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異世界家族、ある玉造師の独り言~オレはまともに暮らしたい~  作者: 日川文月
第1章 家族で異世界突入編
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閑話 リーナ1

 あの日のことは忘れられない。

 あたしは、お父さんとお母さんがアルスタウンへ行くと、必ずお土産を持って戻ってくれるので、いつものように楽しみにしていたの。

 護衛のジルスさんが馬で助けを呼びに来たときは、心臓が止まるかと思った。

 ハイウルフの群れって頭が良いから冒険者だって無事に済まないって見たり聞いたりしてたから気が気じゃなかった。

 サイズが涙を流し、抱いて慰めていた。

 あたしだって泣きたいけど、お姉ちゃんだからしっかりしなきゃ。

 応援の兵士達が帰って、馬車から無事な両親が出てきたときは、

 しがみついて泣いちゃった。


 ボロボロの衣服の大男がゴウジさん、あまり見ない服を着た女の人がランコさん。

 黒髪黒目で肌も褐色、みんなが『迷人』って言っていた二人が、ハイウルフ三頭をあっというまにやっつけたって。

 大声で何かを言ってるけど、何を言ってるかさっぱり、でも、お礼を言ったら、親指を立ててにっこり笑ってくれた。

 不安な気持ちがふっと消えたのがわかった。


 でも、怪我をした護衛達よりも、担架に乗せられた男の子の方が重症だった。

 ゴウジさんの息子さんのユズル君。

 教会の治療師が呼ばれて上位の回復魔法をかけても眠ったままで心配だった。

 おかあさんは、応急処置されててその場でヒールもかけたから、大丈夫って言うけど、二日間も眠っていて、お母さんとあたしでお世話をした。


 ゴウジさんとランコさんが、神官の魔法で神語が喋れるようになって、

 事情もわかった。

 乗り物が山道から外れて谷底に落ち、息子のユズル君が大けが。

 応急処置をして山道が始まる方向へ歩いていったのに、

 霧が濃くなって彷徨ったんだって。

 霧がぱっと晴れてしばらく歩いたら街道に出たらしいの。

 物知りのお父さんが、『迷人』の書いた書物にも霧の話があると言っていた。

 それで、少し歩いたら、ハイウルフの群れに襲われているお父さん達に気づいて助けに来てくれたなんて、神様のおかげというか感心しちゃった。


 ユズル君も回復した。

 やっぱり黒髪黒目で二人より色が白いわ。

 背もあたしと同じぐらいで、ちょっと成長が遅い感じ。

 すごくシャイで、あまり喋らない。

 ていうか、一人で居るのが好きみたい。

 ランコさんに聞いたら、五年前にお母さんを亡くしてからそうなったみたい。

 でも、物陰から除くと、なんか小声でブツブツ言っていることが多かった。


 ゴウジさんとランコさんは朝早くから裏庭で、

 木刀というちょっと反りの入った木剣で剣の稽古をしている。

 ユズル君はいやいやつきあうこともあるけど、

 可哀想なぐらい打たれている。

 ゴウジさんとランコさん、いつの間にかヒールは覚えちゃってる。

 詠唱してないのに使えるなんて、魔力が大きいと思う。


 ユズル君は、喋る時は大人っぽい。

 距離を置く喋り方だった。

 ユズル君の元の世界でも、名前の次に相手に

 敬意を示す『様』、丁寧な『さん』や普通の『君』、

 年下の子につける『ちゃん』をつけるそうなの。

 ごく親しいと呼び捨てにするらしいわ。

 あたしもユズル君って言ってたけど、

 学校に通うようになって少ししたら、言ってくれたの。

「オレも呼び捨てにするからお前もそうしろ」

 結構嬉しかった。


 ユズルと一緒に王都の学校に行って良かった。

 ユズルにも仲間ができたから。

 相変わらず一人でやっちゃうことがあるけど、

 だんだん、『みんなが』とか『みんなと』とか言うようになった。


 もうちょっと、『二人で』とか『二人だけで』とかさ・・・

 言ってくれるようになればもっと嬉しいかな。

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