にいるだけなのだけど。


 最終ボス部屋の中。

 魔王ドノタウガは部屋の中央付近で悠然と立っている。


「なんだ……まだやる気か……?」

「うるさい!」


 リルフレイムが突貫する。広い最終ボス部屋もリルプレアの移動力を使えば魔王の場所までさして時間はかからない。そしてこの戦いで初めて魔王に直接攻撃をする。


 しかし彼女の攻撃は、地下一階のボス部屋で最初に魔王と会った時を再現しただけだった。

 剣を魔王の右手で掴まれ、そのまま振り回され投げ出される。


 ただ、そこからは違っていた。


 宙を舞った赤い髪の少女の身体は、深緑の髪の少女が受け止める。

 水色の髪の少女が爆音とともに水魔法を放ち、青色の髪の少女はその合間を縫って魔王に接近して己の刀を振るう。黒髪の少女が魔王の攻撃を鋼糸で妨害する。

 体勢を立て直した赤い髪の少女もそこに加勢する。


 ついに魔王ドノタウガとの戦闘が始まった。


 攻防の隙を突いたリルホーリーの水魔法。


 正面から力強く放つリルフレイムの炎の魔法剣。


 高速移動しながら斬撃がきらめくリルアイスの氷の魔法剣。


 味方に及ぶ危険な攻撃を逸らすリルドールの鋼糸。


 前後左右上下から翻弄するリルミュートの鉤爪。


 リルプレア達と魔王の姿が霞んで見えるほどの激しい戦い。

 魔王も悠然と立っていられる筈も無く。戦闘の場所は広い部屋のあちこちに移動する。

 斬撃が当たる音。肉体がぶつかる音。風を切る音。そして地面を揺るがす衝撃。

 魔王は自身の身体で全ての攻撃に対処している。

 時には受け、時には避け、そして時には拳を放ち蹴りを入れる。


 そして延々と続くかと思われた攻防は少しづつ天秤が傾いていく。

 それは――魔王ドノタウガの方へと。


 リルフレイムの攻撃が止まる回数が増える。

 リルアイスの身体が弾かれる回数が増える。


 主力二人の攻撃が弾かれるようになる。


 戦いのさなか魔王の嘲笑が響く。


「グワッハッハッハ……! 何だ、弱いじゃないか! お前たちそれで精一杯か!? 少し本気を出してやろう!」


 霞んで見えていた魔王の動きがさらに加速する。


 そして最初にリルミュートの身体が宙を舞う。

 次にリルアイスが壁際まで弾き飛ばされる。

 リル―ホーリーの目の前に現れて強烈な拳を加える。

 背後に現れた魔王に蹴りを受け吹き飛ぶリルドール。

 その姿に剣を振るったが受け止められ投げ飛ばされるリルフレイム。


 魔王は一旦攻撃の手を止める。

 そして部屋の中央で高笑いをする。


「グワッハッハッハ……! どうしたっ! まだ本気じゃないのに、もう終わりか!?」


 しかし少女達の気力は残っている。全員が立ち上がり魔王を睨み付ける。

 そしてリルフレイムが宣言する。


「あたしたちは絶対負けない! お前を倒して街のみんなを取り戻すんだ!」


 リルホーリーは全員にリカバリーを掛ける。

 しかし数値上のHPは回復しても根本的な疲労は癒えない。

 気力に溢れていても、その顔に疲れを浮かべるリルプレア達。


 魔王との戦いが再開する。

 圧倒的な力を見せられて、まるで相手にならないリルプレア達。

 打ちのめされて這いつくばる。

 そしてまた立ち上がり打ちのめされる。

 それでも戦おうとする。


 そんな彼女たちを見て魔王は心底つまらなそうな顔を見せる。


「なんだ、お前らはそんなに必死になって何がしたいんだ。どうしたって俺を倒せるわけがないだろう。お前らの先には絶望しかないのだ。諦めるんだな」


 それでも全員が立ち上がり、魔王ドノタウガに向かって力強く叫ぶ。


『私達は絶対諦めない!!』


「馬鹿な奴らだ……」


 再び戦い始める少女達。しかし届かない。


 ついにリルホーリーのMPが切れて回復が出来なくなった。


 リルミュートとリルドールは身体の傷で立ち上がれずに這いながら魔王に向かう。


 リルアイスは未だに刀を振るっている。

 何度吹き飛ばされても何度も起き上がり立ち向かう。

 しかし、ついに力尽きた彼女は這ったまま顔を魔王に向けて、睨み付けるだけしかできなくなった。


 そして魔王の正面に最後まで立ちふさがっていたリルフレイムは、遂に強烈な一撃を受け宙を舞う。

 何度も身体が地面にバウンドして、その度に彼女の身体が歪んでいく。

 しかしまだ意識を失わず強い意志を魔王に向ける。


「どうした。諦めないんじゃないのか? グフフフ……、ガハハハハ! 絶望しろ! お前たちの絶望が俺の望みだ。さぁ、見せてくれ! 極上の絶望を!」


 歯を食いしばる少女達。しかし彼女達には勝利への道筋が見えない。







 ――ボクは心を決めた。


 さぁ、ボクの出番だ。

 三頭身サイ妖精は最後の手段を取ると決意した。


 エレメントオルゴール……。お前はギリギリの命の輝きが好きなんだろう。

 ボクが見せてやる。

 魔王を相手にしてギリギリの命の輝きを見せる。

 到底生き残れるとは思えないけれどそれでいい。

 お願いだからリルプレアたちに力を与えてやってくれ。


 エレメントオルゴールを静かにその場に置く。

 そして【肉体変化】レベル2で巨体サイの姿になる。


「頼むぞ」


 エレメントオルゴールに告げる。

 あぁ、セリフに「トプ」をつけるのを忘れた。


 ボクは全速力で魔王に向かって走り出す。一直線に突き進む。

 リルプレア達がボクの姿を見ている。

 まだボクが何をしようとしているのか判らずに視線を向けているだけだ。

 もう少し、そのままでいてくれ。


「ムトーーーップーー!!」


 リルフレイムが気付いた。他の子たちの顔も驚愕に変わる。

 でもボクは間に合った。この距離なら届く。

 サイの巨体で魔法を唱える。


「いかずちよ! ここに! 【サンダーショット】!!」


 歯牙にも掛けないボクが何をするのかなんて、魔王ドノタウガは興味を持っていなかった。

 そして白い稲妻が魔王の身体に直撃する。

 魔法行使力15の雷魔法レベル1の威力は魔王になんの効果も与えない。

 それでいい。そのまま突進する。


 魔王からすれば塵芥のようなボクの行動に少女達は大きく動揺する。

 その反応を見て魔王は巨体サイの意味を知る。

 そしてボクの目的は成った。


「何だ? お前たちの使役獣か? ……こいつが闇に落ちればお前たちは絶望するのか?」


 リルプレア達は動かぬ身体で目の前で繰り広げられる光景を驚愕して見ている。

 魔王が力を込めた指先をボクに向ける。

 強烈な闇の力がボクを襲う。


 妖精は闇に染まらない。ただ光を失い消えるだけ。


 ――エレメントオルゴールよ……、どうか、これで……リルプレア達に力を……。


 サイの巨体はその場に何も残さず消滅した。



「……ムトップ……?」

「ムトップさ……ま……」

「……ムトップ……」

「ムトップ……?」

「……ムトップ?」













 不思議なことに、ボクの意識はそのまま消えずに残った。

 リルプレア達の呆然とした表情が見える。

 五人の少女がボクの名前を呼ぶが、肉体のないボクは声を出せない。






 いや……、ボクはここにいる。

 これは肉体なのか。




 ――【ステータス鑑定】


 名前:ムトップ 種族:エレメントオルゴール 性別:? 年齢:?

 職業:エレメントオルゴール妖精

 HP    1/   1(現在値/最大値)

 MP 5268/9999(現在値/最大値)

 物理攻撃力   0

 物理防御力 999

 魔法行使力 999

 魔法防御力 999

 器用値     0

 敏捷値     0

 幸運度    30

 移動力     0

 跳躍力     0

 スキル

 【言語認識】レベル5(MAX)

 【危険察知】レベル3

 【雷魔法】レベル1

 固有スキル

 【神の加護】レベル4

 【エレメント変換】レベル4

 【ステータス鑑定】 レベル2

 【プレアリング作成】レベル2

 技・魔法(カッコ内は必要スキル・レベル)

 【神の奇跡(神の加護レベル4)】

 【サンダーショット(雷魔法レベル1)】



 驚いた。ボクはエレメントオルゴールになっていた。


 確かに今の視界はエレメントオルゴールを置いた場所から見た光景だ。

 無くなっていた【プレアリング作成】がある。それもレベル2になっている。

 ボクは伊達メガネを光らせ……ようと思ったけれど、伊達メガネがなかった。

 そこだけちょっと戸惑ったけれど、ボクはこの異常な状況でも落ち着いている。


 でも、ボクにとってそれは当り前。


 なぜなら目の前の少女達が――呆然として涙を浮かべているから。


 近くに泣いている少女がいるのなら――、

 その涙を笑顔に変えるためなら全ての能力を使って何でもする。最優先で。

 それがボクのやり方。

 妖精としての使命だけでなく、ボクのプライドにかけて。

 自分の状況なんか気にするな――そう自分に言い聞かせながら。


 ――【神の奇跡】


 迷うことなく【神の奇跡】を発動する。効果はボクにもわからない。


 ボクの身体――エレメントオルゴール――が明るい旋律を奏でる。

 そして光り輝きながら宙に浮かび蓋を開ける。

 中から飛び出す五色の光。

 それぞれの色の光がリルプレアの身体を覆う。

 それは神の恩恵。少女達の全てが回復する。


 ――みんな、頑張るトプ。


 ボクの心がリルプレア達に届いた。

 ボクの力がリルプレア達に届いた。


 ――ボクなら大丈夫トプ。


「わかったよ! ムトップ!」

「わかりましたわ!」

「……んっ」

「やりますよぉ!」

「かしこまりました」


 全員が立ち上がり魔王に顔を向けたまま、ボクの思いに笑顔で答えてくれる。

 光り輝くリルプレア達の姿に聖なる力を感じたのだろう、少女達に向かって魔王が声を荒げる。


「何だ、いきなり力が戻ったな。だが、今更そんなものが何になる!」


 神の奇跡は続く。

 少女達は光をまとったまま跳び上がり、魔王の正面に全員が一列に並ぶ。

 中央にリルフレイム。

 その左にリルアイスとリルミュート。右にはリルホーリーとリルドール。

 両足を緩やかに広げ自然体で立つ。そして武器を持ったまま両手を上にあげて伸ばす。

 顔を上に向けて声を揃えて――新たな力を呼び出す。


『小さな祈りよ! 大きな力に!!』


 少女達の掲げた両手から輝く光が溢れる。


『リルプレア!!』


 全員が正面を向き右足を前に出してから両手を前に突き出す。

 頭上にあった光の奔流が少女達の前で渦を巻く。


『エグゼキュート! セイクリッドプレア!!』


 少女達の正面に集まった光の奔流から真っ白な力が竜巻のように噴出する。

 そしてその白い奔流が一直線に魔王を襲う。

 己に向かってくる膨大な力に初めて驚愕の表情を浮かべる魔王ドノタウガ。

 そして、白に飲み込まれる。


「グ













 グォッ……! ふ、ふふふ……驚かせおって……」


 魔王を覆い隠していた光が収束して消える。

 そこには魔王の無事な姿。多少髪の毛に乱れが見える程度で、身体に傷を負っているようには見えない。魔王は一瞬の沈黙の後に笑みを浮かべる。


「効いていない!?」


「今のがお前たちの新しい力か? 最大の攻撃か? 俺は何ともなっていないぞ」


「……どうして……?」


 少女達は無傷な魔王の姿に驚きを隠せない。

 自分達が受けた神の奇跡の力。

 それが魔王に届かないとは考えもしなかったはずだ。

 その力が届かないのであれば、どうすれば魔王を止められるというのだ。


 部屋全体に魔王の勝ち誇った声が響く。


「グワッハッハッハ! どれゆっくりと仕留めてやろうか!」



 ――そこに新たな声が響く。


 それは予想もしなかった人物の声。場にそぐわない軽めの話し方。


「ビスク。元気にしていたかい?」


 その声に大きく反応したのは黒髪の少女リルドール。

 一瞬間を置いただけで、すぐに返事をする。その声には安堵と喜びがあった。


「――マスター!! ご無事だったのですね!」


 彼女がマスターと呼ぶ人物。

 それは封印されたはずの――ダンジョンマスター。このダンジョンの管理者。


 その人物の姿は見えない。他のリルプレア達は状況が呑み込めず動けない。

 魔王もその人物には慎重にならざるを得ないようで動きを止めている。


 周囲の雰囲気を気にせずにリルドールの問いに答える声の主。


「あぁ、なんとかね……。リルプレアのみんな。ビスクに良くしてくれてありがとう」


「マ、マスター……」


 上を見上げて涙をこぼす黒髪の少女。

 その一方で魔王ドノタウガは声の主に毒づく


「……今更、お前が出てきても遅い。お前に何ができるというのだ」


「そうだね……。リルプレアのみんなとムトップ君。僕はここのダンジョンマスターだった者だ。さっきの攻撃で一瞬ダンジョン管理権限が緩んだ隙に封印から脱出できた。礼を言う」


「ばかめ、俺はもうダンジョン管理権限を取り戻しているぞ。何もできまい」


「伊達に何年もダンジョンマスターをやっていた訳じゃない。あの短い時間でもやれることはあったさ。まっ、そうはいっても大したことはできなかったけれどね」


「きさま、何をした!」


「君のね、能力値を2割ほど削ってみた。ムトップ君、今なら君のステータス鑑定で魔王のステータス、少しは見えるんじゃないか」




 ボクは魔王に【ステータス鑑定】を発動する。エレメントオルゴールの姿で。



 名前:ドノタウガ 種族:闇の存在 性別:? 年齢:?

 職業:魔王

 HP  2325/12036(現在値/最大値)

 MP   598/ 1220(現在値/最大値)



 これは……! 細かい能力値は見えないが十分だ。

 HPがこんなに減っているじゃないか……。もう一歩だ!

 ボクはリルプレアに思念を送る。


 ――魔王は弱っているトプ! さっきの攻撃はかなり効いているトプ。 


 ――そして能力が2割減っているのなら……! 次の攻撃で確実に倒せるトプ!


 ボクの念話でリルプレア達は全員が新たな気力を漲らせ魔王に対峙する。

 少女達の姿とダンジョンマスターの言葉から自分の不利を知る魔王ドノタウガ。


「むおっ! させるかぁ!」


 魔王の声から余裕が消えている。

 瞳に希望の光を宿して戦いを再開するリルプレア達。


 黒髪の少女は魔王を鋼糸で攻撃しながら、すっきりした笑顔を浮かべ声の主に説明する。


「マスター、今の私はリルドールです!」


「リルドール、素敵な笑顔になったね」


「リルプレアの仲間とムトップ様のおかげです!」


「うん、良かった」


 リルプレア達の戦いは続いている。

 魔王の顔からは徐々に余裕が失われていく。


 リルフレイムが叫ぶ。「私達は負けない!」

 炎の爆発が魔王を襲う。


 リルアイスが叫ぶ。「絶対にくじけない!」

 氷の斬撃が魔王を刻む。


 リルホーリーが叫ぶ。「希望を失わない!」

 水の奔流が魔王を打つ。


 リルミュートが叫ぶ。「絶対に諦めない!」

 爪の刃が魔王を翻弄する。


 リルドールが叫ぶ。「私達リルプレアは! 闇に屈しない!」

 煌めく鋼糸が魔王を束縛する。


 戦いが続きドノタウガの顔に焦りが浮かぶ。

 リルプレアの攻撃を力任せに振り払い、後ろに下がり力を込め始める魔王。


「ぐぉっ! こうなったら……」


 闇が黒い体を包み込む。

 そして――、魔王の身体が巨大化した。

 その姿は「ドラゴン」 身長10mはある黒龍。


「受けて見ろ! 最大の闇の奔流をぉ!!」


 漆黒のドラゴンの巨体から密度の濃い闇を噴出する。

 竜巻のように収束しながら渦を巻く黒い奔流。

 凝縮された闇がリルプレア達に向けて解き放たれる。



 ――みんな、もう一度トプ!


 ボクはもう一度【神の奇跡】を発動する。


 黒の奔流に対峙するリルプレア達に五色の光が包み込む。


 少女達は光をまとったまま跳び上がり、巨大な黒龍の正面に全員が一列に並ぶ。

 中央にリルフレイム。

 その左にリルアイスとリルミュート。右にはリルホーリーとリルドール。

 両足を緩やかに広げ自然体で立つ。そして武器を持ったまま両手を上にあげて伸ばす。

 顔を上に向けて声を揃えて祝詞をあげる。


『小さな祈りよ! 大きな力に!!』


 少女達の掲げた両手から輝く光が溢れる。


『リルプレア!!』


 全員が正面を向き右足を前に出してから両手を前に突き出す。

 頭上にあった光の奔流が少女達の前で渦を巻く。


『エグゼキュート! セイクリッドプレア!!』


 少女達の正面に集まった光の奔流から真っ白な力が竜巻のように噴出する。


 リルプレア達の真っ白な力の奔流。

 対するは巨大な黒龍の姿になった魔王ドノタウガから放たれた闇の奔流。

 両者の中央で激しく衝突して相克する。


『あああああああああぁぁぁあ!!』


「うおおおおおおおぉぉぉ!!」


 ボクはエレメントオルゴールの姿のまま。

 白と黒の光と影がぶつかり合う光景を見つめている。



 リルフレイム「ああああぁぁぁぁあ!!」――進撃の魔法戦乙女マジカルヴァルキリィ



 リルアイス「ああああぁぁぁぁあ!!」――殲滅の魔法戦乙女マジカルヴァルキリィ



 リルホーリー「ああああぁぁぁぁあ!!」――聖女の魔法戦乙女マジカルヴァルキリィ



 リルミュート「ああああぁぁぁぁあ!!」――隠密の魔法戦乙女マジカルヴァルキリィ



 リルドール「ああああぁぁぁぁあ!!」――統率の魔法戦乙女マジカルヴァルキリィ



 リルプレア全員が真剣な表情で力を振り絞る。



『あああああああああぁぁぁあ!!』



 ――力の奔流の均衡が破られる。白い奔流が黒い奔流を圧倒し始める。



 魔王の驚愕の表情と咆哮に白い奔流が襲い掛かる。



 そして魔王の闇が静かに白に塗りつぶされていく。



 その姿はやがて薄れていき、砂粒のような光で描かれた姿になる。

 その光の姿が拡散して空に舞い上がり消えていく。

 ゆっくりと、音も立てずに。







 ――そして、魔王は光に還った。







 戦いの全てが終わった。

 その場に静かに佇んでいる少女達――魔法戦乙女マジカルヴァルキリィリルプレア。




<次回予告>

ムトップ

「次回『エピローグ:新たな旅立ち』 最終回トプ」

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