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輪廻の圏士  作者: くろよ よのすけ
41/46

41.始まりの慈愛③


 紡がれるは未来への進撃、終滅へ直走る極限の契約。


「顕現契約———、現世に降り立て帝釈天、契約結びし我が同胞よッ!」


 神を世界に降ろす、『代行者』を介すことのない、存在として人の限界を超えた契約。


「ただ一度も、揺らぐことなく灯し続けた我が渇望」


 人間が神の眼前に立てば魂ごと焼き尽されるだろう。


「交わした盟約をここに果たそう。御身が仇敵、我が宿敵を叩き潰したその先に、光輝に満ちた正しき世界があると信じたのだからッ!」


 だが、それを為せるからこその特級、人の理を超えた特別な個体。

 なればこそ、武人である彼の神も応えよう。最強の名を冠するに値する雷霆が、人でありながらも自身と同じ領域に足を踏み入れた武人を無碍に扱うことはしない。

 空に入った罅に向かって声を張り上げる。

 我等はすでに対等、原初に願った怒りは色褪せぬ。進むべき道を見誤ったことなど一度たりとも存在しない!!


「望みし世界は何も変わらぬ、原初の誓いを今ここにッ!!」

 

 故にこの言葉に嘘はなく、成し遂げるためには御身の力が必要だ!


「世界を破壊し再編すべく、今降り立てよ雷霆の覇王ォ!!」


 罅が広がり亀裂と化す。亀裂が砕け、その中央に巨大な円環が創出される。


「世界を視るべき瞳を以って、終の敵手を打ち破るがために——ッ!!」


 ——空に孔が開く。

 ガラスのように砕けた世界の一部は孔の中に吸い込まれ、開いた孔の向こうには雷霆渦巻く黒き世界が顔をのぞかせている。


 だがそうじゃない、一目見て直感的に理解した。

 アレは瞳だ。

 横一線に入った亀裂。その亀裂を押し開けるよう中央に君臨する雷の円環は、人の世界を睥睨する神の瞳に他ならない。暗く、昏い。暗雲立ち込める世界に通ずるその奥では色をなくした雷雲と、そこから生み出された雷鳴が立ち込めている。雷鳴までの実際の距離は想像を絶するはずだというのに、音だけで心が引き裂かれそうになる。

 遠い遠い昔話。

 消え去ったはずの神が、世界に帰還する。


神威(シンイ)顕現ッ!! 雷霆に座す覇の軍神(インドォゥラ)天界統べし神々の帝王(パーピーヤス)!!」


 神さえ対等に扱い、同じ目的をもって世界を破壊せんとする。人と神の誓約がここに為された。


「ここからが本番だ、神殺しをするなら気合を入れろ。これが最初で最後の機会になる」


 頭上の円環は月に遮られた日輪のごとく。

 外縁だけが光輝を発しているというのに、その威光は黒く染まり切った世界を光で染め上げる。神の怒りをぶつける先、破壊に足る相手を探し回っているかのような錯覚。

 この世界に降り立った存在、正真正銘の神。

 そして、呼び出した男が目の前に立っている。世界に仇為した友は最後まで止まることはしない。


「君は、本当に凄い。でも、その力の使い方を誤った。止められるのが僕だけなら、その役目を、使命を果たして見せる……ッ」

「そうか……、“お前の”使命か」


 最後まで立ちふさがることを止めない敵手に対して、失うことの悲しみを、溢れる喜びを隠すことなく刀を構えた。物語の終わりを惜しむように、終点に辿り着いたことを喜ぶように。

 終わりが始まることに微笑んでいた。


「トーレス、お前達の……いや、お前の真価を見せてくれ。それでこそ、ここまで来た意味がある。そのために、ここまで来たんだ。最後にお前が来てくれて……、本当に良かった」


 一瞬、これまでに見たことも無いような穏やかな表情で語りかける自分に驚いた。

 俺にとって、もはや終末は見えている。そのことに不思議と安堵してしまう。

 天に輝く円環よ、どうか世界を照らしておくれ。俺から奪った想いを糧に、歪な世界を破壊してくれ。

 一人の友を殺したこの俺に

 一人の友を殺すこの俺の

 最後の願いを聞き届けてくれ


  □ □ □


「……すごい、けど……っ。私たちなら勝てるよ、トーレス」


 雷霆神の恐怖に震える身体を、強がりで押し殺す。前に向かうための道標に変える。

 空を見上げた先、顕在する虚構の日輪は見つめただけで瞳を潰す。

 あぁ確かに、人が神の前に立とうということ自体が馬鹿らしく思えるほど、破壊へ対して純粋な神威が孔の奥から溢れてきている。

 あの神威を正面から打ち破ろうなど、想像しただけで恐怖に呑み込まれる。始まる前に先の可能性を殺してしまいそうになる。

 けれどもう、アイレンにも先はない。

 あぁもう本当……、ただ僕を倒すためだけに神を顕現させるなんて、本当にどうかしてる。


「うん……。僕か、アイレンか。どちらが勝ってもこれで終わりだ。アイレン……、君に勝利はない」


 三度の具象で積み重ねてきた十年足らずを失った。

 人の身で扱えるほどに程度を抑えた神器でそれほどの代償、戻ることのない砂上の楼閣。

 ならば、神を顕現するにはどれほどの代償を払う必要があるのか。僕には分からない。きっとアイレンにさえ想像もつかないのだろう。


「空に開いた瞳が消え去った時、アイレンは代償を払うことになる。そうなれば、もうアレインは戦えない」


 かつて、アイレンが赤子となって拾われた時も、これほどの存在を呼び出そうとしたのだろうか。

そしてそれは、誰の為の行動だったのだろう。

 視界に入る全てを焼き尽さんとする雷霆、円環の瞳。見つめられただけで心臓が止まってもおかしくない状況に立つ、僕達と同等の存在が彼の前に立ったというのか。


「……なら、逃げる?」


 悪戯っぽく聞いてくるミカは、僕の返す言葉を分かってくれている。その上で聞いてくるのは、彼女なりに緊張をほぐそうとしてくれてる。

 だから、僕も精一杯に強がろう。

 この先、生きていく中で失うものも手を離してしまうものも数多くあるだろうけど。今この瞬間、大切な物を失うつもりは何一つとしてないんだから。


「……ううん、逃げない。友達のつもりだったけど、お互いにちゃんと踏み込んだことは無かったから……、最後くらい、ちゃんとしたいんだ」

「バカね……。でも、そういう優しいところが好きよ、私」

「……、ありがとう。僕もだ」


 前を見据える瞳は揺らぎ、光に呑み込まれそうになる。

 構えた剣先は震え、ちゃんと振るえるかどうかも怪しい。

 そんなことは彼女にとっては丸わかりで、分かっているからこそ体に手を回して抱きしめてくれる。優しく言葉をかけてくれる。


「怖い?」

「怖くない」


 でも、僕も男だからさ。


「頑張れる?」

「頑張ってみる」


 僕にだってそれくらいの意地はあるんだ。


「勝てる?」

「勝つよ、ミカが生きてくれる限り」

「……うん、なら大丈夫。勝とう、アイレンに——」

「ああ、負けたりなんかしない、絶対に勝つ」


 視界は白一色に染められそうなのも、震えが止まらないのも変わらない。

 でも、もう恐れはない。

 この戦いの先に未来を掴みとれるなら、最後の最後まで足搔き続けて見せるッ!

 アイレンの言うように特別成長が早かったとしても所詮は付け焼刃。僕一人の器では、神に対抗できない。神殺しの力を具象しようとも、扱うのが人である限り神には届かない。

 けれど、僕にはミカがいてくれる。一人で届かない領域なら、共に手を伸ばせばいい。


「ミカ、君に会えて本当に良かっ———、ん……っ」


 もう話す機会もないかもしれないから、ちゃんと言っておこうと思ったんだけど、その言葉は唇でふさがれた。


「……その言い方、お別れの挨拶みたいで嫌。もっとロマンチックなのがいい」

「ええっ? えーっと、…………うん。……この先どうなったとしても命の終わる瞬間まで、ミカを護る、誓うよ。この気持ちを裏切ったりはしない。だから、力を貸してほしい。友達を止めたいんだ」

「ええもちろん。だから、私も貴方に誓わせて? 最後の最後まで力になる、絶対に傍を離れたりしない。もう、トーレスを悲しませたりしない。私に宿ったすべてに通じる世界樹の力を、思う存分に振るってほしい」


 全身を覆う影が、僕の体内へ樹木のように根を張る。外部からだけではない、肉体の内側から直接働きかける暖かな神威。ミカの持っている全ての神威が、僕に譲渡される。貴方の思うままに使ってほしいというミカの意志。

 戦いのすべてを僕に託してくれている。

 その信頼を、裏切るわけにはいかない。

 そして、もう一人。すごく待たせてしまったらしい友人だけど、後ほんの少しだけ——。


「アイレン、少しだけいいかな?」

「はぁ……まったく……、あぁ——待つのも慣れた。これで、最後になるしな」

「ゴメン」


 既に神を呼び出した時点で、アイレンは後戻りできないと同時に戦いが終わるまで、自分自身の終わりを引き延ばしている。

 暗闇を疾走するための片道切符は既にきられている。

 それに気恥ずかしいけれど、アイレンはやっぱり分かってくれているらしい。

 だから、決意が鈍るのが怖いからつい、ミカへ視線を向けることなく。


「けどね、君を傷つけたくはないっていう気持ちも本物なんだ」


  □ □ □


「え?」


 トーレスの背中にしがみつく私を護って振り落とされないように覆っていた影が消えて、重力によって地上に降ろされた。


「ど、どういうこと? ねぇ、ねえトーレスっ!」


 事態を把握できない私は慌てているのに、トーレスはこれまで見たことないくらいに落ち着いていて。何を考えているのか分からない。……ううん、トーレスがやろうとしていることはもう分かっている。

 でも、信じたくない。信じられないから心は揺れ続けている。


「……ゴメンね、ミカ。嘘を吐いた。これから先、君の傍には居られない」

「ま、待ってよ。どういうことなのっ? 一緒にアイレンを止めようって……!」

「誓った言葉に嘘はない、僕の命が消える瞬間までミカを愛する。この気持ちを裏切ったりなんかしない。でも、これ以上僕達に振り回される必要もない」

「きゃっ!? 待って、お願い待ってよ。これじゃ納得できない、こんなんじゃ——」


 私を抱き上げてると手を取って、もう一度強く抱きしめる。


「ん———っ! ……っ!! あ、ぁああ……、そんな、そんなこと———!」

「ゴメン、こうでもしないと終わった後に苦しめちゃうから」


 トーレスに渡した能力は構わない。でも、でもどうして——。


「代償を……、せっかく無かったことに……、私がいなくなった後も生きていけるのに…っ」


 どうして、私が引き受けた代償まで持って行ってしまうの?


「初めて会った時に言ったこと、憶えてる? 僕や、ミカが死んでしまっても世界は終わらない。ずっと続いていくんだ」


 いつものように優しく話すトーレスは、完全に私から契約そのものを奪っていった。

 私が代わりに引き受けていた“寿命を半分にする“代償を二人分と、私自身の”死んだ時、皆の記憶から消える“代償。

 本来の寿命の4分の1。もう、トーレスには時間が残されていない。世界樹の力を使って延命を行ったとしても、この戦いが終われば尽きることは明白。

 その先は、無い。どこへも行き先なんてなくなっちゃっているのに。

 なのに、その顔に恐れはない。泣きそうな私を安心させる表情に愁いも後悔もありはしない。


「僕は、もう満足してる。この世界で得られるものは全部手に入れたって言えちゃうくらい。

死んでいく僕が何かを残せるとしたら、それは君なんだ、ミカ。君の存在が、僕が残していける唯一のものなんだ」


 世界に自分の存在した証。いつかは無くなってしまうけど、別の誰かに繋げていくことのできる、残していくことのできる想い。

 トーレスにとってはそれが私で、自分の事よりも大事なこと。


「わたし…、だけじゃ——」

「僕がこの先、生きていても無用な争いを生むだけだ。僕はもうお尋ね者みたいなものだし、それはアイレンを倒しても変わらない。それに、思ってたよりも強くなりすぎた。この戦いが終わって、討滅局の体勢が整えば、どこに行っても襲われる。そんな男と逃避行だなんて、させられない」

「それくらい構わない、トーレスと一緒ならどこにだって…っ」

「うん……、僕もそうしたかった。でも、出来ないんだ。僕がミカを護るためにはこれが一番確実だ。

アイレンを倒して、皆の記憶からも消えていく。後に残るのは前を見て歩んでいける人達と、その中で生きるミカ。……どうか幸せになってほしい、僕の願いはそれだけだ」

「ダメッ! そんなの、そんな世界で生きるなんて……、それならもう一度能力を私に戻せば———」


 だけど、もうトーレスは能力を委譲してはくれない。『原型』に触れることさえ、止められてしまって……。もう、ただの子供でしかない私は何もできない。


『悪いねお姫様。どちらにしても、もう契約の主導権はボクにある。トーレスに譲渡してしまった以上、君にできることはもう何もないんだ』


 トーレスを通じて頭に響く『代行者』の声。

 ただ彼の役に立ちたい一心での行為だったのに、それが彼を最期に導いてしまった。


「……、そんなの……っ、そんなの嫌だよ。トーレス……、貴方がいてくれたから生きてこられたのに……。色んなものを見て、いろんな人に会って。これから先も、一緒にって。そう思ってたのに——っ」

「……僕も、そうできれば良かったと思うよ。でも、全てが上手くいってめでたしめでたしとはならない。どこかで犠牲は出てくる。そして、それは僕が最適なんだよ。そんな重荷を、ミカに背負わせるわけにはいかない」


 そう言うと、トーレスは懐からエイガに渡された式神の一部を取り出して、私の胸元に入れる。

 取り出そうにも両手は握られていて、どうしようもない。


「あぁ……っ、だめっ! こんなお別れイヤっ、トーレ———、……ッ」


 胸元から溢れんばかりの輝きが視界を埋め尽くす。その中でさえ彼は私から目を離そうとしない。優しく、悲しそうに微笑んで、頭をなでてくれる。


「お別れだ、ミカ。僕のことは忘れて、幸せになってほしい。友達を殺す男なんかよりも、もっと普通の、大事にしてくれる人と添い遂げてほしい。それが、僕からの願いだ」

「———、————!!」


 時空が歪み、叫ぶ言葉はもう届いていない。

 なのに、彼の言葉だけははっきりと届いてきて、その声の震えから強がっているのが分かってしまって――。


「何度言っても足りない。本当にありがとう、君がいてくれたから僕はもう一度立ち上がれたんだ。自分を見つめ直して、……友達を止めるために踏み出すことができるんだ。君に誓った言葉に嘘はない。僕は君を」

「トー、レス……」


 何が起こっているのか、頭が信じようとしなくて、ぐちゃぐちゃに掻きまわされてしまって、彼の名前をつぶやくことしかできない。

 視界は狭窄し、暗闇の中へ。力を失ってしまった少女の体では意識を保つことも難しい。


「誰よりも——」

「ぁ———」


 光に包まれ、時空がどこかと繋がる。

 なにも言い返せぬまま、涙をこらえる彼の姿と頭に乗った掌の感触が消えていく。

 瞬きの後、目の前にいたのは綺麗な赤い髪が目立つアリス。そして、ボロボロの姿でなお立っているエイガの姿。


「わたし……、あ、れ———?」


 トーレスが頭に触れた時に何かされたらしい。急速に遠のく意識と、力の抜けていく体。

 立っていることも困難な状態では受け身を取ることもできない。体は大地にたたきつけられる。しかしその寸前、誰かに抱き留められた。それはとても暖かくて、慈愛に満ちたものだった。


(私———、あなたが居てくれればそれだけでよかったのに。それだけで、他の幸せ何ていらなかったのに)


 言えなかった言葉はただそれだけ、私が望み、彼が応えようとしてくれたひとつの願い。

 しかし、それは彼が望んだこととは少しだけ違った。少女が望んでいたのは、光を締め切った部屋の中から外の世界を見ようとも、何も変化は起きない。昼と夜が繰り返されるだけの無為の平穏。

 その平穏を望むものは数え切れぬほどにいるだろう。ただ大切な人と平穏な日々を過ごしていく。でも、彼が望んだものはそうではない。

 自身の生に満足したと彼は言った。生きていても無用の争いを生むだけだと。

 だからこの戦いで自分ごと終わらせる。勝っても負けても寿命で死んで、死んだ後は誰からも忘れ去られる。あぁ、なんて悲しい幕引きの仕方だろう。

 その二つの代償は、例外なく貴方にとって何よりもつらいもののはずなのに。

 朦朧とする意識の中で、あったかもしれない未来を見る。それは二人での逃避行、夜の荒野で輝く星々を見上げる平穏な日々。


(一緒に、旅を———。したかったな———)


 何もない世界を、一緒に見たかった。とても怖いけれど、彼が居てくれれば恐れるモノなんて何もないから。

 ……私はただ、彼と一緒に世界を見たかった。


  □ □ □


 切っ先は定まった。

 揺らぐ瞳は一点だけを見つめている。


「待たせて悪かったよ」

「ようやく、だな。これでようやく終わりが成る」

「………っ——」

「………ッ」


 挑戦者を待ち受ける王者へと歩き始める。

 一歩一歩進む度に、アイレンへと近づくにつれて、雷は威力を増し続け遠くに見える山でさえ、瞳に睨まれただけで吹き飛ばされる。


「———ッ、オオオオオオォッ!!」


 黒色の影を身に纏い、触れるもの全てを消し去る無色の神威を推進力とする。引き金を引かれた弾丸のような加速。

 大地が水面のように波打ち、刹那の後には音さえ置き去りにして最短距離でアイレンに突っ込む。

様子を見るなどしていて勝ち目はない。後手に回ればその瞬間雷に貫かれる。


「カァ———ッ!」


 自身に宿った能力は把握した。修羅と世界樹の神威を完全に使いこなしているという自信がある。確信がある。

 代償を一身に背負ったが、世界樹の力のおかげで寿命は先延ばしにできる。


 個人による神格の二柱同時契約。

 トーカも四天使を宿していたが、彼らは四大というくくりによるものだ。全くの別物というわけじゃない。

 全く異なる系統の力を十全に扱い、その性能は完全に満たしてたし、アイレンの持つ『原型』ごと叩き切るだけの力は間違いなく籠められていた。


「良いぞッ、この時を……待っていたァ!!」


 しかし、どれほど代償による弱体化の一途を辿ろうとも、同胞と呼び称える神の加護、恩寵を受けるアイレンには受け止められる。

 その身は既に、神の領域に達しているのだから———今のアイレンを超えない限り勝利はなく、そして決着もあり得ない。


「小手調べ、そんなものはいらんだろう? 俺もお前も、時間がないことに変わりはないのだから……!」

「ふ———ッ、ァぁあアア!!」


 神威を放出し大地ごと吹き飛ばすと、その勢いのまま追撃へ移る。


(来る———っ!)


 飛び去った時には、数舜前まで立っていた場所に巨大な孔が開いていた。ただ一撃の落雷でしかないのに、その威力は想像しえないものとなっている。

 人の意志が混じらない純粋な神威。天を、地を、海を統べ、果ては夜の彼方と同調さえする神格の力、人には到達しえぬ領域だ。


「そういうわけでもないだろう! 人間はさらなる高みに届くことは証明されている!」

「どういうことだッ!!」


 落雷を受けないよう、止まることは許されない。

 前へ、前へ、前へ――

 奔った軌跡すらも追いつかぬ速度で行われる攻撃は無常に世界を破壊しつくし、全方向からの数多の斬撃はしかし届かない。

 見えぬはずの姿を完全に把握されながら、それでも前へと踏み出し続ける。せめて、残していった彼女に情けない姿を見せてしまわないように。

『本編について』

・アイレン、顕現契約

雷霆に座す覇の軍神(インドラ)天界統べし神々の帝王(パーピーヤス)


天にインドラ本体である瞳を顕現させ、自身の能力全てを強化しています。

発動中は常に強化が掛かり続けるため、時間を許せば許すだけ強くなり続けるため一度発動を許した段階で勝利するのはまず不可能です。

ただし、強化に比例して代償の反動も大きくなるので、顕現契約を維持し続けなければ切れた瞬間に存在が消え去るほどに肉体が回帰してしまいます。


・トーレスの代償

 アリスの能力を受け入れた結果、代償も無理矢理引っ張り出しました。

 そのため今のトーレスは、寿命による死を能力で無理矢理遠ざけながら、死亡時には存在が消滅するという二重苦にさいなまれています。


『定期連絡』

・高評価、いいねなどいただければ、皆様には特に見返りはありませんが自分が喜びます。

・更新日の後にそのことを伝える呟きをしているので、思い出す用にツイッターフォローいただけると幸いです。

・細かい設定や反省点等々は完結後にでもおまけでまとめようとでも思っているので、質問をいただければまとめて回答します。よければどうぞお願いします。

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