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第四話 オカルト部 発進④

八咫烏やたがらす ともえ

今年からうちの高校で務める事になった

ピッチピチの新任教師だ。

初ということで1年生のクラスを受け持つ

隣のクラスの担任だった。


「当然ながら請け負っている部活は無いわ。」


新人だからそうだろう。

そう言う意味でも狙い目だ。


名前的にはサッカー部が最適だ。


最低、見損なったの罵声連呼に飽きた入皆は

通常モードに戻り、そう話しかけて来た。


僕の方はその罵声攻撃によって

新たな龍が誕生してしまい

初めて味わう快楽に酔いしれていたが

入皆のモード変更に合わせて

僕の方も通常モードへと無事戻った。


この新たな龍には

何と名付けようか。


「八咫烏先生・・・実家はお寺さんね。」


「何でだよ!!八咫烏なら神道だろ

なんで神社の娘じゃないんだよ!」


自分でも驚くほど大きな声が出た。


「し知らないわよ。そんなの

先祖がどこかで鞍替えしたんでしょきっと」


入皆も僕の声に大きさに驚いたようだ。

それでも自分の推論を入れて来るあたりは

入皆の真面目さを感じた。


「とにかく八咫烏先生をターゲットにするなら

急ぎましょ、こういうのは早い者勝ちよ。」


そう言って入皆はスマホをしまうと

キビキビと歩き出した。

迷う様子が無いのは職員室を把握しているからだろう。


「失礼しまーす。」


職員室に到着すると

入皆は躊躇する様子も見せず

扉を開け、そう言って入っていった。


すごいなぁ

少しビビっってしまっている自分は矮小なのか。

僕も小さく「失礼します。」と呟き

ズンズン進む入皆の後を追った。


入皆は探す様子も無く

八咫烏先生の机まで進んでいく

もしかして職員室の席次表も

記憶済みなのか。


そして辿り着いた席には

小柄だがムチムチの女性が座っている。

ああ

もう

リクルートスーツで

髪も全部後ろで纏めた面接仕様だというのに

隠しきれない色気がスゴイ

エロっ

エロイわ

この先生

僕がきのこりそうだ。


「八咫烏先生!お願いがあります。」


接近者に気が付き八咫烏先生が

書類作業を中断した瞬間には

入皆が既に声を掛けた。

少し遅れて

僕も入皆の斜め少し後ろで止まった。


「えっ!?ちょちょちょっと待ってね

えーとぅ・・・えーとぅ。」


そう言うと八咫烏先生は今、作業中だった

書類を慌てて捲っては入皆と見くらべ始めた。

取っ散らかっている。

ああ

スイマセン作業中に

これから依頼する内容を知っている僕とはしては

作業中断に申し訳ない気持ちいっぱいだ。


「私は隣のクラスです。その書類にはいません。」


履歴書っぽい書類なのは

僕から見ても分かったが

それらの人物が隣のクラスメートだと

入皆は判断出来たようだ。

本当に学校関係者、全ての顔と名前を記憶しているようだ。


「あっ・・・そうなの?

私、顔を名前を覚えるのが苦手で・・・。」


成程、受け持ったクラスの生徒を

早目に覚えようとしていたのか。


「でも隣のクラスの生徒さんが

私に何の御用かしら?」


「はい、実はですね。」


入皆は顧問依頼の件を語り出した。

声が聞きやすいのもあるが

説明も丁寧ですごく理解がしやすい

アナウンサーとかコメンテーターにも

向いているんじゃないだろうか。


「顧問・・・ですかぁ・・・。」


明らかに迷う様子を見せる八咫烏先生に


「それもオカルトですからね。

回りの目も気になっちゃいますよね。」


言ってからしまったと思った。

なんで口説き落とす方が

足引っ張るような発言をするんだ。

僕のバカ。

入皆の責める視線に防御体勢を取らねば

と思って身構えたが

入皆は責めては来ず

そのまま説得を続けた。


「そこは大人な態度で

思春期の学生は面白いコトを考えるわー

って感じで良いですよ。」


「そ、そうね。」


「それに、ここで顧問を引き受けるコトは

これからの八咫烏先生に降りかかる災難に

最強の盾になると約束します。」


「さっ災難?!」


おいおい

あれ程言ったのに脅しか


「はい。既存の部活動で

退職や移動などにより顧問が不在になった

クラブはこれだけあります。」


そう言うと入皆はポケットから

一枚の書類を八咫烏先生に差し出した。

素直に受け取った八咫烏先生は

首を15分横に傾けると

慌てて書類の向きを変えた。


「・・・・。」


眺める八咫烏先生に入皆は続けた。


「顧問が必要なそれらクラブの生徒が

一番最初に目を着けるとすれば・・・。」


「何も受持っていない、わ、私?!」


「生徒だけではありません。

現在、複数の顧問を抱えた先輩教師達が

キミィ~私は手一杯でねェ助けてもらえないかな

などとパワハラ気味に迫って来る可能性が・・・。」


キミィ~の辺りがスネイプ調なのは

ここに来るまでの会話のせいか。


「ひぃっ!」


青ざめる八咫烏先生。

守りたい。

年上なのに庇護欲を掻き立てる先生だ。


「ここで私達の顧問を引き受けてしまえば

それらの攻撃をかなり緩和を出来ると思います。」


何も抱えていない教師と

既に抱えている教師に更に追加では

食いつく方も期待値が違うだろう。


「な・・・成程。」


「そして何より私達の部活には

引率したりとか何かを準備するとか

顧問の先生の手を煩わせるコトはありません。

実質、放置。

名前をお借りするだけです。

万が一兼任する事態になっても

苦労はもう片方だけです。」


数に制限が無いとは言っても

三つも四つもは流石に無い

そしてその状況なら

二つ兼任の教師は全て候補者になる。

ターゲットとして突出する事は無くなるワケだ。


「顧問の件、ぜ是非こちらからお願いしたいわ。」


顧問ゲット。


しかも最後は向こうの方からお願いされるという大成功だ。


部活動申請の仕方や

必要書類などを慌てて調べ始めようとする八咫烏先生を

「全てこちらでやっておきます。」と笑顔で制止する入皆。

後で直に署名を貰いに来る約束だけ取りつけ

僕等は職員室を後にした。


「さっきは・・・ゴメン。失言だった。」


「え?何のコト。」


足引っ張る発言に気が咎め

早々に謝罪する事にした僕に

嫌味で無く本当に思い当たらない様子で

入皆は聞き返して来た。


「ホラ、オカルトは人の目が・・・って」


「アレはナイスね。流石は丘クン

私の目に狂いは無かったわ。」


どこがナイスなんだ。

本気で疑問に思った僕は

素直に尋ねた。


「誰でも気が付く悪い条件は

隠すよりこちらから早い段階で打ち明け

対処方を提示しておくに限るわ。

これにより相手はよりこちらを信用するようになるの。」


それはそうだな。


「そしてこれは一人の人間が行うより

他からの突っ込み、複数で目の前で演じる方が

効果が高いの。」


「そう・・・なのか。」


「ええ、一人の独裁ではなく

意見を言い合える集団なんだ。

話が通じる人達って印象を与えられるわ。

窓口がたった一人だと

その人に何かあった場合

梯子を外された格好になってしまう危険があるの

他から私は知りませんって」


「それは確かに怖いな。」


「あえて行う場合もあるわ。

連載打ち切りを知らせる前に

担当を変えて」


「具体的には怖いからやめてくれ。」


成程、頭も良く準備も万端

実行力も高い入皆でも

数の力というのは

一人ではどうにもならない。

ただのカカシでも役に立つ事はあるのか

僕はほっと胸をなでおろした。


「さて、次は活動拠点の確保よ。」


「部活なら部室が割り当てられるんじゃないか。」


「部室棟に空きは無いの。」


調べ済みか。


「でも私達の活動に着替えとかないから

どうしても部室棟に拘る必要は無いわ。」


「放課後に必ず空く教室でイイわけだな。」


科学部が理科室とか

そんな感じだよな。


「ふふ、でも狙っている部屋があるの。

まずはソコに勝負を仕掛けたいんだけどいいかしら。」


良いも悪いも無い

入皆のしたい様にすれば良い。

僕は快諾し


「どこを狙うんだ?」


そう聞いた

返って来た答えは


「文芸部の部室を乗っ取るわよ!」


宇宙人も未来人も超能力者も否定するのに

そこは踏襲するのか。


八咫烏 日本サッカー協会のシンボルマークで、

    日本代表チームのユニホームにも描かれています。

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