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31、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?

(前回の更新日時を見て愕然としております)


 もちろん、旅館の大浴場は天然温泉が使用されていた。

 キラキラ君からもらった温泉用の手ぬぐいとバスタオルを持って、いざ大浴場へ。


『お、いい色だな』


「朱色のタオルって、珍しいよねー」


『青か白系があれば購入しますか』


 ギンセイさんが呟いているけど、たぶん白は普通にありそう。

 このタオルセットを手渡す時に「女の子だからかわいい色にしました!」って言ってたけど、大浴場に行くまでにすれ違ったお爺ちゃんたちが同じ色を持っていたぞ。


「還暦みたいだよな」


「それな」


 藤乃の呟きに頷きながら、ロッカーに手早く服を放り込む私は、ワクワクとした気持ちで温泉タイムをスタートさせた。

 これぞ至福の時ってやつだよね……はふぅ……。


「うーん、まだ匂うなぁ」


「え? なに? 私、汗くさい?」


「そうじゃなくてだな。この当たりに異界の匂いがするんだ」


「異界の匂い……って、どんな?」


「どんなと聞かれてもなぁ……」


 手ぬぐいを持って浴場に入れば、ものすごい湯気で目の前が真っ白になる。

 これはもしや、もしやなのだろうか。


「彩綾、こっちだ」


「あ、よかった。藤乃がいるなら大丈夫だね」


 また異界に行っちゃう流れかと思ってびっくりしたけど、さすがに全裸転移は勘弁してほしいところだよ。


 不自然な湯気は、藤乃が手をひらひらさせると消えていく。この子は自称リアリストで、やっていることはスピリチュアルだよなぁ。

 そんなことを思いながら藤乃が入っている岩風呂に行こうとしたら、髪の毛がツンッと引っ張られる。


「おい、それは返してこい」


「何のこと……って、これ……!!」


 引っ張られた髪を押さえたら、毛先をモグモグしているトカゲのような……いや、違う。

 この顔に付いているトゲトゲは!!


「うーぱーるーぱー?」


「みゅ?」


 私の髪を咥えて、つぶらな目を瞬かせて首を傾げているのは……もしやあの「ウーパールーパー」では!?

 ピンクのイメージがあるけれど、この子は灰色なんだね!!

 うわあああああかわああああああいいいいいい!!


「落ち着け彩綾。ウーパールーパーは鳴かない」


「いいじゃん! かわいいじゃん! ウパちゃん!」


「みゅー♪」


「彩綾……」


 呆れ顔の藤乃を見て、はたと気づく。

 もしかしてだけど、また私、やらかしちゃいました?


「あれだけ名付けには気をつけろと言ったのに」


「面目ない……」


「みゅー……」


 落ち込む私の肩で、申し訳なさそうにしているウパちゃんがラブリー。

 ところでウパちゃんはどこの子かしら?


「これは水の気配を感じる。だからここに現れたか、もしくは……」


「もしくは?」


「彩綾がやらかしたか」


 そんなことはない! とも、言い切れないのが悲しい!







 部屋に戻ると、イケオジ御二方が寛いでらっしゃった。

 藤乃が別の部屋をとろうとするのを必死で止めることになったから、反省してほしい。


『まったく、彩綾の友は短気だな』


「アンタだけには言われたくはない」


 確かにアカガネさんは熱血で猪突猛進のイメージがあるよね。実際は違うらしいけど。


『それで、なぜ神獣が弱っているのです?』


「え! ウパちゃん弱っているの!?」


『いえ、正しくは消えそうだったところを彩綾に名付けられたので、ギリギリ姿を保っている……というところですね』


 なんと!

 やらかしたと思っていたけど、ウパちゃんのためには良かったのかも?


「自然の摂理に反してまで、名付ける必要はない」


「うわーん! 藤乃が厳しいぃ!」


 消えない方法なづけがあるなら、やってもいいじゃない。さやお。


『まぁ、俺らもそれで消えずに済んだわけだし』


『そうです。彩綾の感覚は危機的状況を打破することに長けていますからね』


「アカガネさん! ギンセイさん!」


「そもそも危機的状況にならんように、その感覚とやらを働かせろという話だろう」


「うわーん! 藤乃がトドメを刺すぅ!」


「みゅーっ!」


 私と一緒に泣き真似をしているウパちゃんがラブリーすぎる件。


 それはともかく。

 神獣であるウパちゃんが、なぜ消えそうになっていたかについて、調べたほうが良さそうだ。

 私がウパちゃんを撫でていると、ギンセイサンが意味ありげにアカガネさんを見ているではないか。

 おやおや? 思い当たる節がおありですかな?


『あー、まぁ、これは現世に出せない機密情報だからなぁ』


『隠しておくより話したほうがいいと思いますよ。私たちがどう動いても、彩綾とご友人は巻き込まれてしまうと思います』


「巻き込んでごめんね、藤乃」


「今さらだ」


「ありがとう」


「……ふん!」


 いつになく言葉がキツくなっているのは、たぶん私のことを心配しているからだろう。昔から藤乃はそういう子だったから。そしてツンデレさんだから。


 置いてあるお茶を使って皆の分を淹れていると、藤乃がお茶菓子を並べる。

 どこから持ってきたのかアカガネさんは地酒と干物をテーブルに出し、ギンセイさんはフロントに並んでいたものと同じ銘柄のワインとチーズを出している。


 うん。酔わないうちに話してもらおうか。


『さて、どこまで話したもんかな……。事は、俺らが異界でやってる仕事に関わってくるんだ』


『私たちは……異界にいる者たちは、現世を裏側から管理しているのです。それは人に対してではなく、宇宙からの力……のようなものが正しく流れるように管理している、ということです』


 宇宙からの力、とは?


『彩綾には肉体がある。でも、その中にある魂はもともと力の集合体で、その力は宇宙を回っている……って感じだ』


 あー、うー、おー。

 そこはまぁいいや。とにかく御二方はその「宇宙からの力」ってやつを管理するところで働いていたってことでしょ?

 私が疑問なのは……。


「なんで、御二方は現世に来たの? 私の前世も知ってるって言ってたし、それに……」


『ああ、俺らがここにいるのは想定外ってやつだったろうな』


『私たちもここまで深く関わるとは思っていなかったのですよ』


 そう言った御二方は柔らかく微笑み、これまでのことを交互に話してくれた。

 昔々の、遠い遠い、ここではないどこかの国の物語を。


お読みいただき、ありがとうございます。

なかなかWEB投稿まで届かず申し訳ないです……。


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