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第七話 仮に月①

ここからはお話しの時系列が

ぐっちゃぐっちゃになりますが

ストーリーが無いお話しなので

書きたい順で行きます~。


一年目の夏休みだ。

運動部系などはこぞって強化合宿などを行っている。

成果の上げているクラブは部費の割り当てが多いのか

参加者の懐が豊かなのか泊りがけで

海などに宿を取ったりしている。


「来たぜーカルト。」


「オを付けろ。そして出来れば

名前か苗字かどっちかだけで呼ぶ事を

希望する。ビザカード!」


「俺は名前ですらないのな。」


三井みつい 澄友すみとも

同じクラスでバスケ部期待のエースだ。

190cmに迫る長身(まだ伸びているそうだ)

それだけで無く太い

どう見ても格闘家の方が向いている。


巨漢だ。


バスケにはあまり詳しくは無いが

名前を裏切り3ポイントシュートは得意では無いそうで

ゴール下で体を張るセンターと呼ばれるポジションで

これが強いか弱いかでチームの戦略そのものが変わってしまう程

重要なポジションだそうだ。

考えるまでも無く校内最強だそうだ。

もし異世界転生するならばタンク役をお願いしたい。


「本当に来るとはなぁ・・・。」


「だからバスケが無かったら入部しているんだって」


三井はオカルト好きだそうだ。


泊まりはしないが

我らがオカルト研究部も

夏休みは夜の部を開催している。

それを聞きつけた合宿中のバスケ部から

三井は練習の終了した夜に参加を申し出て来たのだ。

これまでのバスケ部は戦績が思わしく無く

校内の学食、その二階から宿泊可能な設備に

なっていて大変お安くお泊りができるのだ。

そこに泊まって校内で合宿だ。

ただ

来年は遠征しそうだ。

それほどまでに

三井の加入はここ等辺の勢力図を書き換える。

良い成績を期待されている。


眩しい。

遊び半分・・・

いや遊びほとんどの僕達とは

住む世界も周囲からの期待も

違い過ぎる。


「特に今回のオカルト討論会は

絶対参加したいテーマだったしな。

校内合宿中でラッキーだったぜ。」


これは入皆の采配だ。

参加を強く希望する者が参加しやすい

スケジュールを立てている。

確認した事は無いが

僕はそう思っていた。


「今回のお題・・・ね。」


僕は今回のお題が決まった時を回想した。


初夏

夕暮れ時、窓辺から空を仰ぐ入皆は呟いた。


「好きよ・・・丘クン。」


分かってはいたが

どう行動するべきか僕の中で迷ったままだった。

そんなあやふやな態度がいけなかったのだろう

まさか女子の方から言わせてしまうとは

僕も罪な男だ。

ここは「僕の方から言わせてくれ」と

仕切り直すのが紳士だろう。

やれやれ

ハッキリしなかった僕も悪いが

知りあってまだ2~3ヶ月で

もう我慢できないとは

入皆のほうも悪いぞ。


「入皆・・・。」


鎌首をもたげる僕の中の黄金竜を

賢明になだめつつ

僕は入皆の背後にゆっくりと近づく。


「ホラ、もうすぐ満月ね。」


空を仰ぐ入皆は天を指差して

そう言った。


「す」じゃなくて「つ」だった。

危ない危ない

実行前に気づいて良かった。


「ああ、そうだな。」


入皆の横に並び

僕も空を見上げる。

右手は濃いオレンジ

左手は既に夜の世界で濃紺の空が広がる夕暮れ時だ。


月は山の影から姿を完全に出した状態で

白く輝いていた。


「次のオカルト討論会。

そのテーマ、いよいよ行くわよ。」


何回目かは数えていないが外部の人間も交えて

オカルトに関する意見を語り合う討論会。

生徒会長が参戦した回が評判になり

今や学年の枠を越えて

結構、評判になっているらしい。


「やるのか・・・一口に月と言っても色々あるぞ。」


月は神秘の女王だろう。

様々なオカルトの宝庫だ。


「ズバリ!!月面着陸よ。

人類は本当に月に行ったのか。」


こうして開催が決まり

三井を始め招待状を配る運びとなったのだ。


夏休みの夜だというのに

結構人が集まった。

嬉しいやら恥ずかしいやらだ。


「集まっているわね!歓迎よ!」


開始時間ギリギリに入皆のご登場だ。

背後から何やら巨大な荷物が

台車に乗せられ八咫烏やたがらす先生が

フゥフゥ言いながら部室内に運び込もうとしていた。


すかさず手伝う僕と三井。


「ありがとう。」


そう言ってハンカチで汗を拭きとる八咫烏先生。

・・・・そのハンカチ下さい。


「言ってくれれば最初から運びましたよ。」

「ですよ。こういうのは俺みたいなのの仕事っす。」


確かに三井なら余裕そうだ。


「今、完成したてのホヤホヤなのよ。」


「間に合ったと言うか

コレが完成するまで開催自体を遅延する。

そう言うモノよ。」


八咫烏先生を巻き込んで

何やら準備していたのは知っていたが

そんなに今回のテーマに重要なモノなのか。


「なんだソレ?」


「話の進行に沿ってちゃーんと

お披露目するから

期待して待ってて頂戴。」


そうして開始の挨拶と注意事項が

入皆から語られた。


知らないコトを知る。

考えた事の無い事を改めて考える。

これが討論会の主旨であり

相手を否定し自分の考えを

ゴリ押しする会では間違っても無い


と言う事だ。

ここを厳しく念押しする。

これを常に頭に入れて置かないと

ただの言い争いになってしまうのだ。


勝ちとか負けでは無いのだ。


今回に限ると


人類は月に行ったのか?


行ったと思う人は

こうだから行ったと思って居る

という自分の解釈を説明し


行っていないと思う人は

同様にこうだから

行っていないと思って居る。

この事を説明するのだ。


とまぁ

これだけ丁寧に念押ししても

進むにつれて毎回ヒートアップしてしまうのだが


僕の視線に気が付いた

生徒会長はワザとらしく咳払いをして

恥ずかしそうに睨み返して来た。


普段は冷静沈着な生徒会長の

珍しい激昂振りが拝める。

討論会が人気になった

本当の原因だと

僕は確信している。


「こ今回は前回の様な無様は見せん。」


ツカツカと僕の方に来て

そう言って来る生徒会長。

僕は真顔で返す。


「無様なんて・・・いつも素敵ですよ。」


「そそそそういうのヤメロ。」


3年の女子

背丈は高い

175cmの僕と目線がほぼ一緒な生徒会長。

黒髪ロングで整った顔立ち

成績優秀でスポーツは万能っぽく思える体格で

そう思い込んでいる人も多いが

実は結構トロい。

その凛々しさから

どちらかというと

いや

圧倒的に同性から人気の高い人だ。


「ハイはいソコ!

イチャついてないで始めるわよ。」


「イイイイイイイ!!」


入皆の声掛けに反論を試みるが

言葉が上手く出てこない生徒会長。

皆も聞く気も無く

入皆の指示で部室の中を移動し始めた。


壁際を背に椅子と折りたたみ式の

長テーブルが配置され

中央は広く空いている状態だ。


皆、テーブルまで下がり

中央の空きが露わになった。


入皆は角にゴミ箱を置くと

レジ袋二つを下げて対角線上の角まで

小走りして移動し

僕と三井においでおいでジェスチャーだ。


僕と三井は人差し指で

自分の顔面を指差し「俺?」ジェスチャーだ。


笑顔でブンブン頷く入皆。

なんで普通に話さないのか

タマにそう悩むが

これが入皆なのだ。


僕と三井は互いにお互いの顔を見合うと

入皆のいる角まで移動する。

レジ袋を手渡された。


「ゴミ?」


中身を確認した三井は

不思議そうな感じでそう呟いた。


持っていた様子から

中身は相当かさばるが軽いモノだと

僕は想像していた。

案の定で袋の中身は丸めた紙だ。


「三井クンの参加は正に好機だわ。

真剣にお願いね。マジで勝負してね。」


そう言って入皆は対角線上角の

ゴミ箱を指差した。


投げて入れろって事か

勝負と言う事は相手は僕か。


「えーっ俺シュートは苦手な方なんだけど。」


三井のクセに情けない。


「それでもここに居る誰よりも

成功率が高いでしょう。」


そりゃバスケ部だからな。


「タイミングは私が指示するわね。」


そう言って僕等より少し前へ出る入皆。

その瞬間を狙って僕と三井の間に顔を出し

とある作戦を伝授し消える男。


同じクラスの宮本だ。

彼もオカルト部だが

完全に幽霊部員で名前だけだ。

今日は来たのか

珍しいコトもあるんだな。


「いい?ハイ!シュート!!」


入皆の掛け声に

僕と三井は宮本の作戦に従った。


二人共、全力で振りかぶり

丸めた紙クズは物凄い勢いで

入皆の後頭部に直撃した。


「そういうのイイから!

真面目にやってって言ったでしょ!!」


ブックマークやポイントでテンション上がります。

どうかお願いします~。

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