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6、時にはもっと強欲に求める


 すっきり爽快の目覚め。

 ほんのり朝食の焼き魚とお味噌汁のいい匂いがしてくる。


「んー? なんか懐かしい感じがする……?」


 小さい頃から朝食はパンだった。

 でも、なぜかこの和食の香りを懐かしく感じる不思議。


 起き上がった私が(最近やたら広くなった)部屋の見回すと、テーブルの近くでいつも通り寛ぐイケオジ御二方がいる。

 ということは、今、料理を作っているのは……誰?


『作ってやりたいみたいだから、任せている』


 アカガネさんの言葉にキッチンに目を向けると、そこはホラーな現象が起きていた。

 宙に浮かんでいる調理器具と、勝手に並べられていく皿やお椀。

 こ、これは、かの有名な……!!


「ポルターガイスト!?」


『ぽるた? それはなんですか?』


「勝手に物が動いたりする心霊現象のことですよ!!」


『勝手には動かしてねぇぞ。一応俺らに確認きてるし』


「家主の私に確認がきていない件について!!」


 ムキーッと怒っていると、ギンセイさんがよしよしと頭を撫でてくれる。


『私たちは彩綾から名をもらってますから、ある程度は周りを調整する権限を持っているのですよ』


『それに、あのモノは彩綾の『守護霊』だ。飯くらい作らせてやれよ』


 え!? 守護霊!?

 藤乃は守護霊なんていないって言ってたけど。


「なんで私には視えないの?」


『恥ずかしがって出てこないだけですよ。それに、あのモノは彩綾の前世と縁があるそうです。彩綾のことずっと見守っていたモノですから、邪険にしないであげてください』


 そう言いながらギンセイさんは、自分たちが認識されるまでのなんやかんやを語ろうとしていたので話題を変えることにする。


「さて! せっかく作ってもらったんだし、ご飯食べないとね! 会社に遅刻しちゃう!」


『出かけるのか?』


「当たり前だよ! 仕事だよ! 働かないとお賃金もらえないんだよ!」


『彩綾、世間では今日から休みのはずでは?』


「ふぇ!?」


 慌てて壁にかかっているカレンダーを見れば、四月はもう終わっていることに気づく。


 ……あれ? いつからまだ四月なのだと錯覚していた?


『色々あって忙しかったからだろ』


『彩綾らしいですね』


 焼き鮭の小骨を取ってくれたり、熱々のご飯を出してくれたりするイケオジたちに、私は首を傾げながらもシャイな守護霊さんの料理をいただく。

 お味噌汁、赤だしだー。

 ぬか漬けもあるー。

 だし巻き卵、大好きー。

 鮭の塩っけがたまらーん。


「はぁ、しやあせ……」


『……料理、やるか?』


『……せっかくですから料理道を極めましょうか』


 そんな算段を立てているイケオジたち挟まれた私は、しっくりと朝食を堪能するのでした。







 さてと。

 おいしい朝ご飯もいただいたことだし、昨日うっすら考えていた図書館へ行こうじゃないか。


 今日から! 連休! だからね!(ついさっき気づいた件)


 ところで昨夜は飲みすぎたのか、神社での記憶が曖昧なんだよね。

 でも、イケオジたちのことを知るために図書館へ行こう思ったのは覚えている。たぶんだけど。


「ギンセイさん、姿の見えない守護霊さんって、今ついてきてるの?」


『今はいませんよ』


『基本は持ち回りだからなぁ』


 持ち回りで守護する霊とか……その界隈って案外ホワイトなんだね。

 でもそうなると、なおさら気になるのは「いつも私の側にいるイケオジたちの立ち位置」なんだけど。


 図書館は広い公園の奥にある建物だ。

 手前の美術館や博物館も気になるけれど、今日は図書館オンリーでいくよ。


 中に入ると一階は受付になっていて、階ごとに置いてある本が違う。


「アカガネさん、ギンセイさん、ヒントください」


『何でもいいから手に取ってみろ』


『大丈夫ですよ。教えてくれると思います』


 そういうスピリチュアルな感じのヒントは要らないんですけど。

 二人からのヒントを諦めた私は、とりあえず歴史書のコーナーに足を進める。


「せめて時代くらい教えてよねー」


 ブツブツ呟いていると、通りすがりの女性が私をジッと見ている。

 何か用かしら?


『俺らの姿は、周りから見えねぇぞ』


『私たちは目立つみたいなので、見えないほうがいいとは思いますが』


 それ、早く言ってくださいよ。

 あとギンセイさんの仄かにドヤ顔してるの、ちょっとかわいいですね。


 専門書が多く並ぶこの場所は、人が少ないけれど声が響きやすい。

 イケオジ神様もウロウロしているから、興味はあるみたいだけど手には取ってない。そこらへんは何かしらの制約でもあるのかしら?


 ふと気になり手に取った本は、歴史というよりも歴史にちなんだ地図ガイドブックだった。


「呪い……封印……?」


 なんでこんなおどろおどろしい本を手に取ってしまったのか。

 でも、気になる。

 タイトルが「おいでよ魔界の地!」なんだもの。魔界は行きたくないけど、気になるから借りることにしよう。


「地図ガイドブックのコーナーで、これが気になったということは……」


『……』


『……』


「魔界へ遊びに行けってこと?」


『……安定、だな』


『……そうですね』


 イケオジたちから、かわいそうな子を見るような目を向けられる。

 違うって! わかってるって!


「このガイドに載っている地名がヒントなのかなって思ったの! 魔界に行けるなんて思ってないよ!」


『彩綾』


「なによ!」


『落ち着きましょう』


「……え?」


 気づけば周りに人が集まっていて、司書さんらしき女性が笑顔で。


「図書館では、お静かに」


「……ごめんなさい」


 ぐぬぬとしていたら、イケオジたちが交互に頭を撫でてくれた。

 いや、君らのせいだからな?




 悪いと思っているのなら、頭をもっと撫でろください!!(強欲)



お読みいただき、ありがとうございます。


明日も……がんばります!

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