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第七話 ご利用は計画的に

 ライセン市の中心部に位置する高層ビル。その最上階にある洒落た雰囲気の高級レストランで、俺とリアーナ、そしてユキノさん――先ほどギルドであった和服の人である――は揃って蒼い顔をしていた。


「ユキノはどうしてそうも計画性がないのよ……」


「まさかこんな高級なところで、遠慮なしに食べるとは思ってなかったんだ」


「ユキノが遠慮するなって言ったんじゃない。それにユキノの収入を知ってれば、金がないなんて思わないわよ」


 リアーナが言うには、ユキノさんはうちのギルドで一番バスター系のレベルが高く、現在レベル91。これは全国的に見ても少ないぐらいの高レベルだそうで、当然、収入はかなりあるはずだった。


「こ、今月はいろいろ立て込んでてな……。春色サクランボのフィギュアが同時に三種類も出たのがいけないんだ!」


 リアーナはもう何も言わず、ユキノさんの顔を黙って睨みつけた。ユキノさんはその迫力にうろたえ、わずかに後退する。彼女の手元には、やたら長くなった料理の伝票が置かれていた。

 ――すまん、金が足りない!

 ユキノさんがこんなことを言い出したのは、俺たちが食事を終えたついさきほどのことだった。今日は俺がギルドに入った記念ということで、先輩のユキノさんが俺たちに奢ってくれる予定だったのだ。遠慮はしなくていいぞ!などと自信満々に言うので、俺とリアーナはここぞとばかりにドンドン食べたのだが――その結果がこれだ。


「はあ……。で、どうすんのよ。はっきり言って私、お金は全然持ってきてないわよ」


 リアーナはそういうと、懐からカエルのデザインをした緑の財布を取り出した。そのガマ口をパチンとあけると、中には銀色の硬貨が数枚入っているだけだ。この世界の貨幣についてはまだよく知らないが……間違いなく小銭だろう。

 じゃらじゃら音を立てる小銭を見て、ユキノさんは額の皺を深めた。そして彼女は俺の方を向くと、申し訳なさそうな顔をして頭を下げる。


「すまん、金を貸してくれ。必ず返す、何が何でも返すから……頼む!」


「……わかりました。でも、今回だけですよ。次からは絶対に貸しませんからね!」


 俺はカバンから財布を取り出すと、ユキノさんが足りないと言った分の代金を払ってやった。はあ、これで鉱石を売って手に入ったお金の残高はほぼゼロである。それなりの額があったはずなのだが、今晩の宿代ぐらいしかもう残っていない。さて、どうしたものか……。



 ◇ ◇ ◇




 結局その日の夜、俺はギルドの仮眠室で過ごした。ここは本来、夜間の依頼を受けた冒険者が休むための場所だそうで、そのせいか寝具の質は悪くベッドは固かった。おかげであまりよく眠れなかったが、起きてみると意外に体は快調だ。もしかすると、昨日まで五百年間眠りっぱなしだったのが効いているのかもしれない。

 俺が起きたのは早朝、まだ朝焼けがはっきりと出ているような時刻だった。しかしすでに、ギルドの事務室の方へ顔を出してみるとすでにサユさんが起きて仕事をしている。人が少なくても事務方は意外と忙しいのかもしれない。


「おはようございます」


「おはようです。昨日は災難でしたねえ」


「まあ、しょうがないですよ。ユキノさんにも悪気はなかったでしょうし」


「彼女には今後、無駄遣いを控えるように私からも言っておきますね」


 サユさんはそういうと、後ろに置かれていたコーヒーメーカーに似た機械で俺に飲み物を用意してくれた。その黒い液体を一口飲むと、コーヒーと違ってずいぶん甘い。しかしミントの様なさわやかさがあり、朝に合いそうなおいしい飲み物だった。

 俺がそのラッカという飲み物を飲んでくつろいでいると、部屋の扉がギシッと音を立てて開いた。その向こうから現れたのは、ユキノさんだ。彼女は俺の姿を確認すると、クエスト用紙らしき紙を手にこちらへ近づいてくる。


「お、もう起きてたのか。実はな、良い依頼が見つかったんだ!」


「はあ、どんな依頼ですか?」


 彼女は手にしていたクエスト用紙を、俺の顔の前でバンっと開いて見せた。するとその依頼用紙には「繁殖したオーガの駆除、二名以上推奨」と書かれていて、報酬欄には0がひい、ふう、みい……六つもついていた。俺は目玉が飛び出しそうになる。


「さ、三百万ガメル!!」


「どうだ、すごいだろう? 私もこれを見たときはびっくりした。一緒に受けないか?」


「ええ……あ、でもこの依頼バスター系レベル40になってますよ」


 俺ははっきり40と書かれたレベル欄を示した。するとユキノさんは関係ないとばかりに首を振る。


「そこは大丈夫だ。私とタカハシがパーティーを組めば、二人の平均の46レベルまでは引き受けられる」


「そんなシステムになってたんですか」


「ああ、だから一緒に依頼を受けよう。必要経費以外、報酬はすべてタカハシが貰ってくれて構わないから!」


 必要経費がいくらかかるかわからないが、たぶんそんなにはかからないだろう。俺がユキノさんに貸した金額は約二十万ガメルだから、この依頼を成功させれば軽く十倍は返ってくる。報酬が高すぎるのが少し気になったが、俺としては悪くない話だ。


「受けましょう、この依頼」


「ありがとう!」


 そういうと、ユキノさんは俺に思いっきり抱きついてきた。む、胸が当たって……!!


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