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第十三話 仮に月⑦


「お集りの皆々様

ここまでご清聴ありがとうございました。」


そう言って深々と首を垂れる皆。


おぉやっと終わるのか

長かったな。


「いよいよ、ここからが本番です。

これまでと異なり

私が決定的に疑っている原因

その諸悪の根源について説明するわ!!」


終わって無かった。

しかも本番ですら無いと言うね。

ここまでででも

月面着陸の映像に関して

十分にそのグレーさ

あくまでもグレーだ。

決定打にはなっていない。

ただ

果てしなく怪しく疑わしい事に

異論はない。


まだ、あると言うのか。


「コイツよ!!」


これまでより気合

と言うか

明らかに怒りがこもっている。

入皆は再び器機を操作すると

画面は切り替わり


月面車が表示された。


「こいつは15、16、17と」


私の人生暗かった。

そう入皆は続け慌てて訂正した。


やはり入皆はタイムトラベラーだ。

昭和の時代からやって来たに違いない。

せめて、ため息覚えたエンジェルくらいにしておけ

・・・これも昭和か。


「ええと15、16、17号と

3連続で月に持って行ったんだけど

・・・さっきもちょっと言ったけど

コイツふざけすぎでしょう!!」


激昂している。

冷静な意見交換を念押しした

張本人がコレではいかん。

僕はすかさずクールダウンを

促す期待を込め割って入った。


「ふざけている?どうしてだ。

歩くよりよっぽど効率良く

広範囲を調査出来るだろう。」


これでもかの地下鉄インフラが整った

都内ならともかく

僕の地元でも一家に一台は自家用車がある。

ましてやこの辺りは山が近いので

坂が多い事も相まり

無しでは生活に困るだろう。


その位、車は重要だ。


「・・・・コイツの月での

最高走行距離知ってる?」


知らんわ。


「万が一の故障を考慮して

歩いて着陸船に戻れる距離。

その条件で片道7.6kmよ。」


「結構、あるじゃないか。」


隣街位にはいけそうだ。


「いや、まず歩いて戻れる距離って自体が

コイツに乗る意味無くない?」


「楽だろ。」


がっくりと肩を落とす入皆。


「静かの海・・・直径何キロだと思う。」


11号が着陸した場所だ。

クレータ跡だったハズだ。


「見当も付かないな・・・。」


「873kmよ。」


・・・・・。

デカっ!


「たかだか7kmの差で

採取出来る標本に差なんてあるのかしら。」


ありそうな気がしない。


「NASAが自動車会社で将来

月面での車販売を目指して

月面に行ったのなら

まだ理解できるけど

そうじゃないでしょう。」


それも無理やりな解釈だ。


「ハッキリ言うわ。

コイツ

ハイリスク・ノーリターンよ。」


入皆は語り出した。

纏めるとこうだ。


一見、平に見えても

砂の下の地盤が平とは限らない。

激しいギャップの存在が無い事を

誰も確認していない前人未踏の地。


「隠れた岩にタイヤを取られれば

転倒の危険だってあるわ。

もしかしたら地盤の下に

空洞があって落盤なんて事だって考えられる。

いいえ、むしろそう言う危険を

十分に考慮すべきでしょう。

スキーで転ぶのとはワケが違うのよ。

破けちゃったじゃ済まない。

宇宙服が破損すれば命に関わるのよ。」


そうだ。

補修テープを持っていたらしいが

使わないに越した事は無い。


「転倒した車に挟まれたら?

誰も助けに来れない状況なのよ。」


司令船にもう一人いるが

月面に降りる術は無い。

物理的上から目線で見守るだけだ。


地球上、ヒューストンのスタッフだって

無線でガンバレくらいしか言えないだろう。

生体をモニターしているだろうから

骨折や出血などを教えてはくれるかもしれない。


宇宙服を脱ぐ訳にはいかないので

いかなる医療措置も不可能なのだが。


「そこまでのリスクを背負ってでも

コイツに乗る価値や意味があるのかしら。

私がNASAの総責任者なら

絶対に許可しないわ。

宇宙飛行士、人の命ってそんなに安いの?」


走行する場所の安全性など

誰も知らないハズだ。


「しかも、このバカ

重さ400kgもあるのよ。」


とうとう

馬鹿呼ばわりだ。


「司令船は勿論、着陸船だって

徹底した軽量化を施して来たのに

なんでこんなバカの為に

400kg分の割り当てを取られなきゃならないの。

その分、予備の酸素や電池、水

計測器だってもっと搭載出来たのに

それらを割いてでも


こんなゴーカートを搭載する意味は無いわ。」


笑い声が聞こえる。


白黒画面を熱心に視聴し


キラキラした目で宇宙飛行士の活動を見る。


その庶民の背後で


この茶番を企画した者達が


庶民を指差して笑っている。


「コレでもまだ信じてるよ。」

「脳みそ無いのか。」

「おかしいとも思わないのだな流石愚民。」


騙されるのは考えない人間。

騙す方はTVや新聞を操作するだけで

どんなデタラメでも鵜呑みにする。


健康法と偽り

小便を飲ませようと煽ったコトもある。


入皆はその後も

着陸よりも困難な月面から打ち上げ

司令船とのドッキングについて

話を進めていたが

僕は笑い声が頭から離れず集中を欠いた。

飲む人を否定しませんが

尿は無菌ではありませんし

アンモニアだって含まれています。


僕は嫌だ。

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