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第九話 仮に月③

念のため再度注意事項です。


この世界は別世界です。

今居る私達によく似た世界のお話しです。

団体や企業など同じ名称なのは

偶然です。


「使用されたカメラはコレよ。」


入皆はそう言って

例の台車の上の巨大な袋から

カメラを取り出した。


デカい。

切って無いカステラよりでかい。


「1969年製ハッセルブラッド!!

のレプリカよ。」


確かに手作り感が溢れている。


「当時はデジカメなんて無いから

当然、銀塩フィルムよ。」


古い刑事モノドラマなどではお馴染み

真っ赤な照明の部屋で

怪しい液体に浸した紙片に

画像が浮かび上がるアレだ。


「丘クンは海外旅行したことある?」


「ある訳無いだろう。高校生だぞ。」


無邪気に聞いて来る入皆に

僕はそう答えたが


「行ったコトある人手ぇ上げてー。」


【分からない】派の中から

真黒井さんが声を張り上げると

挙がる上がる。

ありゃ・・・

みなさんの家

結構お金持ちなんですね。


「空港で行われる荷物検査

アレ、フィルムや銀塩カメラは

X線検査装置に掛けないで手荷物よね。」


密閉され可視光線を遮断していても

X線は透過してしまう。

銀塩フィルムはそのX線で感光してしまうのだ。

写真が真っ白になってしまったり

縞々模様のノイズが出てしまい

未使用も貴重な記録を収めた

使用済みのフィルムがダメになってしまうからだ。


「月面の放射線は地球上の

凡そ200倍と言われているわ。」


X線も放射線の一部だ。

レントゲン撮影者を別名で

放射線技師などと呼んだりしている。


「そんな環境でフィルムが無事でいられるの?」


放射線だけじゃない

真空だし気温は日向で100度を超え

日陰が氷点下だ。

そんな過酷な環境で正常に動作するのだろうか。

熱膨張などで歯車やバネなど

動作に不具合は生じないのか。


「売ってるモノそのままなのか?」


「NASA曰く、月面での撮影の為に

特殊な加工をほどこしていあるわ。

どんな加工なのかは分からないわよ。」


「じゃ問題無いんじゃないのか。」


「その放射線地獄に耐える加工

特殊な塗料で済むモノなのかしら。

50年前に月面で撮影出来たのに

福島の炉心は未だ撮影不可能よ。

NASAに加工を頼めないモノかしらね。」


因みにデジカメでも出来ない

放射線はデジタル機器にも影響を及ぼすのだ。


「写真があるのだから撮影出来た。

証拠と結果が逆だけれども

加工の方法が企業秘密な様なので

これ以上はこの件に関しては議論は無駄ね。

NASAの脅威のメカニズム

ってコトで次に進むわね。」


いや

もうちょっと追及した方が良いんじゃないか

仮に筐体が加工で放射線を防いでいたとしよう。

プールの中や分厚い鉛やコンクリートの壁並みに

放射線をカットする謎塗料で出来ていたとしよう

だが

撮影の際にはどうしてもシャッターが開き

可視光線をカメラ内に導き

フィルムを焼くのだが

どうしたって一緒に放射線だって入るハズだ。


あんな鮮明な写真になるのか?


僕はそう言いかけたが

入皆はいそいそと

再び袋から今度は巨大な物体を取り出した。

その物体のインパクトに僕は言葉を飲み込み

周囲には歓声が沸く。


「うううう宇宙服じゃあないか!!」


TVやインターネットで良く見た

アポロ計画で使用された奴だ。


「ごめん、レプリカなの

本物は入手出来そうもないわ。」


分かってるわそんな事。

謝る入皆に僕は言った。


「本物だとは誰も思っていない。

レプリカでそのクオリティ

そこにみんな驚愕しているんだ。

素晴らしい出来じゃないか。」


「苦労したのよ。」


おっとりと言う八咫烏先生。

製作のメインは先生なのか。


「本物じゃないんだ・・・。」


真黒井さん。

手に入らないから

すんげぇ金持ちでも多分無理だから。


「ささ、早速コレに着替えて頂戴!」


僕なのか

やったー

なんか嬉しいぞ。


それしても

部室確保の時、私達のクラブに

着替えは無いって言って無かったっけか

顧問を頼む時、手を煩わせる事は無いとも


でも

そんな事どうでもよくなるクオリティだ。


「僕でいいのか。」


念のため確認しておこう。


「と言うか丘クンに合わせて作ったから

むしろ他の人じゃ困るわ。」


手袋、マフラーなど

女の子から貰った人は

この世に大勢いるだろうが

アポロ宇宙服のレプリカを貰ったなんて

もしかして世界中で僕だけかもしれないな。


早速、着替えに入ろうかと思ったが

宇宙服をまじまじと見て固まってしまった。


「どうやって着るんだ。」


「本物の宇宙飛行士だって一人じゃ着れないわ。

構造を理解している人の補助が無いと」


そう言って八咫烏先生が手伝ってくれた。

僕は言われるがまま

着せ替え人形状態だ。


「その間にこれから行う実験について説明するわね。

計6回の月着陸で撮影された写真の枚数は8400枚

これは近年修正された写真の公表数なので

失敗した写真も含めると撮影回数はもっと多くなるの。

でも何回シャッターを押したのか正確な数が

分からない以上、最低限保証された枚数

この8400枚でテストを行っていくわ。」


それでも相当な枚数だぞ。


「月面以外の撮影で無駄に

フィルムを消費しないでしょうし

月からの打ち上げ時

少しでも軽量化する為にフィルムを外した

ハッセルブラッドが今も月面に

12台残っているとのNASAの弁から

撮影者は司令船に残った一人を除いた

月に降りた二人、つまり一人当たりのノルマは」


8400÷12で


「700枚!!」


生徒会長暗算速いですね。


「そしてカートリッジ一つで

200枚撮影可能なので

最低でも4回はフィルムチェンジ

これもやってもらうわ。」


「不可能だ!!」


僕より先に声を上げた参加者がいた。


「はい、写真部の渡部クン。」


入皆、本当に全校生徒を覚えているのか。


「当時のハッセルブラッドは

最大でも24枚しか撮れない。

ハーフサイズで二倍にしても48枚だ。」


ハーフサイズ

フィルム一枚の面積で二枚撮影するように

巻き上げを半分にした手法だ。

写真はトリミングで通常の比率で焼き付けるが

上下二分の一なのでフィルムには

異常にワイドな状態で撮影されている。

当然、画質も半分になる。

今風に例えるなら200万画素が

100万画素のクオリティで倍の枚数って感じか


「8分の1強のサイズにすれば

200枚いけるでしょ。」


もうパノラマなんてもんじゃないワイドさ

LINEのやり取りを一枚で表示した状態だろう。

何を被写体にしたのか

ネガから判定するのは

もはや不可能だ。


「無茶苦茶だ!!画質も何もなくなる」


さすが写真部

写真に関しては真面目だ。


「8分の1は冗談で

特別に薄い皮膜のフィルムだそうよ。」


前も言いかけたが

月面という過酷な環境で

そんな強度が上がるハズも無い加工が通用するのか。


「伸びる、いや巻き上げの負荷で切れるよ。」


食い下がる渡部クン。

入皆も珍しく困った表情だ。


「うーん、私の狙いとは

違う箇所で不可能の有力な意見が出ちゃったわ。

でも実験はしたいから

ここは例のアレで押し通すわね。」


「「NASA脅威のメカニズム。」」


派閥を越えて息ピッタリだ。

何の連帯感なんだろう。


そうこうしている内に

僕の着替えは終了した。

ブックマークやポイントでテンション上がります。

どうかお願いします~。

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