聖女って厨ニワードだよね?控えめに言って大好きです
もちろん『聖女』という単語の意味は知っている。
厨二ワード。大好物だ。
けれどひとえに聖女といっても、冒険者のパーティーに在籍する回復職の聖女や、神に信仰を捧げる教会の聖女など、言葉の概念は世界毎に異なっている。
だからシドの知っている聖女の知識が、必ずしもこの世界における聖女の意味と合致するとは限らない。
むしろこの世界に置ける『聖女』の役割りを、シドは知らないと言ったほうが正しい。
「「うおおおおおお!」」
「「きゃあ〜〜!!」」
街の西端、城壁の上から人々の大歓声。
熱気に溢れた男どもの雄叫びと、熱派に浮かされた女たちの雌鳴。
「おいおい今の見たかよ!? 一撃で数千の魔族が消し飛んだぜ!?」
「流石は我らが聖女様だ! 美しすぎる!」
「きゃー! かっこいいわ聖女様〜!」
「せえじょさま、がんばれーっ!」
街がどよめき、人々の声援が上気する。
我よ我よと見物人が城壁の上で押し合い引き合い動き蠢き合う中。
男たちは祭りのように騒ぎ立て、女たちは色めき手を取り合い、子どもたちはきゃっきゃきゃっきゃと楽しそうだ。
街が『聖女』一色に染まる中、当のシドはというと、適当なベンチに腰掛け、先程商店街で買ったピグの肉をひとり孤独に食べていた。
「ピグの肉ねぇ、若干癖があるけど獣臭さはない。食感は前に喰ったオークの肉に似てるな、これ。ブヨブヨしててあんま美味しくない」
それとなく食レポをしてはみたものの、弾力マシマシのピグ肉はシドの口に合わなかった。
あと4本あるけど残りはどうしましょう。
それにしても、
「やけに人気だな、この世界の聖女様は。もしやアイドル的な概念があるのかこの世界?」
偶像への崇拝――とはまるきり違うようだけど。
現在シドのいる中央通りまで響く人々の歓声。
最早それはお祭りか何かかと勘違いしてしまいそうだが、城壁の外で繰り広げられているのは間違いなく血みどろの戦争である。
盛り上がる歓声の隙間から聞こえてくる魔族達の断末魔。肌に感じる戦闘の過激さ。
膨大な数の魔族の中で咲く純粋で膨大な力の塊。
恐らく、その塊こそが『聖女』であるということは、街中で呑気にピグ肉の食レポをしているシドにもわかる。
強い、ただひたすらに。興味を唆られる。
聖女への興味――聖女の持つ能力への津々。
簒奪者としての本能、尽きぬ強欲が、シドを戦場へと誘わせる。
「さて、と」
自然とニヤけてしまう顔を片手で隠し、シドはベンチから立ち上がった。
「それじゃあそろそろ俺も、聖女様の顔を拝みに行くとしますかね」




