表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

加藤良介 エッセイ集

フォーク准将から見えてきた、なろう系主人公に対しての一考察

作者: 加藤 良介

このエッセイは銀河英雄伝説論ではありません。ご了承ください。

 こんにちは、銀河英雄伝説論三部作に多くの評価とご感想、誠にありがとうございます。

 たくさんのご賛同と熱い反論、すべてに感謝いたします。


 さて、勝手に感想欄で読者の方とディスカッションしている気分になっている私ですが、一つ面白いことを思いつきました。

 それは、感想欄である作品を紹介されたのですが、「この作品ではフォーク准将が有能であるという設定で書かれているので、読んでみてね」と言うものでした。

 この感想欄を読んだ時、私が「無理難題への挑戦」で、なんとなく感じていた、ある感慨にビビッと繋がりました。

 それは、後書きで書いた「ただ、なんとなく、なんとなくですよ。駄目な「なろう主人公」の匂いがする気がします。彼からは・・・」という一文です。

 この時は本当になんとなく、根拠なく思っていたのですが、感想文を読んでわかりました。

 フォーク准将は正真正銘の駄目なろう主人公そのものであるという事に。


 感想文に書かれた「フォーク准将は有能であるという設定」という一文。

 そう。「設定」なのです。

 何を言いたいのか説明いたします。

 多くの駄目なろう主人公には、実際にどのように優秀であるかの描写はほぼありません。

 大体が力こそパワーでお話を押し切るのです。作品内で何の根拠も無く優秀なのです。

 これこれ、この様な実績や行動があって優秀なのではなく、まず「優秀」である。そこから、お話がスタートするのです。

 そこに、異論や疑問を持ってはいけないのです。作者が優秀と決めたら何があろうが優秀なのです。

 その為、読者が読んで思う感想と、作品内の主人公の評価に齟齬が生じるのです。


 銀英伝で言えば、ヤンはエル・ファシルで、逃げ出す友軍を囮にして民間人を救出するという、アクロバティクな作戦を成功させ、才能を読者に見せてくれますが、一方のフォーク准将は26歳で准将という高級将官。作品内で彼の戦歴は別段説明されません。

 このキャラは優秀と言う設定なのです。

 登場してからの言動や実績も、特に優秀さを感じさせる描写もなく、そのため、読者はフォーク准将を優秀とは感じられません。

 何か知らんけど、26歳で准将の人。

 そして、大失敗して結果「無能」の烙印を押されます。

 これは、設定だけが優秀で実際はただの馬鹿だという事です。

 銀英伝ではここで、フォーク准将は本筋から切られるので、違和感は少ないのですが、彼がなろう主人公の場合話が変わるのです。

 だって主人公なんだもん。

 これからも登場しますよね。


 多くの駄目なろう主人公と言うものは、実際に優秀であるという描写よりも、優秀であるという「設定」で押し切ろうとします。

 「この世界ではこういう設定なんだ。文句言うな」というスタンスなのでしょう。

 ○○太郎という、蔑称なんだか尊称なんだか分からない称号を得ている主人公にも共通していることでしょう。

 彼らは、我々読者に自分たちの凄さを一切見せてくれません。何か知らん凄いパワーで、特に何も考えずに寄り切って、凄い。

 えっ? どこが、どの辺が凄いの・・・(。´・ω・)?

 特に優れた人物である描写が無いまま、優秀扱いされて周りからちやほやされます。

 手前味噌にはなりますが、私のエッセイ「サクラ大戦の考察と妄想」で、私は主人公の大神一郎がいかに凄いか、また女の子にモテるかを説明いたしました。

 しかし、○○太郎たちにはその説得力が皆無なのです。 

 その大問題点をねじ伏せるのが、「設定」なのです。


 「別に理由とかないけど主人公は優秀なんだ。女の子にちやほやされる存在なんだ」


 作者にそう言われてしまっては、読者は受け入れるか読むのを止めるかしかありません。

 強力な一言ですね。「設定」

 大人気で商業化できるという事は、多くの読者がこの「設定」と言うものを支持していると言う事でしょう。

 そう言った意味では、フォーク准将も一周回って優秀たりえます。なぜなら彼は何の実績も根拠もありませんが、唯一絶対たる作者様によって神聖不可侵的に優秀と決定されたからなのです。


 証明終了。


 なろう主人公というのは、この様な設定の中で楽しむ遊技なのかもしれませんね。

 うーん。奥深い。


 商業化された「なろう作品」をフルボッコにするレビュー動画を私も観ますが、その中で駄目ななろう作品が「精神的ポルノ作品」であると表現されていました。

 言い得て妙ですよね。

 作者と読者が、気持ちよくなることのみに焦点を当てて作った作品群。

 だから、以前に投稿した「なろう系主人公についての考察」で私が感じた、読者の主人公への無関心さに繋がるという事なのですね。

 気持ちよくなることのみに集中しているので、「設定」を活用することにより、余計な「過程」や「実績」と言うものを描く必要が無い。

 凄いな。

 これは凄い事ですよ。人間の思考回路というものは、ここまでの大胆なショートカットを受け入れられるという事です。

 私も説明臭い小説は好きではありませんが、ここまで大胆にトリミングできるのですね。

 勉強になります。



 結論


 フォーク准将はなろうの主人公になれる要素を十分持っています。

 まどろっこしい説明を一切伴わない有能という「設定」の力により、彼は優秀なのです。

 彼の前では、敵は吹き飛ばされて粉微塵になり、味方は彼の有能さを称賛しなくてはならないのです。理由や理屈を必要とは致しません。

 なろう主人公と言う現人神(あらひとがみ)は存在していることだけで偉いのです。

 皆が自分の前にひれ伏さなければならないのに、物知らずにもビュコック提督は問題点の指摘と言う神をも恐れぬ所業を行ったのです。

 こんな不敬な行動があるでしょうか。

 神に対して意見するなど、許されることではありません。

 駄目ななろう作品であれば、ビュコック提督がなんらかの恥をさらしてフォーク准将が「ざまぁ」して終わるのですが残念、ここは銀河英雄伝説。事態はフォーク准将の思うようには動きません。

 フォーク准将の憤りはいか程の事であったでしょうか。そりゃ泡吹いてひっくり返りますよね。

 絶対に失敗しないなろう主人公も、ステージが変わると無双できないという事です。

 フォーク准将は登場作品を間違えた「なろう主人公」だったのです。

 なろうであれば、おバカなラインハルトを吹き飛ばし、チンピラ役のヤンにドヤり、キャワイイ女の子にちやほやされて30歳で元帥閣下になれたのに。

 きっと神様が転生先を間違えたのでしょう。

 おいたわしや。



 一連のディスカッションで、私もまだまだフォーク准将への考察が足りなかったなと反省いたしました。

 まさかここまで、思考が展開できるキャラだったとは。

 私の中でフォーク准将の価値が花丸急上昇でございます。(好きとは言っていない)

 それも、多くの感想を頂けた結果でございます。改めてすべての読者様に感謝いたします。

 ありがとうございました。



 リクエストもいただいたことですし、フォーク准将を主人公に一本短編パロデイを投稿いたします。よろしければ、チェックしてみてください。



               終わり

最後までお読みいただきありがとうございます。


ご意見、ご感想を受け付けておりますが、お願いがございます。

批判、反論、どんとこいなのですが、その場合、他の読者の感想欄で、読者さんと私のやり取りをお読みになってからお書きいただけると嬉しいです。

「私はこう思う」だけでは議論に発展いたしませんので、その結論に至った考察を同時にお書きください。

また、私の論述が気に入らないという意見を、私にぶつけられても対応のしようがありません。ご自分の考察文で反論なさるべきでしょう。私は特に反論することがありません。

疑問を持たれることは素晴らしい事ですが、それをそのまま私にぶつけるのではなく、ご自身で考察した意見を上げていただければ幸いです。

お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この帝国領侵攻作戦で、もっとも有能だったのは誰か? 「お前の資産を焼却しろ」という無茶苦茶な命令に抗命せず、民草に反乱も許さず、きっちりと略奪しきって物資後送を完遂した200の恒星系の総督…
[一言] 感想を書き方として(不適切という意味で)極めて黒に近い灰色な行動と思いますが、他の読者さんへの感想返しへの推測です。 お約束  私は銀河英雄伝説をきちんと読んでません。  知識の大半は二次…
[気になる点] フォーク准将って、思い通りにならないとヒステリーを起こすという病気を持っているにもかかわらず将官に上り詰めた人で、小説でもやられたのはラインハルト相手だけなんですけどね。 [一…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ