第17話 野良ダンジョン3
「どうすか?」
「うん、六階層が三部屋から四部屋になっている。そういう仕掛けだね」
「エリア全捜索しながら行くしかないっすね」
「ま、ハイペースだし、今度は敵さんが多そうだ」
「やった~」
「おいおい」
七階層はD級モンスターが増え、厄介な毒蜘蛛や、
遠距離攻撃をするニードルボムなども現れ、大楯遣いの出番だ。
バランスが良く魔力も十分、八階層まで進んで野営にした。
「ぼちぼち、C級も出てきそうだしな」
「部屋も心持ち広いようです。大型が来そうですね」
「見張りは油断しないように」
「はい!」
旨いとは言えない携行食糧に切り替わっているが、
お湯を沸かしたゴウジがみんなに麺を振る舞った。
「これは、いいな、暖まる」
「なんですか、これ?」
「昔居た軍隊で評判だった乾燥麺に似せて作ってもらった。
汁も濃縮してるから保ちが良いんだ」
「なるほど」
「汁に、乾パン入れてもいけるぜ」
「お~~」
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下層が切り替わるパターンもわかって、一行は十一階層まで来た。
「さすがに大部屋で十体ものC級ゴーレムはキツい」
「いや、ゴージさんが居なかったら、尻尾巻いて逃げてたよ」
「ワンパンっすもんね」
「アハハハ」
「次が本命かな」
「コアって動かないのか?」
「動けないはずなんすけど、ボスが持って逃げることもあるそうですよ」
「次、キングゴーレムだったら、ボスだろう」
「だといいすけど」
十二階は様相が変わっていた。
一部屋に二十体のゴーレムと一体のキングゴーレム、奥にドアがあった。
女性魔導師は温存していた上級広域攻撃魔法の詠唱を続けていた。
「ぶっ放せ!!」
「エリアフレイム!!」
ゴオ~~~~、フル詠唱で効果が高い。
女性魔導師は魔力切れ寸前まで魔力を込めて肩で息をしていた。
「さすがに死なないけど、だいぶ削ったぞ」
「遠くは弓をありったけ撃て」
大楯遣いが、状態異常のサポート魔法を放つ魔導師達を守る。
剣士達がよってたかって一体をボコり、確実に仕留める。
ゴージとランコは飛び回って助けたり、ボコボコにして仕留めたり。
縦横無尽に攻撃、最後のキングなどは二人がかりで哀れなほどやっつけられた。
「よし、回収して」
「さすがにドロップもないか」
斥候がドアの罠を確認、開けるとラスボスがコアらしい物体を持っている
「げ!ラスボスはB+級のミスリムゴーレムだ!」
「任せろ!!」
「行くわよ~~てい!」
「・・・元気だな・・・封印ケース用意して」
「はいはい」
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「いや~めっちゃ固かったな」
「でも、ちょっとずつ削れたわ、この刀すごい」
「ちっとも刃こぼれしないなんてよ、優れものだぜ」
「ドロップしたのってミスリル鉱石でしょ」
「多分、そうっす、これはえらいことになるかもっすよ」
ダンジョン崩壊に巻き込まれないよう、急いで入り口を目指す。
まだ魔獣達も動き回っていて、コアは死んでないようだ。
「あの罠も動かした方が良いだろう、前の連中がはまった奴だ」
「はい」
罠のスイッチは対になっている。
三日かけた往路を駆け抜けて、夜に戻って一息ついた。
ダンジョンコアは直径16センチほどの光る球体だった。
魔素の濃いエリアから出されてから徐々に光を失いつつある。
メンバーは迎えられてぐったり、すぐに死んだように眠りついた。
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翌早朝には、ダンジョンの崩壊が始まった。
「それほど残っていないようですね」
「もうちょいかかるだろう」
コアがなければ魔素の力で維持していた空間魔法の亜空間が縮み、
外に追い出されてくる魔獣は、サポート隊が対処した。
今回のクエストクリアで、ラスボス討伐が大きく評価された。
討伐失敗なら、ラスボスがコアを隠匿、ダンジョンは変化したはずだからだ。
前室のキングゴーレムと上階のゴーレム部屋でも、父娘の活躍が証言されている。
評価の最終結果はまだ時間がかかる。
ミスリル鉱物の出所が不明で、もし、鉱脈があれば莫大な利権が発生する。
イース王国が乗り出す案件になるかもしれなかった。