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能力奪う系チートの正しい使い方  作者: ハイパーれもん汁
集団異世界転移編
23/26

なに見下ろしてんだ? 殺すぞてめぇ

 そこは暗く狭い空間だった。

 ざっと周囲に視線を走らせ、状況の把握に務める。

 簡素な室内。ひんやりと肌寒く、音の反響が少ない壁。恐らく地下室なのだろう。なるほど、半日も見つからないわけだ。

 光明は部屋の壁に設置された魔石のランプ。仄かに橙色の輝きを放っている。

 こちらを見定める豚男と獅子男とローブ男の三人。そしてその奥。四肢を縄で縛られソファに寝かされたノアを見つけ、()は安堵に胸を撫で下ろす。

 しかしその反対。肌けた衣服と乱れた髪に、胸の内から沸々と憤怒と焦燥が込み上げて来る。


「よくやったロディー。あとは、下がっていい」


「仰せのままに」


 頭を下げるロディエスを背中に置き去り、俺は半歩で男共の隙間を抜けた。


「よお、助けに来たぜお姫様?」


 背中からそっと抱き起こし、その綺麗な海色の瞳を正面から見つめながら、俺はノアに笑いかけた。

 するとノアもつられて笑う。俺の心を擽る、こちらを小バカにするような、そんな笑み。


「遅い」


 手足の縄を切ってやると、ノアはそのまま俺に抱きついてきた。細く小さなその身体を、優しく抱きとめてやる。

 心音と心音が重なる。

 歯車のように呼吸と呼吸が交互に繰り返される。

 体温が温かい。肌が柔らかい。いい匂いがする。

 このままずっとこうしていたいという衝動に駆られながら、俺は問いかけた。


「なんか、されたか?」


 抱擁していて表情は見えない。

 恐怖を胸の内に隠し、焦燥は微塵も感じさせないよう己を律する。

 けれど、どれだけ声音やその他を繕ったとて、密着し交わる心臓の高鳴りで俺の心境はバレバレだろう。

 ノアが小さく笑った気がした。

 ぎゅう〜っと抱き締める腕に力が込められた。

 それからノアは、首を横に振った。


「ううん。大丈夫。危なかったけど」


 今度こそ安堵に満たされる。

 その一言で、十分だった。

 それ以上の言葉はいらない。

――そうか、間に合ったのか、俺は。

 緊張から開放された俺は、無意識のうちにノアを抱きしめる力を強めていた。


「そっか。間に合ってよかったよ、ほんとうに」


 無理にでも考えないようにしていた最悪の事態は、どうやら免れたようで一安心である。

 しかしそれはそれとして。俺にはやらねばならないことがある。


「おいおい聞いてねぇぞ、こんなバケモンがいるなんてよォ……」


 そう口にするのは、ぎこちない笑みを浮かべる獅子男だ。

 屈強な体躯とそれなりに様になっている構え。場数は踏んでいるのだろう。俺との戦力差を図れているのがその証拠だ。能力無使用状態だけれど。

 ノアを犯そうとしたのはコイツか、もしくは隣で呆けた顔をしている醜豚男だろう。

 まぁ何でもいいか。どうせここにいる連中皆同罪だ。許すつもりはないし逃がすつもりもない。

 ノアとの抱擁を済ませ、俺はゆらりと立ち上がった。

 獅子男の瞳を、正面から見上げる。


「なに見下ろしてんだ?」


「あ?」


「あ?じゃねぇ。図が高ぇって、そう言ったんだよ」


 無詠唱で重力魔法を行使した。

 獅子男の膝が折れ、地面に両手をつく。


「ぬぅ――――ッッッ!?」


 必死の形相で耐えようとしている男の肩を、俺は足で踏みつけた。


「足りねぇ。まだ高ぇ」


「おッ、うを………ッぐ!!」


 地面に這いつくばる獅子男。


―――不味いまずいまずい。なんだこの化物共は!? 逃げなくては!!


 黒ローブの男が魔法を行使しようと動くが、それよりも早くロディエスが動いていた。


「ふっ、逃さんよ」


「ッ!? なぜ、魔法が発動しない!?」


 ロディエスの対魔法が男の魔法効果を打ち消した。男の顔色が青ざめる。


「空間魔法……お前か。俺の女を拉致った野郎は?」


「くッ!」


 地面に伏す獅子男。腰を抜かす豚男。そして黒ローブの鴉男。


「誰一人逃しはしねぇよ」


 俺は爛々と瞳を輝せ、男共を見下ろした。


「せいぜい悔め。そして知れ。良かったな、お前らは極刑だ。無様に滑稽に失禁して、生まれてきたことを後悔しながら死ぬといい」


 そうして、笑顔で嗤った。

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