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第3話 パーティ結成!?

 マリシエと名乗った少女を連れて冒険ギルドの中へと移動し、近くの椅子に腰を下ろして、改めて事情の説明を試みる。

「何度言えばわかるんだよ。俺は元々冒険者をやめるつもりで今日はここに来たっていってるだろ!」

「ははっ……、そうですよね……。わたしと組むぐらいなら冒険者やめる方がマシですもんね……」

 マリシエが虚ろな目をして乾いた笑いを漏らす。

「だから違うっての!」

 もう何度目になるか分からなくなってきたやり取りをここでもまた繰り返していた。


 これでは埒が明かないと思った俺は渋々マリシエの話を聞くことにした。

 冒険者をやめる身としては、中途半端に関わるのは避けたかったが仕方ない。

「そもそもなんで俺にこだわるんだよ。ここは冒険者ギルドなんだから、受付嬢に仲介してもらえばいいだろ?」

「えっと、その、……実はすでに全員に断られたんです。紹介もできそうなパーティがないと言われてしまって」

 マリシエがはにかみながら説明した状況に驚愕する。

「ぜ、全員!? ……嘘だろ」

 ざっと見渡すだけで数十人はいるし、紹介のあてもないってどういうことだよ。

 訝しむような俺の態度を感じとったのか、マリシエが慌てて取り繕うよう言った。

「でも、まだ希望がなくなったわけじゃないんです」

「希望?」

 様子を見る限り望みは薄そうだが、現状を変えるきっかけになるかもしれないと考え聞き返した。


「この街にいるはずのフリーの冒険者を探してるんです。最近は誰も見てないらしいですが」

「なんだよ、ちゃんと候補がいるんじゃないか。名前は? これでも、交流は広い方だからな。知ってるやつかもしれない」

 よし。さっさと、そいつに押し付けて解放してもらおう。メンバーとして誘われはするかもしれないが、あとのことは当人たちでなんとかするだろう。

「グランズって人なんですけど、知ってますか?」

 いやそれ俺のことォォォ!! 

 知ってるも何も本人だっつーの。

 というかこれじゃまた振り出しじゃねーか。


 ハァ……。仕方ない、パーティ探しくらいつきあってやるか。


「悪いがそいつは俺のことだ。代わりにいくつかのパーティにあたってみるから、それで勘弁してくれ」

「えっ! あなたがあの――」

 俺が事実を明かすとマリシエが驚き、目を見開く。


 おっ! 思った以上の反応が返ってきた。これはもしかして、色々俺の活躍を聞いちゃってる感じか? 

 いやぁ、もう冒険者はやめるから尊敬されても困るんだよなぁ。これじゃあ、余計に諦めさせるのが大変になるじゃないかぁ。まったく、困った困った。まあ、悪い気はしないが。

 

「自分が強いと勘違いした相棒に恵まれただけの天才のおまけのイカレ野郎!」


 悪意など微塵も感じさせない純粋な眼で、罵詈雑言としかいいようのない言葉を、本人である俺の前で呟いた。


 ……あの、マリシエさん? もう少し、小さな声で言うことはできなかったのでしょうか。聞こえてしまってるんですが? 


 まあ元々、俺自身の評判があまり良くないのは知ってはいたが。

 自分が苦戦するような魔物を、見下していたやつが討伐したと知れば、面白くはないだろうからな。悪く言いたくなるのも無理はない。実際、リーリスのおかげなのも間違っていないし。

 それでもイカレ野郎はひどくないか? 

 もはや、ただの悪口になってんじゃねーか。誰だよ、そんなこと言ったやつは! 


 それに、そんな奴が希望とかこいつもどうかしている。

 切羽詰まってたとしても、普通は絶対に関わろうとしないだろ。


 ……………………。


「どうして、そこまで冒険者にこだわるんだ?」

 気付けば、ふと頭に浮かんだ疑問を口にしていた。

「力になりたい人がいるんです」

 質問に対する答えとしては不十分かもしれないが、俺にとっては納得できる言葉だった。俺自身が冒険者をやっていた理由に重なるからだろうか。

「……どんなやつなんだ?」

「クレス、クレス・リード。【彼岸(ひがん)】の勇者です。もう一度、彼のパーティに戻りたいんです!」

「ブフォ!」

 何気なく聞いただけだったが、こいつとんでもない事実を隠し持っていやがった!

 

 いやいやいやいや、マジかよ。えっ、なに? もしかして、あいつが【彼岸】に行ったせいで、というか俺が送り出したせいでこうなってんの? つまり、俺のせい? いやいやいやいや、違う違う。そうじゃない。そうじゃないはずだ。うん。


「改めてお願いします。わたしとパーティを組んでくれませんか? それとも、リーリスさんの邪魔になるかもしれないわたしとは組めませんか?」

「いや、別にそんなことはないが……」

 あいつの実力なら仮に【彼岸】を出て行くことになっても、名前の知られたいまなら大丈夫だろうしな。

「ならっ!」

 マリシエが必死に訴えかけてくる。

 出会ったばかりの相手の頼みだ。断るのは簡単なことだ。


 けれど、いつの間にかこの少女を放っておけなくなっている自分がいた。

「あーもう、わかったよ。そのかわり新しいパーティに入れるまでの間だけだからな」

「っ! ありがとうございます!」

 どうやら、俺の冒険はもう少しだけ続くようだ。


「それにしても驚いたぜ。まさか【彼岸】のパーティにいたなんて。というか、勇者パーティの元メンバーなんてどこも欲しがるだろうに、なんで断られたんだ? 実力の見合ったパーティがなかったのか?」

「それが、付与魔術師とは組みたくないと皆さん口を揃えて言うんですよ。その点、グランズさんはリーリスさんと組んでたわけですし、大丈夫ですよね?」


 ……………………は?

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