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第7話 強敵出現

「マリシエ! 大丈夫か!」

 マリシエと対峙している魔物を視認した俺は、見たことのない敵の姿に驚く。

 ノーズゴブリンじゃない!? 

 朽ちた木が、大地に根を張り続けるのをやめ歩き出したかのような、人の形を模した樹木の魔物。つまり魔人だ。

「はぁ……はぁ……、グランズさん!」

 背中を木に預け、杖を構えたマリシエが叫んだ。

 追い詰められているマリシエを助けるため、魔人の背後から胴体を薙ぐように切りつける。

「ハァ!」

 ガッ、と鈍い音が鳴り剣が止まる。

 クソッ、俺の攻撃なんて防ぐまでもないってのか!


 魔人が狙いをマリシエに向けたまま、枝のような片腕を掲げると急激な速度で伸ばし始めた。

 マズい! 叩きつけるつもりか!?

 急いでマリシエと魔人の間に回り込むが、付与魔術なしで受けきれるか……?


 俺が覚悟を決めていると、

「そこで伏せてな! 『爆ぜろ! 《爆裂刃エクスプロード・ブレード》』!」

 どこからか叫び声が聞こえ、飛んできた斬撃によって生じた爆風が、魔人を弾き飛ばした。

 この技は――


「よぉ、グランズ! 助けに来てやったぜ?」

 魔術剣の使い手デュゼル・ガレットがパーティを連れて姿を現した。


「なんでお前たちがこんなところに!?」

「そんなのはどうでもいいだろ。たまたま近くに来てただけだ。それより、なんなんだあいつはよぉ」

「わからない」

「なにっ!? リーリスちゃんと最深部まで探索していたお前でも知らない魔人だと? とんでもない化け物じゃねえか! なんでこんなところに……?」

「あるいは新種の可能性もあるが……」

「どっちにしたって瘴気の濃いエリアから来たのは間違いないってこった。おれたちでなんとかなるのか?」

 デュゼルのパーティは全員ゴールドランクの実力派冒険者。戦力として申し分ないが、未知の相手となるとどう転ぶかは予測不可能だ。


「ここは街道も近い。周囲の町に被害が出ないように撃退できれば問題ない。だが、念のため伝令は必要だろうな」

「よし。レック! ギルドへの連絡役は任せたぞ!」

「りょ、了解したっす!」

 デュゼルに指名された弓を携えた少年が走り出すのをマリシエが引き留める。

「待ってください、付与魔術を掛けます! 『汝、風の如く駆けろ! 《強化付与・俊足(スピード・エンハンス)》』!」

「あざっす! じゃ、皆さんご武運を!」

「さて、向こうもそろそろ準備ができたみたいだな」

 倒れた木々を乗り越え、再び姿を現した魔人を見たデュゼルが、そう言って両手の剣を構えた。


 あのまま引き下がってもらえたら、助かったんだがな。

「マリシエ! 重ね掛けはできるか?」

 身体への負担が跳ね上がるため使うつもりがなかったが、この非常事態にそんなことを気にしている余裕はない。

「はい! 《三重(トリニティ)》までなら」

 《三重(トリニティ)》か。どの術が必要かの判断を慎重に行う。


「……よし。《俊足(スピード)》、《剛腕(パワー)》、《洞察(インサイト)》を掛けてくれ」

「わかりました! ――『汝に、三位一体の力を! 《三重付与トリニティ・ギフト》』」

「俺が注意を引き付ける。隙を突いて攻撃を仕掛けてくれ」

「なんでテメェが仕切ってんだぁ? バッズ! フィレイン! 俺たちも行くぞ!」

 デュゼルが自身のパーティメンバーへと号令を掛ける。


「いや、リーダーは中距離からの援護がいいのでは?」

「そうよ。魔術の威力は凄いけど、剣の腕はからきしダメなんだから」

 重装備のバッズが異議を唱え、拳を構えたフィレインがそれに同意する。

「なんだと? リーダーに逆ってんじゃ――」

「そしたら、バッズにはデュゼルとマテシエの護衛を、フィレインには俺のカバーを頼む!」

 デュゼルに面倒な仲間割れを起こされる前に代わりに指揮を執る。

「承知した!」

「オーケー任せなさい!」

「おい! お前らのリーダーはおれだろうがぁあああ!」

「マリシエは3人に《強靭(タフネス)》を」

 吠えるデュゼルを無視し、マリシエにも指示を出して魔人の迎撃に向かった。

「わ、わかりました! 気をつけてください!」


「ハァっ! せいっ! それ!」

 魔人の右肩のあたりに向かって剣を振り下ろし、続けて左から右へと水平に切り払い、最後に頭部を狙った突きを放つ。

 さっきは、躱すことも防ぐこともしなかったくせに、今度はしっかりと回避された。

 これで、当たってくれてりゃ楽だったんだけどな。

「――っ!」

 魔人からの反撃の貫手を、身を捻り剣で軌道をズラし防ごうとするが、わずかに顔を掠めた。

 

 伸びる腕とは厄介だな。

 全身の動作から見極めようとすると、ワンテンポ早く攻撃がくるように感じる。

 さらには間合いを取られて懐に潜り込めず、一方的に攻め立てられる。


 剣で魔人の連撃をいなし続けるが、これではジリ貧だ。

 ……仕掛けてみるか!

「ハァァ! ――っ!」

 カウンター気味に放った一撃が弾かれ、胴体ががら空きになる。


「危ない! グランズさん!」

 マリシエの叫び声が届いたが、。

「いや、あれは――」


「――【アーレンス式剣闘術】《落葉(らくよう)》」

 敵の攻撃に合わせ重心を落として回避すると同時に間合いの内側へと滑り込む。

「うおお!」

 低い位置から立ち上がる勢いをのせた一撃だったが、魔人の身体に与えた傷は浅い。

 クソッ! もっと引きつけないとダメか。

「ナイス陽動。ちょっと離れてて! 《シューティング・スターライト・ニー》!」

 フィレインからの警告に従って距離を取ると、二本の束ねた焦げ茶色の髪を尻尾のように揺らしながら両膝を魔人の背中へと突き立てる。

「ブォゥン!?」

 地面へと打ちつけられた魔人が初めて声のような音を発した。

 不気味な洞から響くような、不安を掻き立てられる音だ。


「あとは、よろしくね! リーダー!」

 フィレインがそう言って魔人の背中から飛び退くと、デュゼルが最大級の技を繰り出す。

「――『灰燼に帰せ! 《劫火炎刃ヘルフレイム・ブレード》』!」


 デュゼルが振り下ろした剣から放たれた斬撃は燃え盛る火となって魔人へと襲い掛かる。これで、決まってくれるといいが……。

 この魔人がこの【魔障(ましょう)の森】の木から生まれたのだとすると、同じように火に強いという性質を持っていてもおかしくはない。

 

「ブョォォォン!」

 火に包まれた魔人が鼓膜が破れそうなほど大きな奇声を上げた。

 全員がその音に怯んだ瞬間、魔人の身体から棘のように生えた枝が全方位に向けてはじけ飛んだ。

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