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別離
森の隠れ家に豪華な馬車が横付けされた。
ミュラに迎えが来た。
ついにその時がきた。
サラの目は涙でいっぱいだった。
「ありがとう。
また逢える日が来るわ。」
でもそれは気休めだった。
サラはダノアを出ることはできない。
勝手に連れていけば、誘拐だの、なんだの騒がれてしまうからだ。
ミュラと二人の老婆は馬車に乗り込んだ。
馬車は音もなく出ていった。
馬車が見えなくなるまで手を振った。
肩を落として家に戻ろうと、きびすを返すといきなり抱きすくめられた。
「迎えに来る。必ず迎えに来る。」
アシュリーの大きなマントに包まれて、涙がいっぱいこぼれた。
アシュリーは手を離すと懐から何かを取り出した。
銀の髪飾りだった。
「さしてやろう。
そんな顔をするな。
俺を誰だと思っている。」
「待ってる」
アシュリーはひらりと馬に股がり去っていった。
サラはただ立ちすくんでいた。
馬上でアシュリーはサラを引き取る方法に思いを巡らせていた。
(うまくいくはずだ)




