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能力奪う系チートの正しい使い方  作者: ハイパーれもん汁
集団異世界転移編
16/26

イリュゥゥゥゥゥウウジョンマジック

「ありがとうございます! では次のマジックが本日最後のマジック、イリュージョンマジックです!!」


「「おお……っ」」観客がどよめく。


「その名の通りイリュージョン。このマジックは観客の皆さんの中から誰か一人に手伝っていただきたいのですが、誰か手伝ってくださる方はいませんか?」


 しかしマジシャンの有志を募る声に、観客は少し戸惑っているようだった。


「「…………」」


 彼らは娯楽でここに集まった連中だ。見世物を楽しむために集まった富裕層の連中だ。

 そんな奴らの中に自分から進んで手を上げる者はいない。

 そんな中、シドの隣で小さな手が上がった。ノアだった。

 マジシャンの瞳が人混みの中に紛れたノアを捉える。


「おお、可愛いお嬢さんですね。お名前を伺っても?」


「ノアだよ」


「ノアちゃんですか。お嬢さんにぴったりな綺麗な名前ですね。ノアちゃんに名前をつけたお父さんとお母さんに僕は心より感謝したい!」


 口の減らないマジシャンの、オーバーなリアクションに対し、ノアは小さく首を振った。


「んーん。あたしに名前をつけてくれたのはシドだよ」


「シド……?」


 マジシャンの視線がゆっくりとノアの隣に立つ白髪おじさんを見上げる。


「俺だ」


 白髪おじさんことシドが応えると、


「おお! 素晴らしい! ビューティフォー!! シドさんあなたは神ですか!? いいや神です!!」


 本当に口達者な生き物だ。マジシャンというのは。

 息を吐くようにペラペラよく喋りやがる。しかしこんな輩の口車に乗るシドではない。


「なんだわかるじゃないか。君とは美味い酒が飲めそうだ!!」


「「わはははははは!!」」


 ガシリ。ここにひとつ友情が芽ばえた。


「よしではシドさん、お嬢さんを少しお借りしてもよろしいですかな?」


「ふむ」



名前:ラック・ララポート

ステータス:Lv.7

筋力420

体力580

敏捷600

耐久520

魔力700(+100)

種族:人間族

職業:奇術師(マジシャン)

能力:《詠唱省略(低位)》

二つ名:なし

特殊装備:《奇術師の種帽》《奇術師のスーツ》《速詠唱の指輪(小)》



 シドは鑑定眼を通してマジシャンを見てみたが、ステータスにしても能力にしても、これといって警戒すべき点はなかった。

能力(スキル):詠唱省略(スペル・スキップ)》下位魔法のうち自身が得意とする魔法の詠唱を省略することができる。これはマジシャンにとっての商売道具のようなものだろう。

 シドの横でノアが眼を輝かせていた。

 シドは苦笑し、ため息を1つ。


「もし危険だと感じたら飛び込むが、それでもいいかラック?」


「大丈夫ですよ。危険なマジックじゃないですからね」


「やたっ」ノアが喜んでいた。その頭にぽふんとシドは手を乗せる。


「ノア。能力は抑えとけ。マジックには魔法を使うからな」


「わかった」ノアは頷いた。


「ではこちらにどうぞ」マジシャンに連れられノアはシドから離れ、人混みの中心に出る。

「あれ、そう言えば、なんで僕の名前知って……」マジシャンは一度首を捻ったが「まぁいいか」と疑問を投げ捨てた。


「お待たせしました、次のマジックは彼女に強力してもらいます! ノアちゃんです! 皆さん拍手を!」


 マジシャンの言葉に続き、観客がわぁっと手を鳴らす。

 虫のいい連中だとシドは思った。きっと心の中では"自分じゃなくて良かった"と思っているのだろうから救い難い。


 マジシャンがハット帽を頭から外す。すると帽子の中から箱が出現した。人一人がすっぽり入れるくらいの大きさがある透明な箱だ。

 帽子と箱の大きさからして、普通に考えて物理的に不可能な芸当だが、帽子に空間収納機能でも付与されていれば話は別だ。

 続いてハット帽から飛び出したのは一羽の白鳩。近くにいたノアが「わあ」と声をもらした。

 鳩は頭上をバタバタッと一周すると、ノアの腕の中に降り立った。

 その様子をマジシャンが横目で確認し、ノアに向け微笑んだ。


「ポッくんはノアちゃんのことが気に入ったみたいだね」


「ポッくん?」


「鳩の名前だよ」


「そっか。ポッくんて言うんだきみ。女の子に抱きつくなんてスケベな鳩さんだこと」


「ふふ、ポッくんを離さないでね。ノアちゃん」


「ん、わかった」


 マジシャンは仰々しく両手を広げ、観客に向け道化を口元に貼り付ける。


「さてさて。これから皆様にお見せするのは世界の真理! 人呼んでイリュージョンマジック!!」


 観客のざわめきを聞きつけ、何だなんだとと更に人が増える。

 マジシャンは箱についている取っ手を捻り、扉を開けた。


「ではノアちゃん。箱の中に」


 言われるがままに、ノアは箱の中へと足を踏み入れた。


「少し窮屈かもしれないけど少しの間我慢してね。それと何があってもポッくんを離さないように、いいね?」


 そして扉が閉められた。

 中にノアを残したまま、ガチャリと扉に鍵がかけられる。

 その上からマジシャンは箱に白いシートをかけた。


「箱の中には一人の女の子。今からノアちゃんの姿を一瞬で消し去りたいと思います!」


 そしてマジシャンがひとつ指を鳴らす。


「はいこれで箱の中にいるノアちゃんの姿は完全に消えました!」


 白いシートを取るとあら不思議。箱の中からノアの姿は完全に消えていた。


「これぞイリュージョン!!」


 自称最高峰のマジックに、観客が興奮し声を上げる。

 会場はこれ以上ないほど大盛り上がりだ。まさに絶頂。

 自身の頭で理解できない現象の種を知りたがるのは、純粋な人の性である。

 しかしシドにはわかっていた。箱の中で密かに魔法が発動していたことを。

 観客の高まり様を感じ、マジシャンはタイミングを見計らって再び箱に白いシートをかける。


「ではこれより今からノアちゃんを再びこの箱の中にイリュージョンさせたいと思います!」


 観客が息を呑んで白いシートの中を見つめる。


「スリー、ツー、ワン! ディス・イリュージョン!!」


 合図とともにマジシャンが勢いよく箱からシートを外した。

 すると箱の中には、ノアの姿が―――なかった。

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