第五話 オカルト部 発進⑤
「何てコトなの!!!」
本気で驚く入皆。
勧誘だらけでどこ賑やかだった。
興味もあるということで
様々な部活の体験(主に入皆)をしつつ
文芸部の部室を目指した僕等。
そしてその賑やかさが
とある教室の前ではパッタリと途切れ
ここだけが日常をひっそりと演出していた。
文芸部は廃部になっていた。
3年の卒業に合わせて
残った少数の部員も他の部活に移籍したそうだ。
その旨を書き記した張り紙が
扉に張ってあったのだ。
「いや、逆に良かったんじゃないのか。」
空いているのだから
乗っ取り行為をしなくても良いのだ。
「駄目よ!乗っ取るのがイイんじゃない。
分かってないわ」
分からん。
分からなくても全く悔しくない。
この先その感性が必要になる気もしない。
「文芸部じゃなきゃ駄目だわ。」
地団駄を踏んで悔しがる入皆。
曰くそうと決まっているからそうだが
僕に姉はいないし
入皆の家も地元の大地主じゃないだろ。
どうしてもの理由は無い。
「まぁ無いモノは諦めろ。
・・・もしかしたら扉の向こうに
最後の文芸部員がいるかもしれないぞ。」
そう言って扉を開ける僕。
文化部が集中しているこの棟は
他の校舎とは趣が異なった
引き戸では無いノブのある扉だ。
色褪せたマホガニーは高級さと
歴史を感じさせる。
中に誰もいるとは思って居なかったので
何も言わず開けた。
僕の目に飛び込んで来た光景は
本当にあの作品の世界に迷い込んだのかと思える程
彼女にそっくりだった。
小柄で
細くて
入皆よりさらにショートな髪型の少女が
窓辺で椅子に腰かけ
一人で本を読んでいた。
僕は開けたのと同じ勢いで
扉を閉めた。
「どうしたの?」
「実写化出来るぞ・・・。」
「はぁ?」
ここまでの部活体験コーナーで見た
超人的な入皆の運動神経
運動部系はどこも本気で入皆をスカウトしていた。
どのシーンでも代役は必要無いだろう。
そして扉の向こうにはイメージぴったりの彼女も居る。
未来人はどうしようか。
八咫烏先生でいいか
いや
アレは大人バージョンだな。
妹とか居ないかな
んー若いし
・・・無理やり制服着て貰えば
「ちょっと!丘クン大丈夫??」
「えっ・・・?」
鼻血が出ていた。
本気で医者を呼ぼうとする入皆を
なんとか説得する僕。
出やすい体質と嘘をつき
部活体験で珍しく運動したせいだと
何度も言って何とか収めた。
鼻血って出るんだな。
マンガだけかと思っていた。
「部屋に誰かいるぞ。」
入皆から貰ったティッシュをこより
両端を鼻の穴に突っ込んだ。
牛の鼻輪みたいだ。
「え、それって!」
入皆は僕と同様に挨拶無しで扉を開けた。
中の少女は本を読むのを止めていて
扉の前まで来ていた。
こちらが何か言う前に大きな声で話し始める。
「あっーあの文芸部の方ですか?
私、入部希望の1年B組の真黒井 ミサミサ
っていいます。」
どんなに乱れてもマグロ。
鼻輪が赤味を増した。
「いいえ違うの私達も同じ1年で・・・。」
僕は内側に開いた扉の廊下側から
張り紙を丁寧に剥がす
また張るからな。
それを真黒井さんに見せた。
「嘘ぉー!」
顔と眼鏡の距離を調整するように
紙を覗き込み内容を把握した真黒井さんは
素っ頓狂な声を張り上げた。
「やっだぁー!えーっ何でーっ何で?」
イメージが崩れた。
僕としては真黒井さんには
ずっと読書していて欲しい。
「えーっだって一年何組とかの表札みたいなのは
文芸部のままだよぉぅ!!」
普通に表札でイイんじゃないかな。
「空き教室になったワケだし
用のある人もいないし
もし今年から新文芸部を創設なんて流れになったら
二度手間だし、だからそのままだったんじゃないかな。」
大体、張り紙読もうよ。
「はぁー道理で勧誘もやってなく
静かなワケだわねーっ。」
「残念だったな。
それとも真黒井さんが文芸部復活させる?」
「いいわね。その上で新たに乗っ取りましょ。」
途端に元気になる入皆。
もはや目的と手段の重要性が完全に狂っている。
「パァスーぅめんどいのヤダー。
文芸部に入ろうと思ったのも
一番楽だと思ったからだしぃ。」
話せば話す程
僕の中のイメージが壊れていく
実写化は無理だったんだよ。
「って
あなた達・・・は」
「私は隣のA組の入皆茶々子
こっちは・・・。」
「同じA組の丘 流人だ。」
「そうなんだー。よろしくー」
そう言って真黒井さんは入皆と握手
そしてその後、何と俺にも握手して来た。
指
ほっそ
僕の中の龍が
「で二人は廃部になった文芸部部室に
どうして訪れたの?」
「ふっふふ、よくぞ聞いてくれたわね真黒井さん。
今日!!」
何かカッコよくポーズを取りながら語り出す入皆。
「現時刻をもってこの部室は
私達の新設部の部室として占拠したわ!」
「オメデトー」
パチパチと拍手する真黒井さん。
「で新設のクラブって何部作ったの?」
「ずばりオカルト研究部よ!!」
躊躇いも無く即答する入皆。
すごいよなコイツ。
「丘くんを研究するの?!!」
僕は実験動物か
「いや、世間一般で普通に言われている方の
オカルトだよ。」
「あーっ信じるか信じないかは
あーなーたー次第っってやつ!」
まぁそれでイイんだよな。
「面白そーっ混ぜてー。」
文芸部はイイのか?
いいのか
特にこだわっていたワケじゃなんだよね。
というか楽そうなのかオカルトは
こうしてオカルト部は始まるのだった。
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