第十六話 エコえこ②
「丘1年。恐ろしい話術だ。」
僕のせいになっている。
それとも霊感並みに
僕に自覚が無いだけなのか。
「入皆1年もその話術で陥落したのだな。」
いいえ
僕自身は鳥に食われた
虫の様な気分なんですが。
「わ私を陥落して、どどどうする気なのだ。」
両手で自身をホールドする様に会長はそう言った。
つい、しげしげと見てしまうが
良いスタイルであることは間違いない
誰も否定しないだろう
間違い無いのだが
来ない。
なんだろう
背が高いせいなのか
色気みたいなモノが皆無だ。
腹筋も割れているんじゃないだろうか
硬そうだ。
「ひっ。」
僕が観察している事を理解した会長は
涙目になって恐怖を露わにした。
「や・・・やめて。」
おっと
なんか・・・イイぞ。
ここで評価が一変した。
僕の中で庇護欲と征服欲の一大決戦の
火蓋が切って落とされた
いずれかの陣営の勝利で
今後の僕が明るい未来を生きるのか
血塗られた地獄を駆け抜けるのか
ガンバレ庇護欲、僕は性善説支持だ。
戦いは壮烈な激戦を経て
庇護欲が勝利を収めた。
が
僕の中では不安が産まれた。
庇護欲が圧勝すると思っていたのだが
征服欲が予想外に善戦したのだ。
圧勝とはいかず
辛うじて勝ちを拾った庇護欲。
僕の今後が心配だ。
この程度でコレでは
もっと強力な餌の前では
悪が勝利する恐ろしい未来が
待っているのではないだろうか。
もっとガンバレ光の陣営
僕に恒久の平和を
「あああっ丘くんが上級生の女の子泣かしてる!!」
そんな一抹の不安を吹き飛ばす増員が声を上げた。
暇な僕は一直線に部室に来た。
程なくして他のメンバーも当然現れる。
何も不自然では無い。
むしろ前提していなければならない事態だ。
部活動の為に部室に来た真黒井さんは
僕と会長を見た瞬間にそう叫んだのだ。
「真黒井さん、何を言って・・・。」
会長の身体から視線を上に移動
顔を見ると確かに涙が一筋。
これは真黒井さんの言葉を否定出来ない。
僕が見ても事実だ。
なんだコレは
事実だが冤罪だ。
その意志が無くとも
結果的にそうなってしまえば性犯罪者だ。
その意志が無かった事を客観的に証明など出来ない。
悪魔の証明
悪魔が存在しないと言うならそれを証明して見せろ
と
無い モノを証明させようとする。
これは到底不可能なのだ。
無いモノは無いのだから
痕跡や反応なども無いのだ。
通常ならば居る(有る)と主張する側が
連れて来る(持って来る)のが普通だ。
あるのだから
痕跡やら反応、実物だってイイ
通常の事件などはこっちだ。
殺人事件では殺意があった事を立証しなければならない。
が性犯罪に限っては何故か逆なのだ。
触ったのだから触る意志があったと片付いてしまう。
上級生の女の子が泣いている事実。
現場には僕以外いない。
これはもう立証不可能だ。
まだアパートの家賃を一回も払っていないというのに
もう僕は牢屋行きなのか
あれ程苦労して両親を説得した一人暮らしだと言うのに
こんなに早く犯罪者に墜ちるとは
こんな事なら
結果が同じなら
光の陣営の勝利を願うより
闇の陣営の誘惑に乗って置けば良かったのだろうか
目まいが激しくなっていく
思考も鈍って来た。
薄れ行く意識の片隅で僕は呟いた。
「あぁそう言えば部屋のサボテンに
水をやるのを忘れていたなぁ・・・。」
オカルトんワン応援ありがとうございました。
作者の次回作にご期待くだ
「丘くん。何してるの?
早く入りなよ。」
「へぁ」
思考の泥沼から解放され
ふと見て見れば真黒井さんと会長は
既に部室の中で椅子に腰かけていた。
僕が呆けている間に
誤解である事は会長が説明してくれていたのだ。
「へぇージョークの練習ですかぁ」
これは会長に感謝すべきなのか
いやまてそもそも原因は会長だ。
当然なのか・・・。
罠でなかった事に感謝すべきだ。
「ふむ、丘1年のアドバイスでな。」
「冗談言わない方がカッコ良いと思いますよ。」
「皆そう言うが私が個人的に
使いこなす事を切望しているのだ。」
普通に会話が始まっていた。
普通に話せるじゃないですか
僕のせいか
もしかして僕がおかしいのだろうか。
そう思いながらも
テーブルを挟んで対面している二人の
どちらの隣でも無い空いた辺の席に
僕はフラフラと腰を掛けた。
「ええと、入皆でない1年女子で
この部活の人間と言う事は・・・。」
会長は前情報を持って訪れたようだ。
ただうろ覚えなのか
思い出すのに苦労している様子だ。
そんな大人数でも
覚えにくい名前でも無い気がするが
入皆の記憶力が異常すぎて
最近は僕の中の普通が大きく揺らいでいるからな
突っ込まず流そう。
「真黒井ミサミサとか言うふざけた名前の女子だな。」
会長には学習能力に障害でもあるのか。
「条件を満たしました。
我が真名に掛けた呪いを発動します。」
明るく人懐こい真黒井さんが
まるでスイッチが切り替わった様に
別人みたく冷酷な感じになった。
僕的に待ってましたのキャラだ。
真黒井さんは左腕を突き出すと
光る魔法陣を形成した。
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