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Absolute Zero 3rd  作者: DoubleS
第三章
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トラブルは必ず起こる 6

「どこにいるのよ。まったく……って雅史、聞いてる?」

 苛立ちながら水葉は監視カメラのモニターを見つめると同時に、塩沢へのマイクをつかんだ。

「聞いているとも。だが、見つからないものは、探すしかないだろう」

 塩沢の姿はモニターで確認できる。今は展望レストランのあたりを歩いているのが見えた。

「そろそろパーティー始まっちゃうんだけど、私はどうすべきだと思う?」

「お前がいなかったら、誰が監視カメラのモニターをチェックする。そこにいろ」

 水葉はため息をつくと、背もたれに体重をかける。ギギギという鈍い音を立てて、オフィスチェアがきしむ。

「北条君、パーティー会場の様子はどうなってるかしら。大ホールの監視カメラからは怪しい人間は見えないけど、現場はどうなってる?」

「……特に、変な人間はいません。ただ、まだ片平社長の姿が見えませんね。控室にでもいるんでしょうか」

 会場の監視カメラでは黒山の人だかりができている。ここまで人が多いと、もはやあまり監視の効果はない。

「おい、柳都。北原姉妹は今どうしている。変な行動をしていないだろうな」

「……姉はこの会場にいるのが見えますが、妹の姿が見えません。どこかをうろついている可能性が高いと思います」

「すぐに、どこに行ったか聞き出せ! そして連れて来い!」

 塩沢の苛立った声が、モニター室のスピーカーから流れだす。水葉は腕組みしながら、適当にモニターのパネルを操作した。

「…わかりました。聞いてきます。ですが、先輩も戻ってきてください。いったん、計画を建て直したほうがいい」

「…じゃあ、クライアントの控室に全員集合ってことでいいわね」

 水葉は投げやりに答える。北条からの通信が切れ、塩沢も面倒くさそうな唸り声を上げ「戻る」と一言だけ発すると、同じく通信を切った。


「霧矢君。聞こえるかしら。控室で待機してちょうだい。直接会って話しておきたいことがあるから」

 霧矢の声は何となく戸惑いを含んでいた。出鼻をくじかれ、不満そうな声を上げると、渋々了解の意を示した。



「水葉さんからの連絡だ。ここでもう少し待ってほしいらしい」

 霧矢は、部屋から出ようとした美香をUターンさせると、再び座らせる。ため息をつきながら、霧矢はドアが一つしかなく、窓は一つもない部屋の中を歩き回っていた。

「何があったの?」

「知らないよ。ただ、ここで待っていろだとさ。何か重要な連絡でもあるんだろう」

「爆弾を持った男がらみのことでしょうか?」

 霧矢は唸りながらソファーに乱暴に腰を下ろした。面倒事が起きている今の状況を何とかしたいと思っているのは、全員に共通していることだろうが、それぞれが持っている情報がバラバラすぎる。

 特に、今の霧矢は何が起こって誰が何をしているのか、よくわからない状態にあった。とにかく情報が欲しい。そうでなければ、守ることなど無理だ。

「とりあえず、水葉さんがここに来るらしい。何でも直接話したいとか」


 しばらく経って、部屋がノックされる音が聞こえた。

 霧矢は立ち上がると、念のため力砲をいつでも取り出せるような体勢をとりながら、ドアを開けた。

「……水葉さん…だけですか?」

「雅史が霜華ちゃんと風香ちゃんを連れてそのうち来るわ。それと北条君という彼の知り合いも来る。全員来たら、話を始めましょう」

 塩沢が来ると聞き、霧矢の表情が嫌悪へと変わる。できれば会いたくないと思っている時に限って、その人間に会うことになるのは、霧矢のジンクスのようなものになってしまったのだろうか。壁の方を向いて霧矢はうなだれた。


「すいません。ここで合ってますか?」

 聞き慣れた声が聞こえ、霧矢は振り向く。振袖を着た半雪女が部屋を覗き込んでいた。

「合ってるよ。塩沢もいるのか?」

「塩沢さんと北条さんは風華を探してる。先に行ってろって言われたから、来たんだけど」

 中に入ると、霧矢に耳打ちする。霜華は美香とレイ、そして水葉を知らないため、何者かと思ったらしい。特に、美香はともかく、メイド服を着たレイは珍妙な存在に映ったようだ。

「…誰なの、あの人たち」

「今回の護衛対象だ。わかるとは思うが、スーツを着ているのが水葉さん。ドレスを着ているのがクライアント、言葉遣いにはくれぐれも注意すること。いいな」

 美香は一応人前では猫をかぶっている。霧矢も、彼女にならってこの場では敬語で話そうと決めた。

「…彼女は、僕の連れで北原霜華と言います。うちの薬局の店員です」

 一応そう説明したものの、霜華の外見年齢は中学生ほどだ。どちらかというと世間知らずの美香は納得したような表情を浮かべているが、レイは疑問の表情を浮かべた。

 水葉は塩沢からの情報ですべてを知っているが、ここでは言わないことにしたらしい。黙っていた。もっとも、相手が相川探偵事務所の正体についてどれほど知っているかわからないが、魔族がどうだなんて話せるわけがない。

「……風華のやつ、何やってるんだ。一緒じゃなかったのか?」

「さっき、人ごみで気分が悪くなったみたいで、外の風に当たってくると言ってた。塩沢さんが見つけ出すでしょ」

(風華のやつ、迷子になってなきゃいいんだが……)

 霧矢は片目を閉じながら、霜華と水葉が話しているのを見ていた。

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