第9話 大神殿にて
オレは一人で大神殿に出かけた。
大神殿の大広場から八方に大通りが延び、大銅貨(五十円ぐらい)で乗れる荒川線のような路面魔動車も往復している。
さすが大聖堂はデカい。
教会風の建物はあまり馴染みはないが、奈良大仏殿よりは確実に大きい。
礼拝堂には主神、エーズの女神像が手を広げて立っていた。
マジ、似てねえ、あの愚神はペチャパイ。嘘つきだぞコレ!
「悪かったわね嘘つきで」
あれ?
「ちょっち、時間を止めさせていただいたの、これ、約束のコピーだから」
「ん~っと」
「せっかくだから玉の造り方を覚えなさいよ、手を広げて」
「あ、ああ」
「それと、『授の滴』は水精霊の加護で手に入るアイテム、トレントの魔石は売ってるわよ」
「水精霊?」
「火風水木土の五精霊がこの世界には居るの、はい、魔力を手に集中して」
お、おわ、吸われる・・・大丈夫なのか?!
「魔力を増やすには魔力切れをおこすと良いわ。今回はあたしが手助け」
手中の書物と『授の滴』が一つにまとまり凝縮、青い光を放つ丸い玉になった。
直径は2センチくらいで、『玉造の書』と文字が浮かぶ。
「コレが『書玉』よ、飲み込んで」
「え~でけ~よ、喉に詰まったら死ぬぞ」
「体に入るの、そうすれば思ったときに読めるし、忘れない。
いちいち本を手に持つ必要ないの。
実際さ、この大きさじゃ字が小さくて人には読めないの」
勢いに飲まれた訳じゃないけど飲んだら飲めたみたい。
「頭で『玉造の書』と唱えて。
ページをめくっても目次を思うだけでもそこが読めるわ。
書棚に戻すイメージで消えるからね。
『授の滴』を手にれたら他の書物でも『書玉』を作れるの。
『書棚』と唱えて並んだ書を取る戻すでもいいわ。
『書玉』を手に吐き出すイメージで体から出て来る。
読み終わったらそれを返してもらうわ。
本来、貸せるようなモノではないのよ、いいわね」
「あ、ああ、ありがとう、読んでみるよ」
「じゃあね、お願いは思い出して欲しいわ」
愚神が消えて音が戻り、人々が動き出した。
びっくりしたけど、案外良い奴かもな。
お賽銭箱のようなものがあったので大銅貨を入れてやった。
「おい!それっぽっちかよ!!」
空耳がしたのでもう二枚入れてやった。