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クラス最弱だった少年と世界最強の大賢者  作者: 茶坊道化師
第一章
9/13

黄金に輝くイチョウの木

 俺のこの魔法は、この世界の人間はもちろん、元クラスメイト達も驚いていた。

 何せこの世界にはイチョウの木のような黄色い葉を持つ木々は存在しないからだ。


『な、な、な、なんと!学年主席のルイくんが唱えた魔法は初級魔法!?木属性の初級魔法が火属性の上級魔法を打ち破った!?前代未聞!!』


『黄金の木。まさか伝説に出てくるような神木を呼び出すとは・・・』


 伝説?

 スノーの言葉から察するに伝記か何かにはイチョウの木は存在してるのか。

 

「な、なんですって!?ワタクシの上級魔法を打ち破るなんて、そんな馬鹿な話ありますか!?どうして木が燃えないの!?まさか本当に神木なの!?」


「神木かどうかは知らねぇが、こいつはイチョウの木って言ってな。水分を多く含んだ木で燃えにくいらしいぜ」


「イチョウ?なんですのそれは!」


「この決闘が終わったら教えてやるよ。ライバルの一人だからな。もちろん俺の勝利で」


 さっきまでの威勢はなく、しっかりと身構えるフィーネ。

 なるほど、絶対勝つって言わなくなった。

 それだけ真剣なんだろう。

 だが、足りない!


「勝敗は決した!魔法を執行する!」


「何を!?」


「聞こえなかったか?俺の勝ちだって言ったんだ」


「魔法を一回防いだ程度で、生意気ですわ!」


「有利な状況で防がれた意味を考えろよ!」


 俺は手を叩いて、地面から木刀を取り出した。

 剣はあまりに握らせてもらってはいないが、まぁいけんだろ。


「木刀!?それは一体何の魔法ですの?というか貴方、剣を使う気?」


「魔術師が剣を使えないなんて誰が決めた?俺じゃないにしろ、剣術を使える魔術師はいんだろ?帝国の勇者みたいによ」

 

 こんなこと言ったら元クラスメイト達に勇者って言ってるもんだが。

 正直、イチョウの木を見た元クラスメイト共に俺の正体を隠すのは、無理があるとは思う。

 別にどうも思ってないが、面倒ごとに首を突っ込む気はサラサラないからな。


「動きがあの方と同等だなんて!?貴方は勇者じゃないですわよね!?」


「勇者ってのは勇ましい者って書く。俺はこの戦いを楽しんでるだけで、実践だったら逃走一択だ。貴族様に喧嘩を売るなんて冗談じゃない」


「だったらなんで、今・・・」


「この学園内は平等だ!間違っても王子に手を出せる機会はこの学園内にいる時のみしかない。じゃなきゃ学園に入学なんてしねぇで、冒険者になって生計を立ててるだろうが!」


 そりゃそうだ。

 俺は自分の力量を図り、師匠が認めた人間を倒したい。

 それができるのは今だけだと思ったから、元クラスメイトっていう面倒が入学してくるとしても、今年に入学をすることにしたんだ。

 

「まぁ御託はなしだ」


「気高き・炎よ・舞い散りーーー」


「遅ぇ!」


 フィーネが言葉を紡ぐ前に、俺はフィーネの目の前に木刀を振り下ろした。

 しかしその木刀が届くことはなかった。


「へぇ、決闘に介入するのは貴族としてどうなんだ?」


「ははっ、逆に聞くよ。貴族の矜持という理由で婚約者を守れない様な奴は、男としてどうなんだ?」


「そりゃあ最低だな!」


 目の前にレオンが現れ、俺の振り下ろした木刀の刀身を剣で切り飛ばしている。

 木刀の刀身はクルクルと宙を舞っていた。


「れ、レオン様?」


「フィーネ、君の負けーーーフィーネ!」


 そういう前に砕けた刀身が破裂して、破片がフィーネに向かって飛んで行った。

 予想していたわけじゃないが、万が一に備えて仕込んでおいた魔法が役に立った。


「がはっ!?」


「俺の勝ちだフィーネ」


 目の前にあるフィーネの肩代わりの人形を見ると、木っ端微塵に砕け散った。

 レオンも目を閉じて苦笑いしている。

 正直介入してくるとは思ったが、まさか剣を使って刀身を飛ばしてくるほどとは思いもしなかった。

 近接戦のできるタイプの魔導士だ。


「わたくしの負け?」


 冷や汗を流しながら地面に膝をついた。

 そんなに負けるのがショックだったのか?

 貴族だもんな。

 平民に負けるなんて許せないんだろうな。

 だけど勝負だからな。


『け、決着ぅうううううう!身代わり人形が粉砕したため、この決闘の勝利をもぎ取ったのはルイ・バルーンだぁあああ!』


 実況の掛け声と共に俺は空高く腕を掲げた。

 一度やってみたかったんだこれ。

 くぅー!

 勝利の余韻って奴だよな。


「レオン様にまで介入を許したのに・・・そんな負けるなんて・・・」


「フィーネ」


 レオンが慰めるために、ブレザーを頭にかぶせた。

 まさか泣いてる、のか?

 だけど、ここで涙を見せるのは周りに良くないよな。


「約束通り今日の晩飯は奢りなー」


『勝者のこの余裕!名だたる貴族や王太子候補の殿下を差し置いての主席は伊達じゃないってところだぁあああ!』


 大歓声と共に、会場が浮足立つ。

 いいねぇこの感じ。

 これだけ会場が盛り上がったんなら、決闘はかなりの回数行われるんじゃねぇか?


『驚きました。まさかフィーネ様が敗れるとは。ルイ、これほどの実力なのか』


『次は私と勝負してほしいものだね。とはいえ、新入生の初対決は見事主席の彼、ルイ・バルーンが勝利を収めましたぁああああああああ!』


 大歓声と共に、入学早々の決闘は終わった。

 あぁ、とんでもなく楽しい学園だな。


「君、僕が介入するのわかってたろ?」


「どうだかな?」


「あの勢いは身代わり人形を砕いてフィーネにまで届く勢いだったからね。君は聡明だ。()()()()()()()()()にそんな過剰なことしないだろ?」


「見たろ?俺とフィーネは相性が悪い。手加減できるほどじゃなかったって」


「あはは!君、剣術は苦手だろう?動きでわかるよ。それを使うほど余裕だったってことじゃないか。君面白いなぁ。是非とも許可が出れば手合わせしたいね」


「俺も望むところだが、もう事前の情報無しで戦いたくはないぜ」


「情けないこと言わないでよ帝国の勇者くん?」


 レオンのその顔は何を考えてるかわからない能面顔だ。

 王太子って情けない奴か頼りがいのある奴か、そういったモノがあるがそのどちらも感じない。

 だが殺気だけはヒシヒシと伝わってくる。

 婚約者を傷つけられそうになって逆鱗にでも触れたか?


「帝国の勇者じゃねぇよ俺は」


「そうだね。君は王国になくてはならない人材だ。だからそういうことにしておくよ」


 そういうと、未だしゃがみこんでいるフィーネを抱えた。

 その華奢な身体のどこにそんな腕力があるんだよ。

 大歓声が響く中、レオン達は一足先に闘技場の控室の道へ消えていった。


※次回の19時の更新でエピローグです。

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