第十七話 エコえこ③
僕の時と結果も同じになった。
会長、超平謝りだ。
新装備を使う機会に早速恵まれた
真黒井さんは大喜びで
通常モードに戻りリストバンドのスイッチをオフにした。
バーサライタ
人の目の残像効果を利用した表示装置。
一列に並んだLEDを振るなど移動させながら
明滅させ文字や映像を空間に表示するのだ。
モノによっては数十万もする高価なモノだが
真黒井さんのリスバンドは
USB稼働の送風機
その羽一枚に2色だけLEDを並べ
アナログ時計を表示する安物を改造し
魔法陣を表示させている。
もっと高価なバーサライタなら
最初から描く様子や
立体的に回転させたり
最後に炎を吹き上げたりなど
複雑なアニメーションが可能なのにと
改造を担当した
同じクラスの電子工学部所属
真田 真は口惜しそうだった。
僕と同じく入皆に目を着けられた人物で
鉄の意志でオカルト研究部を断り
電子工学部に所属したが
結局、こういう改造などを依頼されてしまっているので
入部していないだけで事実上あまり変わらない気がする。
最初は嫌がっていたがバーサライタ改造に
悔しがる辺り、まんざらでないのだろう。
入皆も高性能魔法陣リストバンドを切望していたが
その辺は所詮高校生、そんな資金は無い。
僕的には動かずとも光る魔法陣が空間に表示されるだけで
テンション上げ上げだ。
何より真黒井さんに似合う。
「話術の次は魔術か、恐るべしオカルト部!」
話術はオカルトじゃない気がしますが
僕が使えば何でも頭にオカルトが付いてしまうので
間違いでは無いのか。
「やはり、このままオカルト部を野放しには出来ないな。」
謝罪が終了すると会長はマジモードになって
そう言った。
訪れた本来の目的か。
「生徒会の権限で潰しますか?」
それならそれで
僕に何の責任も無く解放される。
歓迎だ。
僕は期待を込めてそう言ったのだが
会長は頼りなさげな表情に変わって答えた。
「そんな権限は生徒会には無いのだ。」
大概のラノベでは支配者・絶対者で描かれるのだが
この学校では違うようだ。
「提出された申請書に不備は無く・・・
流石は丘1年、話術は文面にしても有効だ。」
いえ
僕は書いていません。
「正式に受理されてしまった。
提出内容と異なる活動が露見しないと
もうひっくり返す事は出来ない。
それも、今の真黒井1年の装備で
早くも活動が正当であると
何より私自身が確認してしまった恰好だ。」
あのガジェットが正当な活動の証拠とは
入皆の奴はどんな文章を書いたのだ。
「なのでここは!」
会長に眼力が篭る。
流石は生徒会長、まだ手があるのか。
「お願いだ。
頼む、この通りだ。
入皆1年女子だけでも解放してくれないか。」
両手を合わせ頭を下げる会長。
僕と真黒井さんは顔を見合わせた。
それから僕は会長に話しかける。
「それは入皆を生徒会に招き入れたいと言う事ですか。」
その通りだそうだ。
本来なら閲覧出来ない書類
入学試験の結果を見る事が会長には出来たそうで
・・・権限があるんだかないんだか
良く分からない人だ。
それによると入皆はTOPもTOP
歴代でも恐らく1位の優秀な成績だったそうだ。
「是非、生徒会で活躍して欲しい。」
逸材だろう。
欲しがるのは当然だ。
「別にクラブ活動と並行しても良いのでは。」
生徒会に所属する者は部活動禁止とか
そんな決まりは無かったハズだ。
「うむ、普通の部活なら問題無いのだが
オカルト部なるふざけたクラブ
ああっと済まない。」
体裁が悪いのか。
所属している僕が言うのもなんだが
真っ当な理由だ。
ここまで聞いて
会長のおっちょこちょい振りから
致命的な勘違いをしている可能性に気が付いた。
顔を見合わせた時の
真黒井さんの表情から
恐らく真黒井さんも
その可能性に気が付いていると思われる。
まさかと思ったが
ここまで来ると
もうソレしかないだろう。
僕は勇気を振り絞り会長に言った。
「会長はもしかして僕が話術で
入皆をそそのかしオカルト研究部に
入部させたと思っておられるのですか。」
違うのか?
その他の可能性など
考慮した事も無い顔をする会長に
僕は設立までの顛末を話した。
「入皆1年女子が発起人だと!!」
僕は巻き込まれ
真黒井さんは興味本位で乗って来た。
「ですから解放とか僕に言われても
どうにも出来ません。」
「私は何をしに来たのだ?!」
こっちのセリフです。
頭を抱えて悶え始めた会長。
僕たちは掛ける言葉も思いつかず
ただただ憐れみの視線を投げるだけだった。
扉が開き
そこでやっと張本人が登場だ。
「フッフフフ来たわね生徒会!!
我らがオカルト研究部を潰そうったって
そうはいかないわ。
返り討ちにしてあげるわ!!」
いや
今、会長はダメージを負ってるから
そこへ追加攻撃は人としてどうなんだ入皆。