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第四話 ギルドのルールとウィンドウ

 しばらくすると無事に俺の加入手続きは終わり、ギルドカードが出来上がった。エイミさんの手からそれを受け取ると少し厚みのある、プラスチックのような材質の板だった。見た目は運転免許証に似ていて、左上に俺の顔写真が印刷されていた。さらにその右側には俺の個人情報と、1という文字が三つはっきりと記されていた。


「はい、ギルドカード。なくすと再発行するのがめんどくさいから、なくさないでね」


「はーい」


「加入手続きはこれで終わり。あとはギルドの説明か」


 そういうと、エイミさんはごちゃごちゃした部屋の奥から分厚いファイルを三つ持ってきた。それぞれ表紙の部分に「ハンター系」、「バスター系」、「ヘルプ系」と銘打たれている。彼女はそれらの束を俺の方へドンと差し出した。


「これがクエスト用紙のファイルよ。クエストって何かわかる?」


「街の人とかからの依頼であってます?」


「OKOK、だいたいそれであってる。ただこのクエストには3つの系統とレベルってのがあってね。まずはそのハンター系ってやつを開いてくれる?」


 俺はエイミさんに促されるまま、ハンター系と書かれたファイルを開いた。黒い表紙をめくると、中にはぎっしりとクエスト用紙がファイリングされている。近場の植物の採取からどうみても入手困難そうな鉱石などの採取まで、さまざまな依頼があって俺は思わず目移りしてしまう。


「ハンター系ってのは主に採取系の依頼の分類よ。何か取ってきてって感じの依頼は大体これね。で、こっちのバスター系ってのは魔物やならず者の討伐とかの分類。ヘルプ系は配達とかそういった依頼の分類ね」


「結構細かいんだ」


「わけとかないといろいろ不便なのよ。それで、ここ見て」


 エイミさんはクエスト用紙の右上を指差した。そこにはレベル1、クエストポイント300と書かれていた。


「このレベルってのが依頼の難易度よ。この数字が増えれば増えるほど難易度の高い依頼ってことになるわ。それであなたたち冒険者の方にもレベルが設定されてて、レベルが10以上高い依頼は受けられないようになってるのよ」


「なるほど。で、レベルを上げるにはどうすれば?」


「クエストポイントってのを貯めればいいわ。一定の数値が貯まるごとに1つレベルアップするわよ。この依頼の場合、こなせば300ポイントのクエストポイントが入るわね。ただし、レベル80以上になるとレベルアップするのにマスターの承認が居るわ。それから、レベルは3つの系統でそれぞれ別々に計算されるから気をつけてね」


 エイミさんの後ろでサユさんがうんうんと頷いた。へえ、割と良くできたシステムだ。確かに、ヘルプ系の依頼でポイントをたくさん稼いだ人が、バスター系の依頼でも高レベルとして扱われるというのは困るだろう。さらに一定以上のレベルアップを承認制にすることで、横暴な高レベルというのも防いでいる。


「他に何か注意事項とかあります?」


「そうねえ、一応このレベルって言うのは各ギルドで共有されてるわ。タカハシ君は絶対やらないだろうし、縁もないって信じてるけどギルドを移籍する場合とかに使えるわね。例えば、第一で高レベルだった人はうちへ来ても高レベルなのよ」


 そういうとエイミさんはじいっとこちらの方を見てきた。彼女は着ていた白衣を少しはだけて豊満な胸元をのぞかせながら、「移動なんてするわけないわよね?」みたいな少し意地の悪い顔をする。……Hいや、もしかしてIとは反則過ぎるよエイミさん。

 俺はそのほかにも捨てられた子犬の様な目をしているサユさんや、後ろできつい顔をしているリアーナの視線を感じると、両手を振って移動しないということをアピールする。い、色仕掛けとかに屈したわけじゃないけど普通に恩があるからそうそう離れられないからな。まだ他のギルドのこととかよくわかんないし。


「了解、じゃあ他には特に注意事項とかないわ。どうする、すぐに依頼受けちゃう?」


 時刻はまだ昼過ぎだった。小規模な依頼なら、これからやったとしても十分に終わらせられるだろう。俺は後ろに立っているリアーナの方へ振り向いた。


「どうする、一緒に行くか?」


「私はさっきの依頼で疲れちゃったから、今日はもういいわ。タカハシ一人でいったらどう?」


「それもそうか」


 考えてみれば、リアーナは俺と違ってそこまで体力ないだろうしな。俺は一人で納得すると、目の前に置かれていたハンター系クエストのファイルに眼を通した。レベル10以下で、できるだけ簡単そうな依頼を捜していく。すると、いちばん最後のページのあたりで良さそうなクエストを見つけた。


「これ頼みます」


「はいはい、ギルタ洞窟の鉱石採取ね。石の写真をウィンドウに送るから、出して」


「ウィンドウ?」


 VRMMO時代に使っていた情報ウィンドウのことだろうか? でもあれ、500年前の時点ですでに使えなくなってたよな……。

 俺がポカンとしていると、後ろでリアーナがポンと手を叩いた。彼女はやれやれと言った感じにため息をつきながら、俺をフォローしてくれる。


「ごめん、こいつウィンドウのことも知らないのよ。Sサイズの奴でいいから、貸してくれない?」


「ん? そうなの? 別に余ってるから貸し出してもいいけど……」


 そういうとエイミさんは、奥のコンピュータの上に転がっていたUSBメモリの様なものを持ってきた。大きさはスマホと同じぐらいで、側面に四角と三角のボタンがついている。リアーナはそれを手にすると、俺に向かって説明を始めた。


「これがウィンドウよ。えっと正式名称は情報物質複合端末だったっけ。とりあえずこっちのボタンを押してみて」


 俺が四角いボタンを押すと、ウィンドウの下側から光が照射され始めた。やがてその光の中に、段ボール箱の様なものが現れる。先ほどまではこの部屋になかったはずの段ボール箱だ。


「ふふ、すごいでしょ! このウィンドウってのは原理は私もよくわかんないんだけど、大昔あったウィンドウって魔法を再現した物らしくてさ。情報でも物でもなんでも入るの。物質の出し入れはこの四角いボタン。情報の方はこっちの三角のボタンを押すと立体ディスプレイが出るから、それで操作できるわ。PC複合型とかもあるけど、これは小さい奴だからそういう機能はないわね」


「すごッ!」


 どんだけハイテクなんだ? というか、いろんな分野に喧嘩売ってるんじゃないかこの商品? 俺の頭の中でツッコミが洪水のように発生するが、とにかくヤバいぐらいに便利そうな代物だ。発明した人、誰だか知らないけどマジでグッジョブ。俺の中であんたはエジソン並みの扱いだよ!

 こうして俺が興奮している間に、エイミさんがもう一つウィンドウを持ってきた。彼女はそれを俺が借りたウィンドウの上に置くと、SFチックな空間ディスプレイを出して写真データを選択する。するとすぐにピッという電子音が響いた。


「これでよしと、写真データが入ったわ」


「ありがと!」


「あ、言い忘れてたけどウィンドウってすんごく高いのよ! 壊したりしたら弁償だから」


「はーい、わかりましたよ!」


 俺は心配そうな顔をしたエイミさんにそう答えると、意気揚々とギルドの建物を飛び出した。ちなみに、目的地の洞窟がライセンからみてどちらにあるかは、既にゲーム時代から熟知している――。

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