木が生い茂り、火が舞い踊る
突然だが、決闘には解説がつくらしい。
『やってまいりましたぁああああああああ!魔導学園の学生による決闘バトルぅうううう!』
『グレイ先輩落ち着いて』
『決闘にはこの私、グレイ・デューオが実況させていただきます!解説には1学年次席のスノーを読んでいますよぉ!』
『スノー・フォン・ホワイトだ。よろしく頼む』
スノーの奴解説に呼ばれてたのか。
だが、あの実況とかいうグレイって奴はただらなぬ気配を感じる。
要注意としてメモしておくか。
「解説なんていりませんわ!平民など、秒で屠って見せますわ!」
「へぇ、言うじゃねぇか。挑発に乗ってやるよ。先制を許してやる」
『おぉおおと!フィーネは貴族の中でも指折りの実力者だ!不遜な態度!いい度胸してやがるなぁ!』
あんたもフォンって名前がついてないのに貴族令嬢を呼び捨てかよ。
十分いい度胸してるわ。
「我が元に・焔を・呼び出せ・紅蓮に・爆ぜろ」
おっと、そう思ってたら詠唱が終わったみたいだな。
単語を五つ、つまり第五階梯ってことだ。
つーことは上級魔法か。
結構大きな隙を見せてたのはそういうことだよ。
ちゃんと意味を理解してて助かるぜ。
『おーっとフィーネの上級魔法だぁああああ!』
『炎の上級魔法爆炎弾はその圧倒的な破壊力のみを追求した魔法です。アレンジを加えることは向かないため当てにくいが、火力だけで言えば全魔法でトップクラスを誇る。ルイの奴は防げるか?』
『魔法は初級中級上級で分けられることが多い。初級中級上級の詠唱は、第三階梯、第四階梯、第五階梯と分けられる。一学年の皆は実技で上級までの魔法の授業があるが、入学したばかりで上級魔法を使えるとは流石はボアルネ家と言ったところだが、対する学年主席はどうするのかぁああ!』
盛り上がってんな解説陣共。
いきなり最高火力を放ってきたんだ。
俺もそれに応えるぜ!
「食らいやがれ!」
俺のとってきおきの木属性魔法だ!
両手を二度叩き、地面に手をついた。
目の前にまで近づいた炎は、俺の手前から生えてきた木製の手によって潰された。
「中級魔法、蚊叩き!」
「な!?木属性!?それに無詠唱!?」
驚くのも無理ないよな。
魔法には七大属性があって、火、水、土、風、氷、聖、闇だ。
だが、木属性はそのどれにも属さない。
「馬鹿な!?どうして木属性魔法が、火属性の爆炎弾を打ち消せるの!?」
「さぁな。魔術の探求ってのは、教えてもらうもんじゃないだろ?」
木属性がの魔力が直接火を消したわけではないからな。
工夫をすればこんなこともできるぞってだけの話だ。
俺は両手を叩き、地面に手を置いた。
飛び出してくる木の形は、バッドに釘を刺した様な形。
「初級魔法、釘バッド!」
「気高き・炎よ・舞い・散り・踊れ!」
俺の釘バッドは、フィーネに当たる直前にアイツの魔法によって炎上した。
驚いたな、この対応の速さは流石だ。
伊達に王子妃はしてないってわけね。
「今のは初級魔法、火炎弾。だが、威力がおかしいな」
「詠唱の区切りを変え、第五詠唱に変えただけです」
『は、激しい攻防だぁ!それにしてもボアルネ嬢の火属性魔法は流石の一言。詠唱を区切り詠唱階梯を初球から上級に切り上げる技術は二学年で習う技術。それを習得しているとはね』
『それはフィーネ様は王子であるレオン様の教えがありますから』
『レオン様は王族史上最高の魔力を持つからね。使える魔法も多いだろう。しかしこの学園で七大属性の魔法と対等に戦える木属性魔法を使う者が見られるとは感激だよ』
『正直私も驚きました。彼の魔力量はレオン様に匹敵するレベルですが、まさか木属性を使うとは』
俺の魔力はそこまで多くないんだけどな。
まぁ勘違いさせるようにしたのは俺だからな。
俺は三度手を叩き、地面に手を付ける。
「その手を叩く行為が、詠唱の代わりってわけですか」
「へぇ二回見ただけで気づくとは流石だな!だが、今度のは簡単には防げないぜ」
これは三拍手だ。
手を叩くの一拍手で初級魔法、二拍手で中級魔法。
つまり三度叩いたと言うことはーーー
「上級魔法、木の処女」
鉄の処女を模した木の棺だ。
殺傷能力は高いが、サイズが小さい。
ゴブリンやオークと言った人型を殺すための魔法。
だが、人形が肩代わりしてくれる以上、そこについては問題ないよな。
「これは・・・まるでかつて勇者がもたらした魔道具の様ですね」
魔道具って絶対それアイアンメイデンだろ。
ってことは対処法も知ってるのか?
この魔法は勢いよく棘付きの棺桶が閉まる。
今から移動しても人間の速度じゃ逃げられねぇよ!
しかしそんな俺の予想とは裏腹に、木の処女は燃え尽きてしまう。
「ワタクシも・随分・舐められた・モノ・ですわ」
木の処女を足ふみの炎で消した。
第五階梯だが、今の技術は第五階梯の中でも高度な技術だ。
師匠がこれをできるのは、一握りって言ってたからな。
「詠唱変換。魔法の詠唱を変えることで、作動する魔法現象を変化させる技法。今のは火炎弾か?」
「ワタクシの得意魔法ですわ」
「会話をそのまま変換させるとは。全くこの学園に来た甲斐があるってもんだな」
正直、咬ませ犬かなんかだと思っていたよ。
まさか初戦からこんなに楽しませてくれる奴が相手なんて、俺は恵まれてるなぁ。