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能力奪う系チートの正しい使い方  作者: ハイパーれもん汁
集団異世界転移編
13/26

お前、うまそうだな

「は――――?」


 開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。

 竜之介はバカみたいにぽっかり口を開けたまま立ち尽くしている。

 騎士アルゼルなど足元にも及ばない。レベル1028のバケモノ。


 なぜ。どうして。こんな場所に。こんな化物がいるんだ……!?


 ふざけるなと叫びたい衝動を必死で堪えつつ、息を殺して黒影(バケモノ)の能力を見つめる竜之介。

 逃げなくてはと本能が訴えている。しかし身体が動かない。震えが止まらない。

 食い入るように黒髪(バケモノ)の能力を見ていると、


「お?」


 ふと、黒髪と目が合った。合ってしまった。


「お前、見えてるな?」


 黒髪の広角がニタリと歪む。

 それはまるで獲物を見つけた獣のように。ダンジョンで宝箱を見つけた冒険者のごとく、嬉しそうな笑みだった。


「ひッ、ぃ、あ……!!」


 竜之介はビクリと肩を震わせ、その場に尻をついた。


「?」


 ガクガクと震える竜之介を見て、黒髪の少年はようやく己のミスに気づいたようで、


「あー、そっか。ごめんごめん。忘れてた」



名前:シド

ステータス:Lv.1

筋力3

体力7

敏捷5

耐久6

魔力4

種族:人間族

職業:なし

能力:なし

二つ名:なし

特殊装備:なし



 竜之介の目の前で、鑑定眼に映っていた黒髪のステータスが全て書き換わっていく。

 ステータスの上書き、あるいはステータスの隠蔽。どちらでもいい。そんなこと。

 この場で最も大事なことは、目の前のバケモノが正真正銘のバケモノだということで、そしてどうやらそんなバケモノに竜之介が目をつけられてしまったという事実。


「ふざけんな……なんでお前みたいな化物がこんな序盤にいるんだクソッ!?」


 竜之介は尻をつきながら後ずさる。しかし竜之介が後ずさるよりも男が一歩竜之介に近づく方が速い。

 死が近づいている気がした。

 人間という生物は、本当に死ぬまで死を理解(わか)れないのだという。竜之介はソレを身を持って体験している。だからわかる。わかってしまう。一度死んでいる竜之介には。


「……殺せ、殺せえッ!! お前ら、みんな、速く、その男を――――ぁ」


 竜之介の言葉が途切れる。首と一緒に。

 これから最強の勇者となるはずだった星野 竜之介の物語は、ここで呆気なく幕を下ろしたのだった。







《【星野 竜之介】の死亡を確認しました。以下の能力の中からいずれか一つを『簒奪』することが可能です》

【能力】

《黒影の勇者》《鑑定眼》《気配隠蔽》《異世界言語》

【魔法】

《闇魔法》



 脳内に響くステータスメッセージを見て、シドはニヤリと笑う。


大当り(ビンゴ)! これこれずっと欲しかったんだよ鑑定眼♪」


 異世界といったらやっぱり鑑定眼は必須だろう。

 異世界=鑑定眼!みたいな。もはや生活の必需品と言っても過言ではない。スマホさんの立ち位置だ。

 しかし残念ながら、本当に残念ながらシドの元いた世界に鑑定眼という能力は存在しなかった。

 あってもステータスをチラ見する程度の粗雑な魔法。それもかなり適当であまり宛にならない精度。これは顔の見えない女の子のパンツを遠目にボヤけて見えるかどうかと同じレベルだと思って欲しい。

 しかも対象に触れなければ発動できないという条件つき。これはもう詐欺だ。詐欺である。


 異世界転移してからこれまで『鑑定眼があったらなぁ』と思わない日はないくらい、シドがどれだけ鑑定眼に嘆き焦がれたものか。


 【美神】ラフィエから《美神の権能》を奪ったはいいが、異世界転移システム管理者権限を持つくせして、転移できる異世界は選べても、転移させる人数や人間、そして付与する能力(チート)は選べなかった。

 鑑定眼欲しさに何回異世界を行き来したことかわからない……。


 項目から念願の鑑定眼をタップすると、シドのステータス能力一覧に『鑑定眼』という項目が新たに追加された。


「ねね、シド」


 ツンツンと服の裾を引っ張られた。


「ん?」顔を上げる。


「ん」ノアの視線を追っていく。なにやら周囲から敵意の視線を向けられていた。物騒だな。

 杖を構える魔法使い。聖剣を抜き放つアルゼル。尻もちをつく転移者一同。その瞳には警戒の色が濃い。ふむふむ。

 転がる生首。痙攣する死体。血溜まりの敷物(レッドカーペット)。なるほどなるほど。

 現状確認と理解把握。

 まぁ、最もな展開だろう。つまらない。


「貴様、何をしている……?」


 皆を代表しそう呟くのはアルゼルだ。


「なにって、――お?」



名前:アルゼル・ユディウス

ステータス:Lv.27

筋力2042(+400)

体力1920(+200)

敏捷1430

耐久2020(+300)

魔力1330(+150)

種族:人間族

職業:聖騎士長

能力:《腕力増強》《身体硬化Lv.9》《身体強化Lv.8》

二つ名:王剣(ソード)

特殊装備:『聖騎士長の首飾り』『聖騎士長の鎧』『聖騎士長の腕輪』『聖王剣ラグラディスタ』



 試しに鑑定眼を使ってみたところ視える視える丸見えだ。

 これは確認済みの事実だが、どうやらレベルやステータスは異世界ごとに少し異なった表記になるらしい。

 当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、異世界転移するごとに毎回ステータスを照らし合わせる作業は正直面倒くさかった。

 しかし鑑定眼を手にした今、その作業がかなり効率化したことになる。どうやら鑑定眼はシドの世界基準にステータスを調整してくれているようだ。

 マジで優秀もしや最新型かお主?


「コイツはいい。やっぱあると色々便利だなーうんうん」


 ついでに女の子の下着の色もバッチリ見えたら文句はなかったのに。


「一つ聞こう勇者よ」


「一つと言わず何でも聞いてくれアルゼル・ユディウス。俺は今ひじょーに気分がいい」


 ドン、と胸を張るシド。「んー」そしてなぜか首をひねるノア。


「じゃー、ずばりシドの性癖は?」


「貧乳ロリ」即答だった。


 ノアが自らの胸部をぷにぷにと揉むその隣で、シドは景気良く声を上げる。


「よーし! 質問がある人は挙手してくれ! 出血大サービスで何でも答えてやろう。ちなみに今の出血大サービスは竜之介(こいつ)と掛けてみたんだけど、もっと笑ってくれてもいい……」


「―――ふざけるのも大概にしろッ!!」


 アルゼルの怒号に王室がビリビリと振動する。ついでに空気も震えていた。


「貴様自分が何をしたのかわかっていないのか……!?」

 

「ふざけてるように見えるか? 俺はいつでも真剣さ」


「そ、シドはいつだって真剣にふざけてる」


「それをふざけていると言うのだ!!」


 なんだか昭和生まれの頑固先生と平成生まれのひねくれ生徒みたいな問答だな、と思う傍ら、やっぱこういうの嫌いじゃないなーともシドは染み染み感じた。


「その者は、貴様にとってなんだ? 向こうの世界で知り合いか何か―――」


 突然、アルゼルの言葉が途絶えた。

 シドがくすりと笑う。


「先生はお手手を上げて発言しなさいと言いましたよアルゼルくん?」


 発言を続けようとするアルゼルに対し、シドは能力(スキル)竜神威圧(プレッシャー・オブ・バファル)》を行使した。

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