重い
「あのさお兄ちゃん、私に彼氏が出来たらどう思う?」
「なんだよいきなり」
光に相談した日の夕方、優希は士郎に聞いた。
まだ夕食前だ。
「いいから、私に彼氏が出来たらどう感じるのか率直な意見が聞きたいの」
「うーん。あれだけ好き好き言ってたのに彼氏作るって事は本気で俺の事好きじゃなかったんだなと思うぞ」
「本気だよ」
「……じゃなんなんだよこの質問」
「だってさあ嫉妬してほしいんだよぉ。私の愛の一方通行が空しくなってきたの」
「だから、いつか女として好きになれたらこっちから言うから我慢しろよ」
「ホント?」
「ああ、本当だ」
そう告げながら士郎は自信がまるでなかった。実妹のイメージが焼き付いて離れないからだ。義妹と今さら言われてもきついのだけど。
「じゃ約束してほしい事あるんだけど」
「なんだよ」
「前に私以外に恋人作らないって約束してくれたよね? それ一生の約束にしてほしいんだ」
「……一生か」
士郎はすぐに肯定する事が出来なかった。一生このままはさすがに重くないか?
考え始めた士郎に優希は悲しそうな顔をした。
「……やっぱり私の事嫌いなんだ」
「……なんでそうなるんだよ」
「だって私お兄ちゃんと添い遂げたいもん」
「あのさ優希さんよ。極端なんだよお前は」
「……極端?」
「まだ俺たちは十代だぞ。一生の約束なんて今したって未来は読めないよ。その約束が重すぎるぞ」
率直な意見を士郎は口にした。本心だった。
「重いのかぁ……でも溢れて抑えられないからさ、今の気持ちが」
「……もうお前が具合悪くなるのが嫌だから何も話したくなくなってきたぞ」
「えー、お話したいよぉ。お兄ちゃん怒らないでよぉ」
「じゃこういう質問はやめてくれ」
「……わかった」
渋々だが優希は頷いた。
本当に優希を女として見られる日が来るのだろうか。士郎はだんだん悲しくなってきた。俺たち一生このままなのか? と。
もう士郎は考えるのが面倒だった。