プロローグー学園生活は退屈しないー
この学園に来てから早くも一週間が経とうとしている。
俺はフィーネの所為で毎日決闘の日々だった。
今日も朝登校前に一人倒したが、木属性って言うのばかり噂が歩いてる所為か決闘を挑んでくる。
Dクラス以下の生徒はどうやら闘技場には来ていなかったみたいだな。
「全く疲れるぞ、こう毎日決闘に挑まれるのは」
「貴様の実力を疑っているモノが多いんだ。貴様とフィーネ様の決闘で闘技場に居たのは各学年のA、B、Cクラスだからな」
「それはわかってるけどよ。どっかの誰かの所為で俺は苦労してるんだが?」
俺はこの話に聞き耳を立てているフィーネに視線を移す。
こいつが俺に挑んだ決闘の賭けの内容、レオンに主席の座を渡せってやつの所為で俺の毎朝の決闘という学園生活が始まってしまった。
ばつが悪いのか、少しだけ縮こまっていた。
高飛車ぷりが全く垣間見えない。
調子狂うな。
「僕の婚約者をあまりいじめないでくれよ。反省してるんだから」
「別にいじめちゃいねぇよレオン。ただ余りにも相手に張り合いがない。せめて俺が木属性ってこと以外の情報を仕入れてから挑んできてほしいぜ」
「まったくだ。認めたくはないが、私ではお前に太刀打ちできるかどうか」
「謙遜しないでいいよ。君も僕を差し置いて次席なんだから、フィーネより強いはずさ」
「殿下の言葉痛み入ります」
「でーたよ猫かぶり貴族~にゃーにゃー」
「だ・ま・れ!」
スノーの氷のつぶてが俺に飛来するので、俺も手を一拍子して丸太を出した。
見事につぶては丸太に突き刺さる。
これ変わり身の術みたいだな。
「相変わらず出鱈目だね。スノーとフィーネは詠唱の速さだけで言えば国内トップクラスに入るんだよ?」
「俺の事を鍛えたのはバケモンだったからな。それにスパルタだった」
この反応速度は師匠が余りにも凄すぎたといえる。
並大抵の魔術師なら師匠の足元にも及ばないだろうな。
だが、フィーネもスノーもそれなりに強いことがわかる。
「今日は地面に手を当てないんだな」
おっと、着眼点がいいな。
俺は確かに地面に手をつくことで詠唱の一つを終わらせている。
「流石次席!よく見てるなぁ。俺と決闘するか?」
「はぐらかすか。悪いがやめておこう。フィーネ様は善戦していたとは言え、ルイの身代わりに傷一つつけられてないからな。落葉高木の攻略法も見つかってはいない」
攻略法なんかねぇよ。
所詮イチョウの木を生やすだけの魔法だ。
ちょっと丈夫で固い以外に特にいいところはねぇんだよな。
「正直黄金の落葉高木みたいな炎にある程度強い木は応用力があんまりないんだ。獄炎流星を吹き飛ばせるかは、正直わかんなかったと思うぜ?」
「いいですわよ慰めは。わたくしはただ平民相手に傷一つつけられず、レオン様と我が家に恥をかかせてしまっただけですわ」
「そんなことないよ。フィーネはよくやってくれてるさ」
「元を正せばあの軟弱不健康ゴリラのせーーー」
おっと、俺が言葉を紡ぐ前に頭を鷲掴みにされたぞ。
この感触は間違いなくこのおっさんだ。
「うぉ、今日ゴリ先早いな」
「誰が軟弱で不健康だ、あぁ?」
「鏡見ろよ、あんたどう見ても不健康だぞ」
「さっさと席付けやボケェ」
ゴリ戦が来たことで、俺達は一斉に席に着き始めた。
「かーっ、お前が決闘した相手が全員貴族だから大変だったんだ。男爵家ばかりだから謝るだけで済んだが、フィーネの時みたいな負けても気持ちの良い試合をしろ」
「どうしろってんだよ、あんな雑魚共!詠唱も嚙みまくりやがって、舐めてんのかよ」
「だからってテメェ、拳一つで終わらすな阿呆が!」
「全員先に一発魔法を打たせただろうが!」
教室のAクラスの奴らがほぼ全員頷いてる。
仕方ないだろ。
最初の先制を許すだけでもかなり譲歩しただろ。
「お言葉ですがグレゴリー先生、こればかりはルイの言う通りだと思います」
「スノーの言う通りだね。僕も男爵家がここまで恥知らずだとは思わなかったから、家には注意を入れておくよ。貴族の予算で養育費は出してるのに、平民だと馬鹿にして詠唱を嚙むのは酷すぎるからね」
「正直頭を抱えたくなりました」
俺もこの二人同意見だなー。
貴族って横暴でも最低限の実力は兼ね備えてると思ってたのに。
「うるせぇ!モンスターペアレンツの相手する身になれってんだ!」
「逆切れかよ。あ、そうだ。ゴリ先俺と決闘するか?勝ったらいうこと聞いてやるよ」
「は?しねぇよ?俺は戦闘は専門外だからな!自慢じゃないがこのクラスの最下位に勝つ余地すらねぇよ」
それ胸を張って言うことか?
頭抱えたくなってきた。
「じゃああんたに何ができんだよ。今日はあんたの最小の魔法化学の授業なんだけど?」
「ふっ、さすがいいことを言うじゃないか!」
「さっさとやれよ」
そういうとゴリ戦は黒板に文字を書き始めた。