ゆいこのトライアングルレッスンU2~文化祭はもう始まっている~
「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」の企画「ゆいこのトライアングルレッスン」
2025年2月14日オンエア分のテーマ:U2(ユニフォーム)に投稿したものです。
不採用でしたがここで供養させていただきます!
もうすぐ文化祭。
どこのクラスも準備でバタバタしている。
放課後、クラスの集まりを終えて帰ろうと廊下を歩いていると、自販機の前でいつもと様子の違うひろしと遭遇した。
「あ、ゆいこ」
「ひろし、その格好……」
ひろしは白衣を着ていて、聴診器を首にかけている。胸ポケットにはクリップで留められたネームホルダー。前髪はいつもと違って上げられていて、黒縁眼鏡を掛けている。
「お医者さん…?」
「ああ、うちのクラスの文化祭の出し物、コスプレ喫茶なんだよ。今試着してて。
でも喉渇いたから抜けてきた」
……似合い過ぎでしょ!
ひろしにこの格好をさせてくれた先輩たち、ありがとう!!
「ほんと、女子ってこういうの着るのも着せるのも好きだよね……俺にはなにがなんだか…」
「わかってないなあ!」
「ええ…」
「いい!?ときめきの基本はギャップだよ!?
こういうのはねえ!着るだけでギャップを簡単に作れるすごい発明なんだから!
ひろしだっていつもと違う雰囲気の人になんかいいなとか思ったことぐらいあるでしょ!?」
「ふーん……」
ひろしは白衣を脱いで、そのままなぜか私に着せる。
「なるほどね…なんか分かった気がする」
……どういう意味!?
それに、ひろしの匂いと温もりを感じて動揺してしまう。
「いや、私はいいの!ひろしが着てるのがいいんだから!」
すぐに白衣を返し、動揺を隠すように注文をつける。
「飲み物買いにきたんでしょ?
待って!まさかその格好でいつものジュース飲むつもり!?
だめ!缶コーヒー!ブラックのやつにして!
えーとあとは……」
「あれ、ひろしにゆいこじゃん。何してんの?」
ぎゃあぎゃあ騒いでいるとたくみが現れた。
……って、たくみもいつもと違う格好なの!?
制服のシャツの上に紺色のシンプルなエプロンを付けている。
ずるい。エプロンを1枚着けただけなのに、なんでそんなに爽やかになっちゃうの!?
いつものやんちゃな感じはどこにいっちゃったの??
「俺のクラスはコスプレ喫茶で今試着中なんだけど、飲み物を買いにきたらゆいこに見つかってその格好でジュースは無いってなぜか怒られてるところ」
「へ〜。ひろしも大変だな」
「まあな。
たくみは?模擬店だっけ」
「そ。今試作中。
余ってるのあるけど食う?」
そう言ってたこ焼きを持ってくるたくみ。
「ほれゆいこ、あーん」
「ちょっと!子ども扱いしないでよ!」
「なに?照れてんの?いつもと違う格好の俺に見惚れたか〜?」
「はあ!?そんなわけないでしょ!」
ぱくり、とたこ焼きを食べる。
うん、おいしい。なんかうまく丸め込まれた気がしないでもないけど。
たくみもひとつ口に運ぶ。
「ふーん、おいしいじゃん。我ながらなかなかの出来栄え」
「おいしいじゃんって…もしかして味見もせずにいきなり人に食べさせたの!?」
と文句を言って気づいた。
あれ?今たくみ私に食べさせた爪楊枝でそのまま食べなかった!?
それって、間接キ……いや、ないないない!
たぶん爪楊枝に口はついてないもんね?
いや、でも……
だめだ、変に意識しちゃうよ〜…!
「へー、俺にもくれよ」
そう言ってひろしがたくみから楊枝を取って、たこ焼きを食べる。
ひろしまで!!!
「ほんとだ、おいしいな」
なんで私を見て言うの!?
……文化祭、まだ始まってもないのに刺激が強すぎるよ〜!