第六話 お願いタイムマシーン
「えーっ宇宙人も未来人も超能力者も居ないのーっ」
入皆は必要書類を生徒会室に受け取りに行った。
ついて来るより他の新設部の連中に
ここを奪われない様に
僕と真黒井さんは拠点防衛を言いつけられたのだ。
他の新設部なんてあるのか?
「いや入皆がそう言っているんだけどね。」
「全部いると思うなーっ
てか、いて欲しい。」
ちっさいからなのか
学校の備品にしては豪華なせいか
椅子に腰かけると足がちゃんと地につかない
真黒井さんは膝から下を前後にバタバタさせながら
そう言った。
僕たちは
時間潰しの雑談がてら
オカルト部創設の経緯を話していたのだ。
その首謀者たる入皆が
宇宙人などを否定している話に
あからさまにがっかりする真黒井さん。
このクラブに入れてくれと言うだけあって
そう言うの好きな様だ。
僕の持論も持ち出して見た。
「他二つの実証は難しいが
少なくとも未来人は絶対にいるよな。」
「どうして?」
目を輝かせてそう言う真黒井さん。
イイですよ。
カワイイですよ。
「だって今の僕達だって
江戸時代の人からしたら未来人なワケだし。」
「あーそうか。」
なんかツマンナそうな真黒井さん。
期待していた答えでは無かった様だ。
イイですよ。
カワイイですよ。
「人類が滅ぶまでは
そこまでの未来人は必ず存在するのさ。」
その時、扉が開き
入皆が帰って来た。
「認識に齟齬があるようね。」
うーん
そのセリフはテンション低めに
真黒井さんに言って欲しかった。
「丘クンの言っているのは
江戸時代は江戸時代の現代人
未来は未来の現代人よ。」
あっ
呆けた真黒井さんカワイイ。
「私の言う未来人が存在しないというのは
要するにタイムトラベルは出来ないと言う事
未来の人が過去にやってきて
現地時間の住人とコミュケーションを取れないと言う事よ。」
「タイムマシーンは発明出来ないってコトか。」
「そうよ。」
言い切ったな
しかしタイムマシーンは不可能では無いぞ。
それに人類は
頭に思いついたモノは
何でも実現させる種族と
誰かから聞いた気がする。
「理論的には出来るんじゃないのか
例えばアンドロメダ銀河は200万光年
離れている。
地球から見ている今のアンドロメダは
200万年前の姿ってコトだ。
同様に他の天体から地球を
もの凄く高精度な望遠鏡で地球を観測した時
17光年離れた場所から観測すれば
17年前の姿を見る事が可能だ。」
「あたし生まれてないかも」
うん
同級生だからみんなだよ。
真黒井さんだけじゃないからね。
突っ込まず僕は続けた。
「光速を超える宇宙船に
その望遠鏡を搭載すれば
任意の過去の地球を観測出来る。
これはもうタイムマシーンと言えないか。」
「見るだけで干渉は出来ないでしょ。」
そうだ。
僕を産む前の両親と
会って話す事は出来ないか。
でもデロリアンには乗ってみたい。
「猿の惑星であった様に
体感時間の差から未来に行く事は
可能かもしれないけど
逆
未来から過去に行く方法は無いわ。」
「見えないモノを見ようと
覗き込むのがせいぜいってコト?」
トシいくつですか
真黒井さん
「そうサフラン色の扉の向こうに別世界はないわ。」
もっといくつだよ入皆。
お前、本当はタイムスリッパーで
その秘密を守るために
いないって言ってるとか言うオチなのか。
「丘くんの言う方法以外で実際に
時間旅行を出来るタイムマシーンが
この先発明されないとは言い切れなくない?
なんかすっごい未来なら出来てそう。」
ん
なんか僕の方が頭悪い表現になってないか
真黒井さん。
「不可能よ。
今までに未来人が訪れた記録が無いわ。」
「ジョン・タイターは?」
僕はそう尋ねた
あれは記録といえないだろうか。
「アレはタイムトラベラーを語った予言よ。
予言者と名乗るより注目を浴びると思ったのでしょう。」
「本当に未来人の可能性を
否定しきれはしないだろう。」
「まぁそう言うのはどっちも証明出来ない
不毛な水掛け論だよね。」
思わず食って掛かってしまったが
真黒井さんの言う通りだ。
「そうね。
言い争いをしたいワケじゃないのだから
私がタイムトラベルが不可能だと思って居る
根本的な理由から話しても良いかしら。」
頷く真黒井さん。
椅子に深く座り直し
手でどうぞとジェスチャーする僕。
「時間そのものが存在しないわ。
無いものに後も先も無いでしょう。」
「いや過去の記憶は誰だってもっているし
明日だって必ずやってくるだろう。」
思わず割って入る僕。
まさか時間が無いなんて
締め切り間際の漫画家みたいな事を言い出すとは思わなかった。
「時間って何?
何で動いているの?
何で出来ているの?
物質?エネルギー?力場?
どれでも無いでしょう。
未知の力で
何にも干渉されずに規則正しく運動を
続けるモノ?
だとすれば当然こちらからも
干渉そのものが出来ないわ。
時間とは人の考えた概念上の存在よ。」
経過するからと
川の流れの様に
物質のように考えて
行ったり来たりを想像してしまう。
人の想像の産物という認識か
確かに時間の
構成物質も
パワーリソースも聞いた事が無いな。
でも
その存在しないモノに
僕等は縛られ当てにし
毎日を過ごしている。
乗るべき電車乗り遅れれたり
寝過ごしたりすれば遅刻だし
将来を想像し
それを目指して勉強したり働いたり
頑張っている。
その後は流行りのタイムトラベル物の
映画の話題に移り
真黒井さんと入皆は盛り上がってしまっていた。
知らない作品だった為
僕は輪に入れず
ボンヤリと時計を眺め
経過していなさに驚き
思わず自分のスマホを見て
本当の時間を確認した。
多分、交換する人が居なくなったので
電池が切れているのだろう
文芸部の時計は
まるで文芸部が終わった時を示すかのように
そこで止まったままだった。
ブックマークやポイントでテンション上がります。
どうかお願いします~。