表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ハルカ

作者: 瀧蒼李

春の匂いがする。


窓から命の気配にまみれた空気が入ってきている。


3月の夜はまだ冷える。


けれど私は窓を開けた。


月が綺麗に浮かんでいて、ため息をつきたくなるような眺めだ。


静かな夜に春の大気が満ち、町にふわりふわりと不可思議な春の緊張感が舞っている。


学生の頃は1年というのは必ず4月から始まるものだったから春というのは理由もなく緊張し、理由もなく浮き足立った。


始まりに人間は期待してしまうものだからそれは仕方ないことだろう。


とっくに学生をやめてしまった今、春に何か特別を感じることは減った。


私の特別な春は、とっくの昔に終わってしまっている。


けれど今年も、名前も知らないどこかの誰かが特別な春を過ごしているのだろう。


そう思うと寂しさと、そして少しの期待、きらめきのようなものが胸の隅に現れる。


私には届かない春、遠い春。


けれども、芽吹いたばかりの新芽も、膨らみ始めた蕾も、今咲き誇る花もあるのだ。


今こそ花盛りの、美しい若者たちがいる。


どうか、短い春に最も美しく咲けますように。

どうか、その胸にこの短い春の香りが永遠に宿りますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ