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クラス最弱だった少年と世界最強の大賢者  作者: 茶坊道化師
第一章
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最弱の少年は師匠に妬いています

 桜が舞い散る季節、異世界に転移して一年ちょっと経ち俺は16歳になった。

 一年で詰め込まれた地獄のような日々を思い出すとーーー


「我ながらよく生き残れたな俺・・・」


 短いようでかなり長い日々だったな。

 そのおかげで、この世界で生きるための知識と力を手に入れたから師匠には感謝だわ。

 学園に近づくと、いかにも風紀委員長という言葉が似あうような黒髪ポニーテールの女性が、腕を組んで仁王立ちしているのが見える。

 後方には風紀委員と思われる集団が複数いるな。

 絡まれないようにしないとな。

 師匠の推薦でここに来たんだ。

 正直堅苦しいが、入学の時くらい第一ボタンは閉めておかないと。


「ちょっと待て、お前新入生か?」


「あ、おはようございます!」


 まさか引き留められるとは思っていなかった。

 この人がもしかしたら師匠が認める奴の弟子かもしれないが、流石の俺でも初日から面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。


「お、おはよう・・・」


「じゃあ俺行きますね」


「ま、待て待て待て!」


 ポニーテールの横にいた、銀髪のぱっつん女子が俺の前に立ちはだかる。

 うわ、めんどくせぇ。


「なんですか?」


「お前からは魔力があまりにも感じられん!本当にこの学園の生徒か?」


「今日から入学するれっきとした生徒ですよ」


 そう言うと、近くにいた生徒達が驚きのあまりざわつき始めた。

 そりゃ俺は最弱認定されて、死の森に追い出されたからね。

 魔力は普通なら少しでも感じ取れるらしいし、この反応も頷ける。


「はい、これ。生徒手帳です」


「む・・・確かに・・・ルイ・バルーン」


 師匠にもらったバルーンの姓は、この世界で俺の身分を登録する際に保護者としてもらったものだ。

 豊海と名乗ると、俺を召還した奴らやクラスメイトに俺が生きていることが知られると大変面倒なのが伺える。

 俺は腕を食いちぎられて死にかけたストレスで髪が白髪になったから、顔が同じでも気づく奴はそんなにいないだろう。


「待て、お前学年主席のルイ・バルーンなのか!?こんなちんちくりんが?」


 おっと、初対面でこの態度はさすがにイラっと来るな。

 というか学年主席になってたのか。

 通達しろよ、代表挨拶とかあんだろ・・・と思ったが貴族も入学するからな。

 代表はどっかの貴族なんだろうな。


「あの、もういいですか?」


「むむむ・・・」


 まだ銀髪ぱっつんが怪訝そうな顔をしてる。

 こいつの見立て通り、魔力量低いしな。

 魔力量が魔法の強さに匹敵するのは、この世界の常識だし元の世界のゲームにも魔法を発動するための最低限のMPってのは存在するしな。


「す、すまないウチの者が!」


「別に気にしてませんよ。疑われるということは、俺の魔力制御が褒められたようなものですからね」


 師匠には感じ取れない魔力の低さは魔力制御で抑え込んでると答えろって言われている。

 自分たちの都合で呼び出しといて、魔力が低いってだけで死ねと言われるような世界だ。

 当然、俺も低いことは隠すつもりでいた。


「ほとんど感じ取れない。これほどまでに抑え込むとはすごいな。あ、申し遅れたな。私はこの学園の生徒会長のツェル・フォン・フィッツハーバートだ。よろしくルイ」


「生徒会長さんだったんですか」


 いきなり大物じゃねぇか!

 フィッツハーバートって言ったらこの国の公爵だ。

 辺境伯をまとめる軍事貴族であり、フィッツハーバートを敵に回したらこの国では生きられないと言われるほどだ。

 その貴族子女ってことは、それなりの実力者かカリスマを持ってるって事だよな。

 

「こちらこそ申し遅れました。私はレイ・バルーンで平民です。この国の公爵家令嬢様が、平民である私に声をかけてくださるのは、至極光栄なことで」


「あ、頭を上げてくれ。この学園では貴族も平民も関係ない。実力がすべてだ。私は実家が太いから、生徒会長になれたが、平民より実力が劣る貴族も少なくない」


 おっと、意外と話ができる人物だ。

 しかしまぁ後ろの銀髪が不満そうにしてるな。


「平民が主席ぃ!?何か不正をしたんじゃないのか!」


「おい、スノー」


「はぁ・・・めんどくさ」


 流石にため息が出そうになる。

 俺は相手がどんなに弱い、それこそスライムでも油断はするなと師匠に教わった。

 だから仮に逆の立場だとしても、魔力が小さかろうが、平民だろうが、決して油断はしない。

 だと言うのにこいつは、肩書や自分の見たもので物事を判断している。

 死の森には本当に自然と一体化して、死を振りまくような魔物もいた。

 あの森が非常識だったのはわかるが、流石にこれはない。

 

「えーっとスノー先輩だったけ?」


「私はスノー・フォン・ホワイトだ!ホワイト子爵家の令嬢だぞ!それに私はお前と同い年だ」


 同級生かよ。

 なのになんでここにいるんだ?

 フィッツハーバートの親しい貴族だからとかか?


「あーじゃあスノー」


「呼び捨てぇ!?お前、平民なのにーーー」


「お前は公爵家のフィッツハーバート令嬢様が崩していいと言った事を反故にできるほど、偉い身分なのか?」


 ホワイト子爵家の情報もある程度はある。

 昔は軍事力に優れた魔法使いの家系だったが、昨今活躍している当主や抱え込んでる貴族家はいなかったはずだ。

 

「それは・・・だが少なくとも貴様が不正してない証明をしてもらおう!何もしなくていい。魔力の制御を解いて魔力を見せてくれればいい。それくらいならいいですよねフィッツハーバート様!」


「スノー、お前なぁ。だがまぁ私も気になる。無理にとは言わないがやってくれると嬉しい」


 俺は魔力が低いんだって言うのに。

 まぁこれくらい想定してたからな。

 ペテンだが、乗り切ることはできる。


「わかりました。少し離れていてください」


 俺がそういうと全員距離を取る。

 魔法として構築してなくても、

 未だに俺のことを伺ってるのか銀髪女は動く気配がまるでない。


「おい、銀髪。離れろって言ったんだが」


「ふんっ、お前程度の魔力でどうにかなる私じゃないからな!」


「だったら、遠慮なく」


 これが俺のペテンの方法だ。

 見てろよ!

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