エピローグー帝国面々の反応ー
元クラスメイト達は、ルイとフィーネの決闘を前にして息を飲み込んでいた。
それはこの世界の人物は、これほどまでの実力だと驚きを隠せずにいる。
当然、人知を超えたチート能力を各々もらっているため、多少の能力差があってもそれを埋めることは可能だろう。
しかしそれは安全圏とは程遠いものであり、平和な現代日本から来た彼らにとって危機感を抱くには十分だった。
「おい、あんな化け物が二人もいるのに俺達呼ばれたのかよ」
「そもそも俺達はなんでこの世界に呼ばれたんだ?」
クラスメイト達が呼ばれた理由は色々あるが、ひとえに戦争の道具という側面が強い。
帝国は勇者という戦力を使い、他国に牽制をしたかったのだ。
例え能力が低くとも、それは変わりないのだ。
中でもリーダー格の志門永久、有阿弥真理、古扉須知奈は、ルイ・バルーンを豊海塁が同一人物だと思っていた。
「豊海の奴、あれほどの力を身に着けてやがったのか・・・」
「ルイくん・・やっぱり貴方は塁くんなんだね」
「豊海、塁」
この三人は帝国勇者の中でも群を抜いて化け物だった。
歴代勇者でもこれほどの傑物はいなかったとさえ思えるほどに。
そして皇族並びに帝国貴族は豊海塁を放逐したことを後悔した。
中でも勇者と共に入学した帝国の生徒の苛立ちを見るや否や、それだけ帝国がルイを気にかけていることが伺える。
「くそっ、トヨミ・ルイの奴生きていやがった。しかも王国の焔と呼ばれるボアルネ家の令嬢を、木属性で一蹴しただと?」
「黙れサイア」
「メルド、お前は何も思わないのか?俺達が追放した奴らがーーー」
「黙れと言っている」
メルドは親指をくいくいっとある人物の方へ視線を誘導する。
それは帝国の皇太子であるルビ・ド・ホーエンだった。
「申し訳ありませんルビ殿下」
「構わん。奴はどう考えても追放した最弱の勇者だ。だが今の実力を見ればわかる。奴の実力は現勇者達の中でも抜きんでて強い」
「だが最弱なのは確かだぜルビ。奴の勇者スキルはーーー」
「黙れメルド。殿下、メルドが申し訳ありません」
メルドとサイアとルビは幼馴染であり、メルドは未だ子供のころの感覚が抜けてはおらず、公の場でも言葉遣いを改めないことがあった。
それでもサイアがメルドを言葉遣いを改めないのはそれだけメルドの実力があるからだった。
「構わん。確かに奴の勇者スキルは最弱だった。それは間違いではない。奴に一体何があった?戦闘の素質も何もなかったはずだ」
「ステータス測定器は本国に戻らなければなんとも。しかし現状を見るべきかと」
「そんなの見なくても、俺があいつに喧嘩売って決闘を申し込んでやるよ!」
「負けるとまでは言わん。しかし仮にも帝国貴族が王国の平民に負けたとなればどんな処分が下るかわからんぞ。奴の実力は帝国勇者の中でも上位に当たるとして間違いはない」
「殿下のおっしゃる通りだメルド。私達の役割を忘れるな」
「殿下の警護、並びに勇者の暴走時の制圧か?あいつら三人が暴れれば俺達では手は付けられないし、他の奴らは伯爵以下の生徒でも制圧できる程度だ」
「本文を忘れるなと言っただけだ。それに奴にぶつける勇者の贄なら考えている」
サイアは先ほどまで眉間に皴を寄せたような顔から一変、小悪党が武器を投げ出して逃げるほどの下種な顔を見せている。
メルドはその顔を見て、ろくな目にあった人間を知らない。
思わず苦笑いがこぼれた。
「はは、お前に目を付けられた奴が可哀想だな」
「正直なところ、トヨミ・ルイを捨てるよりも奴を捨てたかったほどだ」
そう言って帝国の勇者の一人を指さした。
その顔は酷く沈んでいて、爪を噛みながら睨みつけている。
「奴の顔を見ろ。劣等感に苛まれている。実にいいじゃないか」
「はぁ。貴様の嗜虐趣味は今に始まったことじゃないが、勇者は一人一人が帝国の財産だ。トヨミ・ルイの様なケースになる場合もある。ほどほどにしろ」
「えぇわかっております殿下。これを」
そういってサイアはルビに資料を渡した。
その資料を捲っていき内容に驚かされた。
最後のページには皇帝の印が押されており、これが正式な状であることが伺えた。
「なるほど、それならば納得だ。思う存分やるといい」
「殿下ならそう仰ると思いました」
「ふーん、どれどれ?うわ、えげつねぇ。これ考えたのあの爺さんか?」
「さぁな。だがおかげで、奴は捨て駒として使える。実にいいじゃないか」
「俺もアイツと闘ってみてぇからな。頼むぜ!」
帝国の勇者や貴族、その他にもルイに注目が集まっていた。
入学から波乱の学園生活が始まったレイ。
その波乱はまだまだ続くと思われる。
※一章はこれにて完結です。
次章は来週の月曜日を予定しております。
お楽しみに




