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8、公園の鳩は対象外です


『こちらは経費で落としますので、お気になさらズ』


「はぁ、ありがとうございます」


 ここのレストランは少々……いや、けっこうお高めだ。

 正直助かります!! ありがとう鬼さん!!


『くっ……俺が払いたかった……!!』


『今の私たちは、自由に使えませんからね』


 そこのところ、一体どうなってんの?

 二人がどういう存在なのか図書館で分からなかったし、今ここにいる鬼さんが色々教えてくれそうな気がするのよ。


『ワタクシも守秘義務というものがありましてネ。ですが、これだけは言っておきたいのでス』


「な、なんですか?」


『そこのヤンチャクレの代理は、本当に手がかかりまス!! 追加お賃金を要求いたしまス!!』


『ああ、わぁったよ。迷惑かけたな』


『分かればよろしいのですヨ』


 肉汁のついた唇を丁寧にペーパーナプキンで拭き取った鬼さんは、立ち上がる時に私に目を向けた。


『ヒントをひとつ。御二方は休暇中です』


「え?」


『もうひとつのヒントは、貴女の持っているものが答えです』


「え? え?」


 そう言って鬼さんは顎ひげを撫でるとニヤリと笑った。そろりと覗く牙に、思わず見入っているとアカガネさんが『早く行けよ』と急かす。


『おやおや随分と……。では、お先に会計は済ませておきまス。またお会いしましょウ』


 そう言った鬼さんは体をインクで滲ませたようになり、やがて床へと溶けていった。

 お会計は? と思ったら、店員さんが来て支払いの伝票を持って行った。


 ヒントとやらを残していってくれたのはいいけど、結局のところ謎は謎なままなんですよねぇ。

 ……うーむ。


「鬼さんは、アカガネさん担当っぽい。ギンセイさんは……ギンセイさん?」


 左に座っているギンセイさんは、先ほどからずっと無言だ。

 どうしたのかとデザートのチーズケーキを頬張れば、ギンセイさんからすんごい冷たい空気が流れてくる。


「え? 何、どうしたの?」


『あー、やべぇなぁ』


「アカガネさん?」


『彩綾……最近、何か気になることはないですか?』


「気になること……」


 なんだろう。強いて言えば最近急にイケオジに囲まれた生活を送っているのだけど、なんでこんなことになったのかが気になっているよね。


 え? それ以外?

 そうだなぁ……最近ちょっと頭痛の回数が多いんだよね……。

 デスクワークだから慢性的に肩こり気味だし、原因は分かっているから明日あたり整体院に行こうかと思っていたんだけど。


『ほう、そうきましたか……』


 ひぃっ!? また冷たい空気がぁっ!?

 いつも微笑んでいるギンセイさんの無表情が怖い。怖すぎる。


「何なんですか? さっきの鬼さんが言ってた『念』の話ですか?」


『ああ、俺らはわりと界隈で有名でなぁ』


「界隈」


『俺らが彩綾と一緒にいるのが気に食わないって奴らがいるんだろう』


「ああ、確かに自分の推しアイドルに彼女がいるみたいな情報があると、噂でも相手を滅したくなるよね」


『物騒だな』


「なるほど、なんとなく『念』というものが分かった。それで、私になにか影響あるの?」


 継ぎ足した紅茶を飲みながら、ずっと横でひんやりしているギンセイさんを気にする私。

 いつも木漏れ日のような微笑みを浮かべているギンセイさん……帰ってきて……。


『パッと見、俺のほうが好戦的だと思われるが、ギンセイのほうが沸点低いぞ』


「マジすか」


『俺だけじゃなく、自分経由の念も混じってたのもあるだろうが……』


 頭痛が減るのは嬉しいので、出来たら『念』はどうにかしてもらえると嬉しいなぁ。







 ティータイムも終わり、空気が冷たいのでレストランを出た私たちは気分転換に公園を散歩することにした。

 私の頭痛はたいしたことないし、今は自然に触れて穏やかな心を取り戻しましょうってことで。

 気づくとイケオジたちは着流しから洋服に戻っている。

 アカガネさんは黒いシャツにジーンズとスニーカー。

 ギンセイさんはポロシャツにトラウザーパンツだ。


 ちなみに、美術館の前にあったオブジェは元通りになっていた……と、思う。

 もし元の配置と違っていたら、作った人にはバレてしまうかもしれない。どうか作った人が遠方の住まいでありますように……。


 ひんやりしていたギンセイさんは、歩いているうちに穏やかな空気を取り戻していく。

 もう大丈夫かな?


『すみません。確かに、怒りに任せて動いても良い結果は得られませんよね』


「落ち着いた?」


『ええ、もう大丈夫です』


 いやいや、いいんですよ。だって(元)人間だもの。

 アカガネさんが公園の鳩を追いかけているのを見ながら、ふと気になったことを聞いてみる。


「アカガネさんの代理?に鬼さんがいるけど、ギンセイさんの代理も同じような鬼がいるんですか?」


『同じ……といえば同じですが……アレと同じくするのはちょっと……』


 むむむと考えるギンセイさんの横顔が美しいと思いながら見ていると、視線に気づいたのか顔を隠されてしまう。


『恥ずかしいので、あまり見ないでください……』


 イケオジ、かわいいかよ。


 あと、追いかけている間に鳩と仲良しになっているアカガネさんのセットにしようか。

 

 イケオジたち、かわいいかよ。


「機会があったら会ってみたいなぁ」


『そうですね。ぜひ』


 あとアカガネさん手づかみした鳩をジッと見てるけど、食べちゃだめですよ? 鳩が涙目になっているから離してあげてくださいね?




お読みいただき、ありがとうございます。


インテリ脳筋メガネ顎ひげ付き…!!(属性を盛り込むもちこ)

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