29、本当の敵は自分の中にいる
前回までのあらすじ!!
ある日、森の中、白蛇さんに出会った。
そして「ハク」と命名した。
「ほんとダメダメじゃん……」
「きゅぅ?」
「しゅぅ?」
右肩に子狐、左肩に白蛇をのせている私は、すっかり落ちこんでいたりする。
なぜなら、あれほど軽はずみに「名前」を付けるなと言われていたのに、きれいさっぱり忘れていたからだ。
わかっていますよ。
自分は残念な子だってことくらい。ぐぬぬ。
「この展開は予想してましたからね。大丈夫ですよ彩綾」
「二つくらい居たほうが、ちょうどいいだろ」
「すみません……」
両肩にいるモフモフとニョロニョロが、慰めるようにすり寄ってくれる。
はぁ、癒されますな。
ところで気になるのは、異界に引っ張られた私を心配しているであろう、現世にいる藤乃たちのことだ。
「あの抜け殻を使えば何とかなりそうですよ」
「抜け殻を使う???」
「蛇の神獣は脱皮するたびに若返る。その抜け殻には時を巻き戻す力があるんだ」
「ということは……?」
期待をこめて、ギンセイさんを見る私と二匹。
「この洞窟の奥にある温泉で、多少ゆっくりしても大丈夫ということです」
「自然にできた岩穴をそのまま生かしている、異界でも珍しい湯どころだ」
楽しみー!!!!
でも、前回も今回も神獣の近くに温泉があるけど、何か関係あったりするのかな?
「神獣は温泉管理も任されているからな。主に地中にある力の流れを調整している」
「ここまで大きくなったということは、過剰に流れている力を取り込み、結果暴走したのでしょう」
「コンちゃんのところは逆だったの?」
「子を生んで弱っているところで、力の流れも止まっていましたからね」
洞窟の奥へと進みながら説明を受けている私。
ところで御二方、さすがの私も腑に落ちないことがあるのですが。
「あのさ、温泉で誤魔化されていた感じだけど……私が異界に来るのって大丈夫なの?」
「私たちが一緒にいるので大丈夫ですよ……たぶん」
たぶん!?
「しゅぅぅ」
「彩綾、タオルは備え付けのを使ってくれと、ハクが言ってますよ」
「え? ギンセイさん、ハクちゃんの言葉が分かるの?」
「相性がいいのかと」
なるほど。アカガネさんはコンちゃん、ギンセイさんはハクちゃんと相性がいいと。
そしてハクちゃんのほうが年上っぽいな。いや、脱皮しているから小さくても子供じゃないから当然か。
「しゅぅ!」
「彩綾、神獣の蛇は脱皮するたびに生まれ変わるので、まだ若くてピチピチだと反論していますよ」
ピチピチという表現は若くないと思う。
あと御二方だけじゃなく、神獣たちも心を読んでくるのやめてもろて。
アリの巣のようになっている洞窟温泉は、各所に小さな休憩所があったり、薬草風呂や水風呂があったりして楽しい。
湯気は洞窟を通り抜ける風が持っていくから、息苦しい感じはない。
私が選んだのは、外の光が洞窟内にある天然石を反射させて、不思議な色になっているお湯を楽しめるお風呂だ。
御二方は壁を隔てた隣のお風呂に入っております。
「コンちゃん、ハクちゃん、温泉は気持ちいい?」
「きゅぅー♪」
「しゅぅぅー♪」
神獣たちは温泉を管理しているけど、基本は入ったりしないんだって。
働かせるだけ働かせて、ご褒美もないなんてひどい。ひどすぎる。
「コンちゃんのお母さんも、いつでも温泉入れるようにしてもらわないとね!」
「きゅぅきゅぅ♪」
「しゅぅー♪」
管理局だかなんだか知らないけど、許さないんだかね!!
……御二方が。(イケオジの威を借りる)
「彩綾の頼みなら動きますか……」
「管理局を敵に回すのかよ……」
がんばれ御二方!!
天井にある通気口から御二方の声が聞こえてくる。
一応ここは男女別になっているけど、洞窟内は全部繋がっているとのこと。
凹凸のある壁の上、隣へ続く隙間を見上げる私は「なるほど」と納得する。
「がんばって登れば、覗き見できるかな?」
「彩綾……はしたないですよ……」
「思春期の男子の発想かよ……」
いや、本当にやるわけじゃないよ? ちょっとした好奇心というか、夢みたいなものっていうか?
するとハクちゃんがスルスルッと壁を登り、天井の隙間から隣を覗き見てからお湯に飛び込む。
そして体をくねらせて泳いでくると、嬉しそう?に擦り寄ってきた。
「しゅぅー♪」
「どうしたの!?」
「しゅぅぅ♪」
白い体をくねらせたハクちゃんから、白い煙のようなものが出てくる。
そこに浮かび上がったのは、透き通るような白い肌と、健康的な褐色の肌の美丈夫たちで……!?
「わぁー!? ハクちゃんダメー!!」
「しゅぅ?」
「きゅぅ?」
いやいやちょっと待って。
私がうっかり邪なことを考えたから、ハクちゃんが見てきてくれたってこと?
しかもそれを上映できちゃうとか、なんてご褒美……じゃない、覗きはダメ!! 絶対!!
「ハクちゃん、私か御二方が良いと言うまで、見たものを映したらダメだよ」
「しゅぅ?」
「見たいのならば言ってくれれば……」
「彩綾のためなら、いつでも脱ぐぞ?」
「御二方は黙ってて!!」
壁の向こうからでも分かるような色気出すのやめてもろて!!
ハクちゃんとコンちゃんの教育に悪いでしょ!!
お読みいただき、ありがとうございます。




