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絶対お兄ちゃん主義!  作者: 桜祭
第1章
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義姉と義妹

「誕生日なんて1年待てばくるよね?」

「それ、誕生日の禁句だよな」


奴、俺の姉の遠野巫女トオノミコ

別に名前が巫女だから職業巫女なわけではない。

派手な髪色に染め、爪にチップを付けていたりと巫女とは真逆のギャルみたいな容姿。

見た目は普通に整った顔で美人系かもしれないが口を開くととても残念な性格だ。

本当に残念なのだ。

残念さは留まる事を知らない。

だが、サバサバした性格なのは俺的にはありがたい。


「これ両親から渡されたエロゲ」

「…………」


書き置きの手紙まである悪意しかない誕生日プレゼントだな。

手紙の封を切る。


『誕生日って1年待てば来るから』


「お前ら親子かっ!?」

「親子だよ」


だよね。

巫女は姉といっても戸籍上の話で本当は従姉弟にあたる。

ほとんど疎遠で形式的な家族で、戸籍上に居る妹は見た事ない。

多分姉や両親を見る限り面倒そうな性格なのは確実だろう。


「ほら姉もの」

「星丸からやらされた奴だし……」

「妹もの」

「影太からやらされた奴だし……」

「未成年な弟がエロゲやってるとか引くわー」

「大の大人が弟にエロゲ渡すとか引くわー」


仲は姉と弟なんていう関係ではなく親友に近い距離感だ。

遠すぎず、近すぎずな関係。

俺は今の父親と母親に引き取られてから、家と学生一人ではなかなかの額のお金を与えられしばらく一人暮らしを続けていた。

つまり、姉さんとはほとんど会う事もなく尚更友達感覚なのである。


「それだけの為にわざわざ来たのか?姉さんも大概暇人な」

「他の人からプレゼントもらったりしたのかな~」

「話を聞いてくれ……」


俺が肩に掛けてた通学用のカバンを勝手に奪い取り、中を漁っていた。

話を聞かない、遠野家の人間は基本的にあるがまま動く自由人が多い。

それは星丸と接している俺も引き継いでいるある種スキルのようなものだろうか。


「なにこれ?」

「…………」


朝に星丸から渡された同人誌が姉さんの手に握られていた。

……親にエロ本を見つけられる子供の心境を人生で初めてわかってしまった瞬間であった。


「これについては弁明させてく――」

「お前ナイスだ達裄、姉さんはよーくわかったよ」


言い切る前に遮られた。

大事な部分なんだが。

ニッコニコである。

弟の妹萌えに何故そんなに喜んでいるのかがわからない。

そもそも妹属性は趣味に入っていない。


「わざわざこの姉さんが誕生日プレゼントを連れてきてやったんだ。いや~良かったよ」


肩にドンドンと強い力で姉さんが叩いている。

ドンドン、ドンドンドンドン、ドンドン。


ちょっと叩き過ぎではないだろうか。


ドン、ドンドン、カッ。


太鼓のゲーム!?


「フルコンボだドン」

「うるさいドン。つーか日本語間違ってないか?プレゼントを連れてきたって……」

「当たってるドン。何君、物だと思った?残念、本物でした~」


ムカムカと怒りが沸いてきた。

まず俺に伝える気がゼロである。

そろそろキレてもよくないか?


「うん良かった君が妹萌えで」

「は?」


意味がわからなかった。

どうしてまた妹へ話が戻るのか?

しかし姉さんが笑っている。

なにかを仕掛ける気満々である。

俺は何が来るか待ち構えていると……。


ガチャガチャ。

ガチャガチャ。


玄関の方からドアを開けようとしているが家の厳重ロックに阻まれて中に入れない音が漏れていた。

なんだ、誰が来た?


そして2回ぐらいインターホンが鳴りだした。

来客が見えるセンサーカメラの前に行くと、そのカメラには見たことの無い女の子が泣いていた。


……わけがわからない。


『うえーん、中に入れないよー』


どうしたら良いのかわからずそのままもう少し観察していると、彼女はまたインターホンを押していた。


『助けて、お姉ちゃ~ん』


そこでなんとなくだが察した。

姉さん関係者という事にたどり着いた。

おそらく俺が見たこと無い妹とかであろうか?


あと、大声で泣かないで。

近所の人見てるかもしれないから。


俺は助けようと玄関へ足を運ぼうとするが姉さんが俺を後ろへ押しやり、センサーカメラへ繋がる受話器を手に取って話かけた。


「鍵を渡してるでしょ?それで開けなさい」

『あ、お姉ちゃん!そうだったね鍵持ってた』


涙を服の裾で拭い、鍵を鍵穴に入れてそれを1回転させて入ろうとした。


ガン。


そういえば二重ロックにしていた事を思いだした。


『お姉ちゃん……』


カメラの向こうの彼女はまた泣きそうにしていた。

勘弁してくれ……。


「上にも鍵あるでしょ、そっちも開けなさい」


言われた通りに開錠しいざとついに彼女はドアを開いた。


ガン。


「あ……」


チェーンロックも掛けていたんだったわ。


「あんた鬼畜ね」


姉さんも苦笑していた。


「結局俺が開けに行った方が良かったな」


姉さんにそう伝え、玄関のチェーンロックを取り外しに行った。


「なんで今更従姉妹と邂逅なんだ?」


戸籍上では妹だが、会った事が無い人を妹と呼ぶには早い気がした。


「あ、ありがとうお姉ちゃん」


嬉し泣きなのか涙を流しながら俺に向かって走りだして、そしてジャンプ。

抱きついてきた。


「ただいま私ここまでたどり着きました」

「……」


そんなに大きくない胸を俺に万遍なく押し当てていた。

俺は手の置きどころに困っていた。

いやそれより、抱き着く相手間違っているから。


「あら~、大胆ね恋は」

「あれ?」


俺の後ろから姉さんの声がしたので後ろにいるのだろう。

恋とかいう子が姉さんに反応を見せていた。

そして少し固まってからぼそりと呟いた。


「お、お姉ちゃんが2人!?」

「な、なんだってー!」


いやなんで姉さんも驚いてんだよ。

もしかして妹(?)の天然っぷりの反応に驚いているのだろうか?


「わ、私が2人……?」

「そっちかよ!んなわけねーだろ!」

「もしかして私って忍者で向こうは分身……?」

「いや、俺は達裄だよ」

「じゃあ、もしかして達裄は女……?」

「もっと俺の見た目を信じてくれよ……」


妹もポカーンってしているんじゃねーの?


「お姉ちゃんが世の中に2人居たなんて……。もう1人居たらお姉ちゃん死んじゃうよ!そんなのやだー」


ポカーンどころか混乱しているじゃないか。

あと、話の発展が飛躍しすぎだろ!


「でもね、その話って変よねぇ。もし一卵性双生児の同性の三つ子が生まれたら死ぬじゃない」

「あっ、そうだね~」


なんかこの2人の会話を聞くと豚に念仏を唱えて小判を支払っている人のようだ。

つまり意味はない。


「ところでいつまで抱き着いているのよ恋?」

「え!?ご、ごめんなさいです忍者のお姉ちゃんの分身さん」

「…………」


姉さんみたいに悪意が見えない分怒るに怒れないっす。


そして、いつまでも玄関にいるのも冷えるので三人を居間へと連れて来た。

姉さんは自分の家の様に堂々と。

妹は、俺に抱き着いた後だからか気まずそうにしていた。

俺、姉さんと妹と1対2で対面して座り込み、最初に姉さんから語りだした。


「これが私からの誕生日プレゼントよ!じゃーん」


妹を突き出して、そのまま妹は俺の隣に座った。



…………。

……………………。


「え、終わりっ!?」

「ちょっと、恋これじゃわからないでしょう?ちゃんと説明しなさい」

「あっ、そうだね」


隣に座った女の子は立ち上がり、

――無い胸を張って彼女は俺に宣言した。










「私がお兄ちゃんの誕生日プレゼントです~」







「ごめんねぇ、うちの姉が迷惑かけて。出口あっちだから」


彼女がかわいそうで泣く振りをしながら、玄関へ案内しようと彼女の背中に腕をまわす。

この子が誕生日プレゼントってなんだよ。

俺に処〇を奪えと申すか。


「って、なんか私が頭かわいそうな人じゃないですか!?」


もう色々とかわいそう。

だが頭の固い俺ではない。

まずは事情をすべて知っている姉さんに説明を求めよう。


「まず質問する。この子は俺の戸籍上の妹にあたり、巫女の実妹の……レンなんとかで良いんだな」

「そういう事。あとレンなんとかじゃなくてレンだけよ」

「しかし母さんも頑張ったなぁ。姉さんは大人で、恋って小学何年生だ?」

「はぁ……?」


この質問には予想外だったのか姉さんが久しぶりに驚いていた。

しかも恋も気まずそうに下を向いていた。

あれれー?


とりあえず見た目を紹介しておこう。

遠野恋トオノレン

身長140から145で脚や腕はとにかく細い。

そして、胸もとても小さく赤いランドセルが似合いそうだ。

とても可愛い声で癒されボイスである。

そこそこに長いウェーブ掛かった髪をツーサイドアップにしていてとてもフワフワしてそうだ。


「恋はあなたのひとつ下の学年よ」

「んだよそれ~来年高校生かよ~…………はああああああぁぁぁぁぁ!?」


常識はいつでも覆る。

そのような事を学ぶにはとても良い機会だった。


「驚かれちゃいました。いつも背の順、一番前なので……」


恥ずかしそうに照れていた。

その仕草が今まで見た事のない反応でとても可愛かった。


「あらためまして、こんにちわです。トウノ、れ……恋と言います」


爆発しそうな赤い顔で自己紹介を始めていた。

あと、遠野は『トウノ』じゃなくて『トオノ』である。

しかし話言葉で『トウノ』と間違われるがたまにある。


「た、たちゅゆきぃさんのきょとはよく……親や姉に聞いております」


前半噛み過ぎだろ。

でも、なんかこう守ってあげたくなる小動物の様な印象に残る。

不愉快さが無い、とても可愛い。


「んで、どんな事聞いてんの?」

「ええぇ!?えーと……とても男だとか、声が男だとかー……力が男とか聞いてます……ふぅ」

「…………」


要するに何も聞いていないわけである。

話の繋ぎを並べたが、まさか俺が聞き返すと思わなくて咄嗟に嘘を並べたという事だろう。

しかし嘘が下手過ぎる。

結局男ということしか知らないらしい。


「それでね、私は今まで恋と2人暮らしをしていたんだけど最近忙しくてなかなか家に帰れなくてねぇ……。恋が不安で不安で、それに男兄弟に憧れを持ってたからじゃあ達裄の誕生日の日にプレゼントと称して押し付けようと、ね」

「色々と理由が酷いな……」

「達裄なら間違いがあっても受け止めきれるから信頼出来るって両親の許可はもらったから」

「イヤな信頼のされ方だな」


そこは間違いが無いと言い切ってくれ両親。

歪んだ信頼関係だ……。


「それに妹萌えだしね」


まだそのネタを引っ張るか……。


「ぜ、絶対お兄ちゃん主義!……え、エロいやつです」


しかも恋は落ちていた同人誌を読んで顔を真っ赤にしていた。

君みたいな子は何十年早いよー。


「『絶対お兄ちゃん主義!』、我ながら良い出来でしょ?達裄を主人公のモデルにして、恋を妹のモデルにしたんだから」

「作者お前かよっ!」


主人公、塔野辰。

ヒロイン、塔野コイ。

完全にモデル俺らでした。

ありがとうございました。


「やっぱり妹にはお兄ちゃん一択だよね」


病気な姉でした。


「その辺の調教は済んでいるわ。そろそろ私出るから」


調教なる怪しい単語に気になったがおかまいなく家から出る準備をしていた。


「それからひとつ」


姉さんは含み笑いを浮かべ忠告するように言った。


「この子、とても強い子だから」

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