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第八話 仮に月②

10投して入ったのはひとつだ。

三井は流石で四つも入った。

それでも本人は納得していない様子で

落ち込んでいた。


「これが月面着陸とどう関係あるんだ。」


僕はそう入皆に問うたが

返って来た答えは

余計に理解に苦しむモノだった。


「必ず入る。これが月面着陸よ。」


入皆は僕にと言うより

集まった面々に語り出した。


「部屋の気温湿度は一定。

窓も閉めているので気流は安定した状態。

ターゲットは動かない。

玉の大きさ重さも決まっているわ。

入る軌道を描く正解の

投げる力、角度さえ決めて実行すれば

100%成功するの。」


僕はたまらず突っ込んだ。


「理屈では否定しないが人のする事だ。

100%の成功は有り得ないだろ」


人が投げるよりは成功率が高いだろうが

機械でも100%は無理な気がする。


「月に行ったと主張する人々は

みんなこうなのよ。

不可能では無いなら出来たと

宇宙飛行士は皆、超人よ。

さ、コレを踏まえた上で始めましょう。

みんな席に移動してね。」


ふと見れば

長机の上には三角錐の表札が並べられていた。

僕と三井のシュート勝負の間に

八咫烏やたがらす先生が準備してくれていたのだ。


「俺はこっちだな。」


【行ってない】の札の方に移動する三井。


「じゃあな、健闘を祈るぜ。」


僕は踵を返し

【行った】の札の方に足を進めようとするが

続く三井の言葉で足を止めた。


「後の二つは何だ?」


長方形の部屋。

長い方それぞれが【行った】と【行ってない】だが

短い方の席にも今回は札があった。

その席から笑顔で手を振る真黒井さん。


「ひとつは【分からない】・・・・だな。」


手を振り返して僕は三井にそう言う僕。

それを見て反対側を確認する三井。


「えーと、【知らん。でも映像は作り物】だ。」


そこには腕を組んで意気込み十分としている入皆が

一人、陣取っていた。


「おい入皆、それはズルくないか。

みんな行ったか行ってないで決断しているんだ。

知らんはないだろう。」


「行く事自体は可能なのよ。

戻って来れないだけで・・・。」


「そんな恐ろしい事を笑顔で言うな。

とにかくどっちかに行ってくれ

始まらないだろ。」


僕と入皆のやりとりの最中

真黒井さんは

何と最大派閥となった【分からない】の集団の中から

声を上げた。


「いいよーもうこのままスタート。」


カーン


誰だゴングなんて持ち込んだのは

良い金属音が響き渡った。


「はい。丘クンはどうして

月に人が到達したと信じているの。」


響き渡るゴングの余韻の中

入皆は絶好のタイミングで

そう僕に話しかけて来た。


相変わらずこういう流れに乗るのは上手い

仕切り直すのは明らかに周囲のブーイングになる空気だ。

僕は諦め、素直に開始する事にした。


「物証がある。

月と地球の距離を測る為のレーザー反射鏡だ。

それだけじゃない日本のかぐやと言う探査衛星も

月面に残された着陸船を確認している。」


「人は居たの?」


「今、行っていないんだから映るワケないだろう。」


「つまり月面に人工物があったから

ってコトよね。」


「そうだ。自然に生えて来るモノじゃない。

人が持ち込んだモノだろう。」


揺ぎ無い物証だ。


「じゃあ火星にも人は行ったのかしら

マーズエクスプローラーなる人工物があるけれど・・・。」


「火星のは違うだろ、あれは無人探査衛星が・・・。」


そうか。


「人工物があるからといって

人がその手で設置したとは限らないわ。」


人が行った証拠にはならないって事か。


その後も行った派から

次々と意見が出されたが

僕は援護射撃を諦めた。


いずれも自分の考えでは無く

TVでそう言っているからとか

教科書にそう書いてあるとか

NASAが嘘をつくはずが無いとか

ヒドいのになると常識だとか


自らの思考を放棄した。


情報の鵜呑み


だったからだ。


入皆にコレは効果が無い事は

僕にはここまでの付き合いで嫌と言う程味わっていたのだ。


「それは全て教育によるものよ。

この洗脳は思っている以上に恐ろしいわ。

70年前の戦争の被害

生きている日本帝国兵にあった事も無い

人が謝罪だ賠償だ真顔で言う位恐ろしいわ。

子供の頃から恨めと叩き込まれているのね

それこそ、その国の人には常識なんでしょうけど・・。」


入皆は真面目な様子で続けた。


「素直な事は美徳かもしれないけど

愚かな事でもあると思うの。

頭の良い人は騙されなくて

頭の悪い人が騙される?

違うわ。

騙されるのは考えない人。

疑わない人よ。

どんなに成績が良くてもIQが高くても

疑わなければ騙し放題よ。」


大きい嘘程人は信じる。


ヒットラーの言葉だが

この解釈が入皆との付き合いで

僕は変わった。


それまでは言葉そのもの

大ぼらを吹けだと思って居たのだが

この言葉の「大きい」には

仕掛けや規模も含んでいると

最近は思うのだ。


友達からの噂話

これは規模が小さい。

聞く方も

こいつ俺を担いでやしないかと

自らの思考フィルターが機能し

嘘を見破ろうとするのだ。


辻褄はあっているか

不自然な点は無いか 

と話の内容を吟味するのだ。


この規模を大きくする。

新聞やTVのニュース

それもそこで吹聴する人が

博士号を持っている学者とか

大学の教授とか

仕掛けや規模を大きくすると

思考フィルターが起動しない。


嘘をつくはずが無い。

俺より頭の良い人が言っている。


これらの考えが先に立ち

話のおかしな点を見逃したまま

鵜呑みにしてしまうのだ。


騙し放題だ。


同じ内容の嘘でも

前者は見破られ

後者は見破れなくなる。


嘘そのものの出来の良し悪しで無くなるのだ。


特に日本人はその傾向が強い。

みんな言ってる。

みんなやってる。


僕はここで割って入った。


「で、入皆が考えた結果

映像が疑わしいと言う事か。

是非、お聞かせ願おうじゃないか。

どの映像がおかしいんだ。」


常に前面に表示されているクロスマークが

被写体の後ろに行ってしまっている。



背景に星が見えない。



真空のハズの月面で

星条旗がはためく。



個々の影の向きが違う。



ふふ

この事は勉強済みだ。

いずれも問題無い事は

とっくに証明されているのだ。


「そうよ。」


おお

自信満々だな。


さぁ来い

即、論破だ。

ギャフンと言わせてやる。


「そもそも写真なんて撮れるのか。

ってコトね。」


はい?


ブックマークやポイントでテンション上がります。

どうかお願いします~。

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