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父と息子

 久しぶりに父である直人と士郎が食事をする機会が訪れた。

 直人はサラリーマンで真面目な性格で酒もタバコもやらない人だ。

 四十を越えているのに若々しく見えるし、顔も悪くない。

ちなみに、女家族二人は買い物に出掛けて家にいない。

「父さん。聞いてるよね?」

「何の話だい、士郎?」

「優希だよ。あいつから好かれて困ってんだ俺」

「兄妹仲がよくていい事じゃないか」

「度が過ぎるだろ。恋人にしてくれって。将来結婚したいらしいんだ俺と」

「まあまあ士郎落ち着いて」

「……父さんは反対じゃないのかよ。普通じゃないだろ兄妹で結婚って」

「士郎、優希の気持ちを考えてやりなさい。あの子はまだひとりぼっちの悲しさから脱け出してないんだから」

「ひとりぼっち……」

「あの子が自分だけよそものだと思い込んでる事は、もう知ってるだろう」

「……知ってるけどさ」

「士郎は夫婦の絆を否定したとお母さんに聞いたけど私はそうは思わないな。兄妹の絆よりは夫婦のほうが他人同士なんだからゼロから作った分強い絆の気がするけど」 

「そんなの頭では、わかっているよ。でも妹のイメージ取れないからさ。女として意識できないよ」

「女として意識しなくて大丈夫だよ士郎」

「へ?」

「あくまでも妹として愛しなさい。あの子に他に好きな人ができないとは限らないんだから」

「他に好きな人……できるかなあいつに」

 ずっと好き好きアピールしてくる義妹が振り向かなくなる日が来るのだろうか。予想がつかなかった。

「問題は士郎、君だよ」

「え!? 俺?」

「士郎、君が別の人を好きになれば優希が諦めるんじゃないかい?」

 盲点だった。なぜかそんな考えは今まで浮かばなかった。

「でも父さん、俺本当に他に好きになる人いないんだ。嫌われるのが怖いからさ、クラスの女子とも話した事ないし」

「優希から嫌われるのは怖くないのかい?」

「……だって優希は妹だから。何を言っても心の底からは嫌われない自信があるんだよ」

「もう実の兄妹みたいだね、その確信」

「そうだよ。実の妹と同じ気がしてるから困ってるんだ」

 どうすれば正解なのかがやはり分からなかった。実の兄妹のように過ごしたいのが本音なのだ。

「士郎、君は本当に頭がかたいね」

「そうかな」

「僕だったら、実妹同様の義妹から好かれたなら、嬉しいもんだけどね」

「異性としてが、引っ掛かってるからさ。俺は異性として見られない気がしてるから」

「思い込みはよくないよ、士郎。もしかしたら女の子として見られる日が来るかもしれないからね」

「来るかな、そんな日が」

「未来はわからないって君も優希に宣言したんだろ? お母さんから聞いたよ」

 士郎は何も答えられなくなった。

 父も優希の味方だったか……。想定外だった。

「さあ、もうご飯冷めちゃったね。電子レンジで温めようか」

 真砂子が作ってくれた料理を直人が運び出した。

 士郎は追い詰められてる気がしてきて辛かった。いや分かるよ! 俺が折れて優希を恋人にすれば丸く収まるんだろ! でも抵抗したいのはしょうがないだろ! 実妹と結婚したかったなら変な人なんだから、義妹とわかってもそれと同じ感覚抜けないんだよ!

 叫びだしたくなったが必死に我慢した。ああ、頭の中ぐちゃぐちゃだよ。優希、お前のせいだからな。士郎はもうグロッキー状態だった。

「士郎、顔色悪いよ」 

 父さんあんたもかよ。もう考えるのはやめようかな。

 士郎の葛藤はまだまだ続きそうだった。

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