表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/40

5、できれば真っ当な人間でありたい



 新しいお茶をいれたところで、ひと息ついた藤乃は寛いだ様子で口を開く。


「作戦会議といっても、今やれることは限られているのだが」


「さすが藤乃。進むべき道は見えているんだね!」


「お前の両側にいる存在も、後ろにいるのも私には視えていたからな」


「なんですと!?」


 正座している私の両脇を陣取っている御二方も驚いているみたい。

 え? ずっと? そしてこの二人以外にもいるの?

 キョロキョロ見回すけれど、イケオジ以外は視えない。これは一体……。


「出会った頃から視えていたぞ。だからイケオジたちもいわゆる『守護霊様』というやつだと思っていたが……もっとやっかいなものだったか」


「やっかいなもの? 守護霊って良いものじゃないの?」


「人ならざるものは、それでしかない。良し悪しを判断するのは人間だ。結局は自分にとって有益かどうかということになる」


「それって……なんか嫌だな」


「そう思うなら、それでいい。だからこそ、これらが側にいるのだろう」


 今回だけじゃない。出会ってから、藤乃の言っていることを理解できないことが多くある。

 でも私は深く考えないタイプで、その時その時の感じたままを伝えてきた。


「御二方は、善きイケオジだと思う」


「そうか」


 微笑む藤乃。

 そして私の両脇にいるイケオジたちが交互にヨシヨシしてくれる。えへへ。


『ありがとうな、彩綾』


『ずっと側にいますからね』


 赤ちゃんの頃から見守っていてくれていたという、御二方には感謝だね。


「じゃ、めでたくまとまったところで私は帰る」


「ちょっと待ったー!!」


 慌てて藤乃の足にしがみつく私。まだ帰ってもらっては困る。


「このままじゃ困るよ!! 毎日イケオジから愛でられる人生も悪くないけど、このままじゃ私お嫁に行けないよー!! あと他にもいるっていうのが気になるよー!!」


「いいじゃないか。イケオジたちに愛されていれば」


「私は、ごく普通の結婚して、ごく普通に家庭を築き、ごく普通に子どもを育てていきたいのー!!」


『なんだ。彩綾は子が欲しいのか』


『それはどうにかしないとですね……子作りですか……』


 いや私が悩んでいるの、御二方が原因ですからね!? あとギンセイさんの言葉が不穏なので、それ以上はやめてもろて!!


「知り合いがいれば、何とかなるかもしれんが……」


「なんとか連絡をとってくださいよ!! 藤乃様!!」


「連絡はとっているのだが、この件に対して、やけに腰が重くてな」


 藤乃の整っている横顔を見て、なぜか学生時代を思い出す。

 昔の彼女はモテていた。ヤバいくらいにモテていたのだけど、一度も恋人を作っていなかったっけ。

 まぁ、女子校だったから、告白する子たち全員女子だったけどさ。


「で、その人がいたら、どうにかなるの?」


「そうだな。大体のことは何とかなるぞ」


「引き続きよろしくお願いします」


 あとやたら広くなったこの部屋、元のワンルームに戻りますか? アパートの管理会社から怒られないといいなぁ……。







 平日は仕事をして、藤乃からの提案を土日にこなすことにした。

 出来ること、その一。

 願いを叶えてもらった神社で酒盛りをする。(良い子は真似しないでください)


「来ないなぁ……おじいちゃん」


『そうそう来ないだろ。あん時は祝い事の後だったのもあったしなぁ』


『あ、このお酒美味しいですね。どこのお酒ですか?』


『高知ってあるぞ』


『この国は各地に美味しいお酒がありますよね』


 御二方は日本酒だけじゃなく、お酒ならなんでもいけるみたい。

 私は日本酒特化型だから、近所の酒屋さんに取り寄せてもらってたりするけど、普通はここまでやる人は少ないだろうなぁ。


『んで? これがダメならどうするんだ?』

『私たちの起源を探るみたいですよ』


 うう、どうにかしようと思っている、その元凶の方々に色々と作戦が漏れている件。

 しょうがない。だって私に関することは、御二方に全部筒抜けなんだもん。


 頬を膨らませている私に、アカガネさんは少し垂れた目を細めて微笑む。


『いいじゃねぇか。離れてやることはできねぇけど、彩綾が俺らを知ろうとしてくれてるのは嬉しいからな』


 するとギンセイさんも切れ長の目に色気を滲ませる。


『隠すことでもないから、何でも見ていいですよ。ほらどうぞ、さぁどうぞ』


「いや脱がないでください」


『なんだよ、ギンセイだけじゃなく俺のも見ろよ』


「いやだから脱がないでください」


 イケオジたちのお色気ムンムンなお肌を見せつけられたら、鼻血どころか色々な汁が出ちゃいそうなのでやめてもろて。(動悸、息切れ)


 ところで、御二方のルーツってどこなんだろう?


「御二方とも名前がなかったし、やっぱり妖怪みたいなものなのかな? 狸とか狐みたいな……」 


『んなわきゃねぇだろ。あとその並びだと狸は俺か? 俺なのか?』


『ふふ、元人間ですよ……一応』


「元人間!?」


 アカガネさん、狸っぽいと思ったけどダメなの? かわいいと思うけど。

 そして狐っぽい枠のギンセイさんはクスクス笑っている。


『彩綾が可愛がってくれるなら狸になってやろうか?』


『系列が違うから、少し大変だけど頑張ります』


「いやいやそれは置いといてもろて……元人間って、どこの人だったんですか?」


『さぁ、何だろうなぁ』


『アカガネ、意地悪をするものじゃないですよ』


 ニヤニヤしているアカガネさんを、ギンセイさんが軽く注意しているけれど。


「やっぱり教えてくれないのかぁ……」


『彩綾が知ろうとするなら、そう動くと思いますよ。試してみてください』


「動く?」


 なんですかそれ???

 そろそろ酔いが回ってきて、いい気持ちになってきておりますれば。

 調べものなら図書館かな……。


『わかってんじゃねぇか』


 よし、明日は図書館に行こうっと……。

 なんか急に……眠い……。


『ああ、やっぱり来ましたか。彩綾は寝てしまいましたが』


『おやすみ』


 ん。

 おやすみなさい。



お読みいただき、ありがとうございます。


明日もがんばりたいです。←

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ