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第13話 力を求めて

「ど、どちら様ですか?」

 マリシエが美女の放つ謎の威圧感に怯みながら聞き返した。

「あら、ごめんなさい。アタシはステアリア。錬金術師よ」


 錬金術師か………冒険者ギルドに来るのは珍しいな。

 個人的な依頼だろうか?


「マリシエです。一応、付与魔術師ですが、凄腕というほどでは」

「そうなの?」

 噂を聞いてきたとなると、マリシエ本人が言うように彼女のことではないだろう。となると思い浮かぶ人物はあいつしかいない。


「凄腕の付与魔術師ってリーリスのことか?」

「ええ、確かそんな名前だったかしら。姓がオーレムなのは覚えているのだけれど。貴方、お知り合いなら紹介してくださらない?」

 凄腕の付与魔術師ってだけでほぼ確定していたが、姓まで一致していれば間違いないだろう。


「あいつならいまはここにはいない。《レーゼブル遺跡》に向かったそうだ」

「あら、そうなの?」

「わたしたちも会いに行くところなんです。良かったら一緒にどうですか?」

 マリシエはパーティの仲間としてというよりは、単に案内を申し出ただけのようだ。

 俺としては先行きが不安な以上、戦力を増やしておきたいのだが。


「うーん、ちょっと面倒くさいわね。……マリシエちゃんだっけ? 貴女がアタシの研究を手伝ってくれないかしら」

「え? えっと……」

 ステアリアさんからの唐突な打診にマリシエが困惑している。

「いいんじゃないか? 同行者探しは俺がやっておくから、マリシエはステアリアさんを手伝いながら色々聞いてみたらどうだ。錬金術師ってのがどれくらい付与魔術に詳しいのか知らないが、わかることもあるかもしれない」


「ん? どういうことかしら?」

「実はわたし《強化付与(エンハンス)》の系統しか使えないんです。それも、普通の付与魔術とは違う力によるものなんじゃないかって、グランズさんは考えているみたいなんです」

「へぇ、なかなか興味深いわね。グランズって言うのは貴方のことよね? 付与魔術に精通しているようだけれど、何者なのかしら」

「名乗り遅れてすまない、グランズ・アーレンス。たまたま、付与魔術師と組んでただけの剣士だ」

「ああ、貴方が――」

 俺が自己紹介をするとステアリアさんが目を輝かせて、なにかに気付いたように手を合わせた。

 あれなんかこの流れ身に覚えがあるぞ?


「天才付与魔術師に気に入られただけの貧弱クソ雑魚おまけ野郎ね!」

 なんか余計に酷くなっている気がするのは気のせいだろうか……。

 というか、ステアリアさんは、なんでわざわざ口にしたんだ?

 

「それはそうと、グランズくん。貴方にもちょっと興味が湧いたから、つきあってもらうわよ」

 そう言ったステアリアさんの眼が怪しく光ったようにみえた。

「俺は旅についてきてくれる人を探さないといけないんで――」

「そんなのギルド長の方でもどうせやってるわよ」

「いや、まあ、そうだろうが……」


「でも考えてみればたしかに、一方的なのは良くないわよね……わかった!」

 俺が協力を渋っているとステアリアさんが少し考える素振りを見せてから、妙案を閃いたかのような表情を浮かべる。

 そして、急に艶やかな所作で身体を寄せ、耳元で囁いた。

「協力してくれたら、貴方もアタシの身体、好きにしていいわよ?」

「やります!!」

「グランズさんっ?!」

 ハッ! 俺は一体なにを?


「言質は取ったから! よろしく頼むわね」

「……見損ないました」

 二人からそれぞれ別の鋭さを持つ視線を向けられた。

「ちなみに、実験が終わったら約束通り、アタシの身体を好きなだけ剣術の訓練に使っていいわよ? 錬金術師と剣士の取引としては妥当なところでしょ?」



「で、俺たちはなにを手伝えばいいんだ?」

 ステアリアさんの指示に従って冒険者ギルドの裏手にある修練所へと移動してきた。

「そんなに急かして、よっぽどアタシの身体に興味があるのね」

「……グランズさん」

 ステアリアさんに揶揄われる度にマリシエからの好感度が下がっていく。

 自業自得といえなくもないが、にしてもあのやり方は卑怯だ。


「いや、あれは魔が差したというか、なんというか……」

 これから一緒に旅をするというのに、この調子では困るのだが、言い繕ってみたもののマリシエの冷ややかな視線が変わることはなかった。

 改めてパーティを組んだというのに、これでは先が思いやられる。


「さて、お遊びはこの辺にして本題に入りましょうか」

「……そうしてくれ」

 既に気力が尽き欠けている俺は力なく同意した。


「アタシが取り組んでいるのは、人間が能力の限界を超えた力に耐えらるようになる方法の研究よ」

 ステアリアさんが堂々と宣言をした。


「限界を超えた力に……?」

「耐える方法?」

 俺とマリシエは顔を見合わせ、二人して首を傾げた。

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