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 ーバキッ


 レオの拳がリュウの左頬を打ち付け、リュウは屋上のパラペットに、よろめく身体を預けた。


 リュウは、口元に流れる血を拭い、不敵に嘲笑う。


 「何?お前にしては、随分熱いじゃねえか。」

 「お前、アオに…」

 「ああ。聞いたんだ。まあ、そこそこ良かったぜ。その辺の女よりは多少…」

 もう一度、レオの拳が振り下ろされるが、今度は寸での所で、リュウが押さえる。

 「なあ、そんな熱くなるなって。前に言ったろ?女なんて直ぐ流されるって。あんまり堅苦しく考えるなよ。」

 「俺は、そんな風に考えたくない!アオを大事にしたいんだ!」

 「ふうん…」

 リュウは目を細めて、レオを見下す。

 そして、そっと耳元に口を近づけると囁いた。

 「そんなこと言って、本当は俺が羨ましいんだろ?」

 「ー!」

 「ははっ。図星か。」

 レオは狼狽え、目を逸らした。

 「そんな、俺は…」

 逃げようとするレオの顔を捕らえ、リュウは顔を近づける。

 「なあ。正直になれよ。」

 「な、何を…」

 「昨日さ…バスルームで折角アオと二人きりになった癖に、手も出さねえで、それで、何。せめて、自分の服でも着せたかった?」

 「べ、別に…」

 「残念だったな。俺がアオに自分の服に着替えるように言ったんだよ。」

 「なっ?!あれはお前のせいだったのか?!」

 「ははっ。やっぱりか。健気だねえ。」

 「煩い!ともかく、お前は…」

 「なあ、レオ。同じ家なんかに住んでて、堪んねえよな?」

 「…」

 「俺は正直、足りないな。キスだけなんて生殺しみたいなもんだ。お前も同じだろ、レオ?」

 「ああ!そうだ!俺だって耐えられない!でも、アオはネンネで…俺は必死に耐えてるのに、何でお前は…!」

 「取り引きしようぜ、レオ?」

 「何を…」

 「俺をアオの身替りに使っていい。」

 「お前とアオは違うだろ。」

 「俺だって、アオのことが一番好きだ。」

 レオが目を細めてリュウを見る。

 「アオに見詰められたくない。あいつに真っ直ぐな目で見られると、耐えられない。近づきたいと思うのに、消えてしまえばいいとも思う。あいつの無垢な瞳を見ていると、滅茶苦茶にしたい衝動に駆られる。」

 「そんなことは、俺が許さない。」

 「なら、お前が俺を止めてくれよ。」

 リュウがレオの顎を捕らえて、唇が重なるが、レオは受け止めた。


 二人の唇を銀の糸が引き、レオの親指がそれを拭った。


 「本当に身替りにしても構わないんだな?」

 「勿論。」

 「後悔するなよ。」

 「ああ…」


 レオがリュウの身体を横たえ、レオの長い指がリュウのシャツのボタンに掛かる。

 レオがリュウの顔に近づき、熱い息を吐いた。


 「アオ…」

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