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第五話 ギルタ洞窟へ

 タカハシがギルタ洞窟を訪れる数時間前。深い森の中にひっそりとたたずむそこを、三人の男女が訪れていた。一人は黒の執事服をぴっしりと着こなした中年の男。背はすらりと高く、掘りが深い顔立ちもかなりダンディだが、どこか頼りない雰囲気のある男である。そしてもう一人は黒髪を長く伸ばしたメイド姿の女。色白でやや目つきが鋭く、クールな印象を与える女である。彼女はきているメイド服が少し小さいのか、胸元が今にもメリメリっと音を立てて裂けそうなほど張っていた。

 最後の一人は、その二人の間に挟まれるようにして歩いている金髪の少女だ。クルクルと巻かれた髪と勝気な印象を与える青い瞳が特徴の少女で、十代後半に見える割には体のメリハリも効いている。


「あれですわ、きっとそうに違いありません!」


 金髪の少女は立ち止まると、ギルタ洞窟をピシッと指差した。後ろについてきた二人は彼女の方へ顔を寄せると、その手に握られたウィンドウの画面を覗き込む。そこに表示されていた地図は確かに、いま目の前にあるギルタ洞窟を示していた。


「ほんとにあんな洞窟にあるんですか? なんというか、もうちょっとオーラとか……」


「街からの距離が近すぎるように感じますね。普通、もう少し離れた場所に隠すのではないかと」


「二人ともわかってませんわね!」


 少女はそういうと、不満たらたらと言った様子の二人を一瞥した。彼女は腰に手を当ててドンと胸を張ると、大仰な身振り手振りで話し始める。


「いかにもな場所に隠すなんて、美学がありませんわ。RPGだってそう、裏ダンジョンへ通じているのはだいたい初期ダンジョンですの。だからこれでいいんですわ!」


「そういうもんっすかねえ……」


「現実をRPGと一緒にしてる時点でイタ……」


「だまらっしゃい! 行きますわよ!」


 顔を赤くした少女は、ドカドカと乱暴な足取りで洞窟の方へと進んでいった。そのあとをやれやれとため息をつきながら、二人は追いかけていく。

 そうして洞窟の中に入った三人は、特に何事もなく奥へ奥へと順調に進んでいった。もともと、この洞窟には稀に蝙蝠が巣を作っているぐらいで生物はほとんど生息していないのだ。道も平坦で広いため、進むのに苦労するような場所はないといっていい。

 十分ほどすると、三人は難なく洞窟の最深部へと到着した。最深部と言っても特に何もなく、突きあたりの壁があるだけであった。


「キリカ様、何もありませんが」


「ふん、ラピスは相変わらず無知ですわね。大事な宝物って言うのは壁の奥の隠し部屋にあるのが、RPGのお約束ですわ。セバス、ダイナマイト!」


「ちょ、爆破するつもりですか!?」


「もちろん、何のために準備させたと思っておりますの? 良いから早く出しなさい!」


 セバスはへいへいと応えると、しぶしぶウィンドウの中からダイナマイトを取り出した。キリカは意気揚々とそれを手にすると、火魔法で導火線に火をつける。そして一目散に、近くにあった大岩の蔭へと避難した。

 ドンと轟音がとどろき、洞窟が揺れた。三人の上に天井からパラパラと小石が降ってくる。キリカはラピスとセバスを自身の外側において、とりあえず自分の身を一番安全な場所においた。彼女は耳を手でしっかりと押さえながら、フルフルと震えている。

 そうして数十秒が過ぎると、洞窟はすっかり静けさを取り戻した。キリカは周囲が安全なことを確認するや否や元気になり、二人を置いてさきほど爆破した場所へと走り始める。


「やっぱりありましたわ、隠し部屋! 私の勘は正しかったですのよ!」


 壁に空いた大穴の向こうには、明らかに人工的とわかる空間が広がっていた。さらにその部屋の中央の台座には、人が入れそうなほどの大きな紅の宝箱が置かれている。キリカは胸を張り、口を手で軽く押さえると洞窟の外まで響きそうな高笑いを始めた。しかし、あとから彼女を追ってきたラピス達は途端に蒼い顔をする。


「キ、キリカ様! よこよこ!!」


「へ、どうかしまして?」


 セバスの声に従いキリカはすぐに横を見たが、そこには何のことはない岩壁が広がっているだけだった。彼女は不満げに眉をひそめる。すると今度は、ラピスが声を上げた。


「キリカ様、もう少し上を見てください! 上です、上!!」


 キリカはゆっくりと視線を上げた。すると何やら円筒型に壁が盛り上がっている場所があり、さらに視線を上げていくと――人間の顔の様なものがあった。


「ゴ、ゴーレム!!!!」




 ◇ ◇ ◇




 ギルドを出て十五分。ライセンの街から離れた俺は、周囲に人が居ないのをいいことにフルスロットルで走っていた。正確にはわからないが、たぶん自動車ぐらいの速度は出ているだろうか。森の木々が次々と後ろへ跳んでいき、瞬く間に見えなくなっていく。

 そうして森を走っていくと、あっという間にギルタ洞窟が見えてきた。あとはあの洞窟に入って、目的の鉱石を採取するだけである。さすがにレベル1だけあって、初心者向けの簡単な依頼だ。運悪く強力な魔物にでも遭遇しなければ、失敗するものまずなんていないだろう。


「ウィンドウウィンドウっと」


 俺はカバンの中からウィンドウを出すと、鉱石の写真データを呼び出した。するとたちまち、空間ディスプレイに青っぽい色をした鉱石の写真が映し出される。付属の説明文によると洞窟の奥の方に鉱脈があり、そこへ行けば大量に手に入るらしい。


「奥か。そういえばこの洞窟、最深部に隠し部屋があったよな」


 俺はふと、フェアリーストーリー中盤のイベントを思い出した。この洞窟の最深部に行って魔王の証というアイテムを使うと隠し部屋の扉が開き、銀の女神像という超重要アイテムが手に入るというイベントだ。しかし実際にはアイテムはすでに持ち出されていて、その手掛かりだけが手に入るという内容である。


「ま、関係ないか」


 宝箱の守護者とか言う設定のモンスターもいたが、正しい手順さえ踏めば爆裂魔法でもぶつけない限り動き出さないというこけおどしモンスターだったはずだ。だいたい、こんなイベントの存在を知っている奴なんて既にいないだろうし、もはや関係ないだろう。

 俺は空間圧縮カバンの方に入れてあるランタンを取り出すと、それを片手に洞窟へ突入した。


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