約束
「なあ優希。お前なんで俺に拘るんだよ」
休日になった朝、士郎は優希に疑問をぶつけた。
「え? 好きだからだけど」
「好きって兄貴として好きって事じゃないよな」
「うん。男の人として好きだよ」
「それが判らないんだよ。俺お前に男として好きになられる自信あんまり無いぞ」
優希は目をぱちくりさせた。
「お兄ちゃん!」
「? なんだよ大声出して」
「正座しなさい」
「は?」
「反省のための正座」
「反省って何をだよ」
「いいから正座」
「……わかったよ」
渋々妹の要求に応える。
士郎は床の上に正座した。
「あのねお兄ちゃんは誤解してるんだよ」
「誤解?」
「私はずっとお兄ちゃんに守られてきたんだよ。困った時助けてくれた事忘れたの?」
「……そんな事あったっけか」
「おっきな犬に噛みつかれそうになった時も庇ってくれたし、いじめっこからも守ってくれたし」
「……あのさ俺の事美化しすぎじゃないか。兄貴なら当然の事してるだけだろ」
「違うよ。だって私は本当の妹じゃないから優しくされる資格がないんだから。それなのに優しいお兄ちゃんに恋して当然でしょ。なんでそれがわかんないの」
優希はきゅっと唇を噛んだ。
「でもな優希。実の妹か義理の妹かはもう俺には関係ないんだって。もう俺とお前は兄妹の絆で結ばれてるんだよ」
「でも実の妹とは結婚できないでしょ」
「……まあ、そうだけど」
「義理の兄妹なんて曖昧な絆より確実な夫婦の絆がほしいんだ」
「……お前の言いたい事はよくわかった」
「やっとわかってくれたの?」
「だけど承服しかねますな!」
「はい?」
士郎は立ち上がった。
「お前な、夫婦だって離婚する人もいるだろ!? その位不確かな絆なんだよ!
「!?」
「でもな兄妹は血が繋がってなくても確かな絆なんだよ! なんでそれがわかんないんだよ!」
士郎の剣幕に優希が言葉を失う。
「わからず屋のお前とはもう未来の約束は無しな! 以上!」
士郎がリビングから出ていった。