親友が異世界に行っていた
男女の友情は成立すると思うだろうか?はたまた成立しないと思うだろうか?
これは僕が親友にされた質問だ。
世界には人の数だけ考え方がある。実際に成立している人もいるだろうし、最終的に結婚まで至る人もいるだろう。
実に難解で正解の無い質問。僕はこんな風な問題は色々考えさせられるけど、わりと好きだ。
ちなみだが僕は「そんなことよりげっ歯類派」だ。
親友にそう答えたら困惑しながら爆笑されたのはいい思い出。
ちなみに親友の回答は「とりあえずおっぱい揉みたい」だった。
フザケンナコノヤロウ。
そんな愉快な僕の親友の名前は楠瀬笑顔。名前の通り、これでもかというくらい笑顔が似合う美少女だ。そして笑顔は、男と女どっちもイけるオールラウンダーであり、元カノが1人いる。
笑顔との思い出を話せばキリがないが、半分以上が僕の苦労話になってしまうのは許して欲しい。
それはさておき、件の笑顔からこんなラインがきた。
笑『たすけろください』
果たしてお願いなのか命令なのか。非常に悩ましいラインだ。とりあえず
僕『好きなウサミミの形の話でもするか』
と返信しておく。笑顔はなんだかんだ僕より頭が良いし、運動できる。彼女の赤ん坊の頃の写真を見るまで、正体は宇宙人だと思ってたくらいだし、ラインする余裕があるなら暫くは大丈夫だろう。
笑『異世界に来ちゃった』
なかなかにブッ飛んだ返事が返ってきた。昨日は八次元で、今日は異世界か。よし、既読スルーで行こう。僕も暇じゃないし。
笑『聞いてる?』
笑『ねえ?』
笑『おーい』
笑『ウサギの獣人がいたよ』
僕『写真』
僕『いそげ』
すぐに返信する。そういう大切な事をなぜ真っ先に言わないのか。宇宙人の思考というのは一ミリも理解できそうにない。
笑『私のこと助けてくれ?』
僕『ダマレはやくしろ』
クエスチョンマークがつけば命令じゃなくなるとでも思っているんだろうか。………思ってるんだろうな。
笑『バカ!アホ!』
笑『(検閲削除になる言葉)』
僕『わかった』
僕『僕が悪かった』
僕『助けるから』
僕『写真はよ』
笑『気分悪くなったからヤダ』
なぜスマホには画面越しに相手をぶん殴れる機能がないのか。こんなにもスマホにイラついたのは久しぶりだ。
僕『見捨てるぞ』
笑『ゴメン嘘ついた獣人はいない』
笑『てへぺろ(・ωく)』
なぜスマホには画面越しに相手を呪う機能がないのか。もっとニーズに合わせて進化して欲しいものだ。
僕『(恐ろしい暴言)』
笑『大変誠に申し訳ありませんでございました』
謝罪文の後に1枚の写真が送られてくる。
僕『?』
笑『異世界の証拠』
僕『偽物?』
笑『それならどれだけ良かったでしょう』
僕『ドンマイ』
僕『おやすみ』
めちゃくちゃリアルな森と異世界生物だった。
しかもだ。写っているのは異世界ファンタジーの代名詞『ドラゴン』。漆黒の鱗と背中に生えた大きな翼、そして口元に見える鋭い牙を持っていて、眠っているが写真越しにプレッシャーを感じた。
笑『助けて』
笑『助けて』
笑『助けて』
笑『助けて』
笑『助けて』
笑顔の助けての連投にとても必死さを感じる。でも僕に何をしろというんだ。画面越しに呪いをかける事ができない以上、僕にできるのは全力の応援くらいだ。……それを求めてるのか?
僕『頑張れ!』
僕『ファイト一発!』
笑『楽しい人生でした』
違ったらしい。笑顔が人生を諦めてしまった。あの図太くてしつこい笑顔がだ。
ここは僕が渇を入れてやろうと思う。
僕『諦めるな!こんなところで死ぬんじゃない!』
笑『ドラゴンおきた』
僕『安らかに眠れ』
僕『君のことは1ヶ月は忘れない』
どうやら僕は無力だったみたいだ。ここは潔く笑顔の来世に幸せがあるように祈るとしよう。
そんな事を考えてスマホを閉じて黙祷をしていると
笑『不思議バリアーで助かた』
僕『時間返せ』
僕『無事で良かった』
笑『本音もれてる』
僕『気にするな』
それにしても助かったならはやく言って欲しかった。僕が黙祷をしていた1分弱を返して欲しい。
笑『私の周りにバリアーがあるみたい』
僕『チートってヤツ?』
笑『わかんない』
笑『瞬きしたらこの森にいたから』
僕『オッケーわかった。つまりどゆこと?』
笑『出禁になった女子更衣室にコッソリ侵入して瞬きしたら異世界にいた』
僕『とりあえず反省しとけ』
何をやっているんだろうか僕の親友は。そもそも女子が女子更衣室を出禁になるって何したんだよ。
めっちゃ気になるじゃん。
笑『だって可愛い娘がいたんだもん』
僕『その世界の警察に捕まっとけ』
笑『まってひらめいた』
嫌な予感がする。
笑『異世界ってことは奴隷とかもいるよね』
僕『それ以上言うな』
僕『僕に殺意を沸かせないでくれ』
笑『断る』
よし未読スルーしよう。
癖の強い親友がいたら人生楽しそうですよね