小さい頃から女の子に憧れていた少年の葛藤と成長
新学期が始まった。中学に上がり、制服が変わった。男子は詰襟の学ラン、女子は紺色のブレザーにチェックのスカート。
校門をくぐると、体育館の前のコートで女子テニス部の子たちが練習しているのが見えた。白いスカートがひらりと揺れる。
その光景を眺めているうちに、ふと自分の胸の奥に奇妙な感情が湧いていることに気づいた。
――観ているだけじゃなくて、自分もあの制服を着てみたい。
スカートの裾が風になびく感覚を知りたい。ブレザーの下にブラウスを着て、リボンを結んでみたい。
そんなこと、考えたこともなかったのに。
戸惑いながらも、その思いは消えなかった。むしろ、日を追うごとに強くなっていった。
(もし、僕が女子の制服を着て、あのコートに立っていたら……?)
頭の中で、何度もその想像を繰り返すようになった。
――これは、ただの好奇心? それとも……?
そうして、僕の「新しい自分」を探す日々が始まった。
第一話:
僕の名前は一ノ瀬さとし
母と一緒にスーパーへ行くのは、小さい頃からよくあることだった。
食品売り場を回って、最後に日用品コーナーへ向かうのがいつもの流れ。
そして、その途中にあるのが――下着売り場。
棚には、レースやリボンのついた可愛いショーツや、カラフルなキャミソールが並んでいる。
(可愛いな……)
ふと立ち止まりそうになるけど、母に気づかれたらまずいと思って、足を早める。
「さとし、ちょっとここで待っててね」
母はそう言って、婦人用の下着コーナーに入っていった。
(どうしてだろう……)
僕は昔から、男の子用のトランクスやブリーフより、こっちのほうが気になっていた。
レースのついたパンツ、ふんわりした生地のキャミソール。
肌に触れたら、どんな感じなんだろう?
――着てみたい。
そう思ってしまう自分が怖かった。
男なのに、こんなこと考えるのはおかしいんじゃないか。
でも、心のどこかがずっと求めていた。
「さとし?」
母の声で、ハッとする。
「どうしたの? ぼーっとして」
「ううん、なんでもない」
慌てて顔をそらして、歩き出す。
でも、その日から僕は、自分の中にある小さな違和感を無視できなくなっていった。
初の小説を書き始めました。
同じ様な思いをした方が共感して貰えると嬉しいです。